“色の魔術師”レオニの世界を体感〜刈谷市美術館「レオ・レオニ 絵本のしごと」展

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愛知県の刈谷市美術館で「レオ・レオニ 絵本のしごと」展が開催されています(~6月8日<日>)。レオ・レオニ(1910〜1999)は、あおときいろの紙切れの友情を描いた『あおくんときいろちゃん』、詩人ねずみの『フレデリック』、小学校の教科書にも掲載されている『スイミー』など、日本でもなじみのある絵本の作家です。本展では、絵本原画や資料約100点、油彩・彫刻など約30点を展示、レオニの作品世界を紹介しています。

 

レオ・レオニは、オランダ生まれのユダヤ人です。イタリアで暮らしていましたが、戦争のためにアメリカへ亡命。ニューヨークでイラストレーター、グラフィックデザイナーとして活躍しました。絵本の世界に足を踏み入れたのは49歳のときです。孫のために作った『あおくんときいろちゃん』がデビュー作となりました。以後、精力的に創作活動を繰り広げ、帰国したイタリアで亡くなるまでに40冊近くの作品を発表しています。

 

作品はテーマごとに、4章に分けて展示されています。

 

展示室は赤・黄・緑・青と、章ごとに色が分けられており、絵本の世界とつながっている

 

『フレデリック』1967年
Frederick1967, renewed 1995 by Leo Lionni/Pantheon

 

第1章「個性を生かして-ちょっぴりかわり者のはなし」では、『フレデリック』をはじめ、フルーティストとなった女の子ねずみジェラルディン(『おんがくねずみジェラルディン』)、絵描きねずみのマシュー(『マシューのゆめ』)などを紹介。自分らしくあることで自分も仲間も大切にする主人公たちは、心を豊かにしてくれる芸術の大切さを教えてくれます。レオニの絵本には、人間が主人公のものは1冊もありません。小さな動物たちを主人公にすることで自由にイメージを表現し、自分の思いやメッセージを込めたのです。

 

『マシューのゆめ』1991年
Matthew’s Dream1991 by Leo Lionni/Knopf

 

『アレクサンダとぜんまいねずみ』1969年
Alexander and the Wind-up Mouse1969,renewed 1997 by Leo Lionni/Pantheon

 

第2章「自分は自分-みんなとちがうことは すばらしいこと」は、「本来の自分を発見する」がテーマになっています。悩み多きねずみのアレクサンダ(『アレクサンダとぜんまいねずみ』)や小さなペツェッティーノ(『ペツェッティーノ』)には、共感を覚える人も多いのではないでしょうか。レオニは、主人公たちの色や形、大きさ、配置によって心の動きや感情を巧みに表現しています。グラフィック・デザインの仕事を積み重ねてきた、レオニならではの技法と言えるでしょう。

 

『ペツェッティーノ』1975年
Pezzettino1975 by Leo Lionni, renewed 2004 by Nora Lionni and Louis Mannie Lionni/Pantheon

 

『シオドアとものいうきのこ』1971年
Theodore and the Talking Mushroom1971,renewed 1998 by Leo Lionni/Pantheon

 

第3章「自分を見失って-よくばりすぎはよくないはなし」では、賢いちびかたつむり(『せかいいちおおきなうち』)、仮面の祭りで我を失った野ねずみたち(『みどりのしっぽのねずみ』)、嘘をついたために姿を消さなければならなかったねずみのシオドア(『シオドアとものいうきのこ』)が登場。愚かなことをしてしまう彼らの姿は、自分自身を振り返る機会になるかもしれません。

 

そして、第4章「知恵と勇気-小さなかしこいゆう者たちのはなし」。しゃくとりむしやねずみなど、持ち前の知恵と勇気を振り絞り、苦難を乗り切っていく主人公たちに共感し、励まされることでしょう。孤独だった小さな魚が仲間とともに困難を乗り越え、自分ならではの役割を見いだしていく『スイミー』は、残念ながら原画はありませんが、最後のブースで映像作品としてその世界を感じることができます。スクリーンに影を映して、変化する魚たちの動きを楽しんでください。

 

絵本によく登場する切り絵のねずみのパーツと、レオニが集めていたぜんまい仕掛けのおもちゃ

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映像で『スイミー』の世界を体感。スクリーンに映った影に合わせて、魚たちが動きを変える

 

本展での見どころは、やはりまず原画の美しさにあるでしょう。「色の魔術師」と呼ばれるほどの鮮やかな色彩は注目です。加えて、先にもふれたような、レオニならではの技法。レオニはストーリーを考えると、それに見合った技法を取り入れていたといいます。例えば『みどりのしっぽのねずみ』では、油彩を用いることで、ねずみたちのどろりとした心情を表現。ほかにも『さかなはさかな』のように色鉛筆だけで仕上げた、やわらかなイメージのものもあります。どのような意図で用いられた技法なのか、を意識して観るのも面白いでしょう。

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子どもにも大人にも人気の2階・絵本コーナー。いすに座って、ゆっくりと絵本を楽しんで

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この時期、美術館の周りはハナミズキやサツキ、藤など花がいっぱい。やすらぎの空間

 

開催期間中は、展示室の1室をショップにし、レオニ関連のグッズを多数販売しています。また「茶室・佐喜知庵」ではコラボレーション企画として、『スイミー』をイメージし、小さな魚をかたどった和菓子も用意しています。思い出にぜひ、どうぞ。

 

インフォメーション

刈谷市美術館は「人とひと」「人ともの」との新たな出会いや交流の場として1983年に開館しました。コレクションは郷土の美術、戦後の日本美術、現代の美術、絵本原画の4つのテーマに集約されており、2011年3月現在で総数1121点。これらを常設展や企画展を通して紹介しています。また、展示室を一般の人たちにも貸し出し、グループ展や個展など創作活動の身近な発表の場としての役割も担っています。

 

●アクセス

愛知県刈谷市住吉町4-5
TEL 0566-23-1636
JR東海道本線・名鉄三河線「刈谷駅」下車、徒歩10分
 *刈谷駅〜美術館まで、刈谷市の公共施設連絡バス(無料)も利用できます。

詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.city.kariya.lg.jp/museum/