手仕事の心を感じられる「静岡市立芹沢銈介美術館」

「静岡市立芹沢銈介美術館」は静岡市にある登呂公園の一角になじむように建っています。1981年に開館したこの美術館には染色家・芹沢銈介(1895-1984)の作品が約800点と、芹沢が集めた世界各国の工芸品が約4500点も収蔵されています。これらは1年に3度催される展覧会で、毎回200点ほど展示されています。

 

   色差しをする芹沢銈介(1980年撮影

 

建築家 白井晟一(しらいせいいち)によって設計された「石水館(せきすいかん)」は平成10年公共建築百選に選ばれました

 

「石水館(せきすいかん)」と名づけられた古城のような建物は、石・木・水をテーマにした天然素材からできています。眺める角度によってまったく違う表情を見せてくれるから不思議。美術館の扉を開くと、まるで隠れ家のような異世界のはじまりでした。

 

太陽の光を閉ざし、柔らかな照明を当てることで、11部屋もの展示室を流れるように回遊できます。唯一光がたっぷり入るガラス張りの応接室や、神聖な空気が漂う八角形の展示室がメリハリとなっていた館内。気に入った場所でくつろぐことができるよう、椅子が用意されている気遣いにも癒されました。

 

池を中心にしてコの字型に並ぶ展示室は幻想的

 

全9章からなる展覧会の第1章は「ふるさとの山 富士への思い」

 

5月11日まで開催されている「芹沢銈介没後30年記念 ふるさとへの思い-芹沢銈介の日本-」では、芹沢の作品が100点ほどと、彼が集めたコレクションが100点ほど展示されています。

 

「芹沢銈介の日本」と題した前半には、のれん、屏風、着物、帯、絵本、挿絵、カレンダー、うちわなどが展示されていました。作品のモチーフになっているのは芹沢が日々写生した絵画、各地を旅したときの風景、日本全国の手仕事の現場で働く人々の風景です。とくに印象に残ったのは、彼の故郷静岡が誇る富士山を描いた作品たちです。一度見たら忘れない個性的なデザインに、親しみを感じて足を止めました。

 

一枚一枚丁寧にすきあげた手すき和紙に型染されている「カレンダー」は癒し系

 

仮名文字を美しいデザインにした遊び心を感じる「いろは文字文着物」

 

後半は「芹沢銈介が愛した日本の手仕事」と題し、芹沢が日本全国から集めた陶器、漆器、お面、家具、染色などの工芸品が100点ほど展示されていました。弥生時代の土器や江戸時代の人形など、時間や場所を超越したコレクションは、一本筋の通った芹沢の審美眼によって統一されています。

 

1895年に静岡市葵区に生まれた芹沢銈介は、幼い頃から絵を描くことが好きで画家になりたかったそうです。32歳のとき、日本に古くから伝わる染物の技術を身につけ、だんだんと自分らしい作品を生み出すようになりました。染色家になった芹沢は「型染(かたぞめ)」を極めます。型染とは型紙を用いて糊を置き、模様を染め出す伝統的な技法です。

 

芹沢銈介が装幀を手掛けた本をゆったりと手に取ることができる癒しの空間 

 

花車」は芹沢のコレクション

 

またこれまで職人たちが分業で行っていた型染の工程を、自身で一貫して行いました。デザインから染めに至るまで一貫して制作する芹沢作品はこれまでの「型染」と区分して「型絵染(かたえぞめ)」とされ、1956年には人間国宝に選ばれました。

 

この時代にして北は北海道から南は沖縄まで、自ら足を運んだ芹沢。フランス・パリで作品展も開きました。大胆な行動力は作品にも醸し出され、かの川端康成氏が「芹沢さんの五十年の仕事は世に広がって、芹沢銈介の日本があると思えるほどになっている」と表現したほどです。

 

一歩足を踏み入れるだけでひんやりとして、神聖な空気が漂っていた展示室

 

グッズ販売コーナー壁面にある倉敷の手仕事「花筵(はなむしろ)」は芹沢がデザインしたもの

 

芹沢銈介の手仕事に託された自由な発想と探究心に触れると、日常の1コマが少しちがって見えはじめる気がします。

 

●アクセス

静岡市駿河区登呂5丁目10番5号
TEL 054-282-5522
静岡駅南口からバス「登呂遺跡」行きで終点にて下車
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.seribi.jp/