海中のクリエイティブ・アートに癒される「伊東昭義美術館」

東京・目黒にある「伊東昭義(いとうあきよし)美術館」は、昨秋オープンしたばかりのまだ知る人ぞ知る存在の美術館です。その名を冠していることからも分かる通り、館内の展示作品はすべて、米国スミソニアン美術館において日本人で初めて個展を開催したこともある海中のクリエイティブ・アーティスト、伊東昭義氏のアート作品です。伊東氏の作品は、画像を見ても、さらに実物を見たとしても、“絵”もしくは“CG”のようにしか思えません。しかし、それは“写真”なのです。

 

中へ入ると一気に伊東昭義氏のアート世界に惹き込まれる「伊東昭義美術館」

 

建築家 2階展示会場は“理想郷”がテーマ

 

伊東氏はもともと彫刻家として活動していましたが、大きな転機をもたらした出来事がありました。沖縄の美しい海との出会いです。この出会い以降、美しい色彩をアピールしようとする生き物をなるべくそれに近い色で表現し、潜ることのない人々にもその美しさを、見て、知っていただくことのできる作品づくりをするようになりました。
彫刻家として長年培ってきた造形力、報道カメラマンだった父親から受け継いだカメラ技術、それに加え、撮影した水中の汚れを大きなコンピューターで取り除く作業。こうしてテクノロジーの最高水準を用いた海中のクリエイティブ・アートが約30年前に完成したのです。
伊東氏が以前から試みていた技術は、最近では一般的にできるようになったので、ようやく現代のテクノロジーが伊東氏のしてきたことに追いついたと言えるでしょう。

 

2階と3階には、レーザーグラフィックプリントによる大型額装作品が展示されています。過去の芸術概念を一新させることになった、「海には地上にあるすべての色彩が揃っていた」という伊東氏の衝撃的な発見を、私たちは海中のクリエイティブ・アートで見ることができます。展示されている作品はどれも色鮮やかでインパクトがあり、まばゆいばかりの生命感にあふれています。沖縄の海、そして琉球紅型を思い起こさせる鮮明な色、すべての色が目の前に広がっています。

 

ここで展示作品をいくつか紹介しましょう。
“理想郷”がテーマの2階に展示されている『純粋美』は、琉球イソバナの美しさに惹かれる作品です。そこに棲み、周囲を泳いでいるタテジマキンチャクダイのとぼけた顔つきと美しい体の色といい、そこにあるすべてが純粋美というにふさわしい、神さまから与えられた生粋の美しさが捉えられています。

 

           「純粋美」

 

「春うらら」

 

“創造の伝説”がテーマの3階に展示されている『春うらら』は、海中なのに、まさに春を思わせる作品です。魚であるオオフエヤッコが、まるで菜の花畑にひらひら舞っている蝶のようです。海中に差し込んでいる陽の光もおだやかな暖かさを感じさせ、見る人に明るい希望を与えてくれます。

 

これら展示作品にはすべて、伊東氏による説明が書き添えられています。詩的なもの、ユーモアのあるものなどさまざまで、作品に添えられた文字にも伊東氏の世界が広がっています。
2階、3階を順番に回り、作品と説明板を一つひとつ見るだけでもじゅうぶん伊東氏のアート世界を満喫できますが、3階からエレベータで地下へ下りると、さらに不思議な空間が広がっています。ここからが伊東昭義美術館のハイライト、メーンイベントとも言えるでしょう。エレベータによって、来場者は一気に海に潜っていくのです。ちなみに、このエレベータは、海中を連想させる深いブルーで彩られています。3回も塗り直しをしたほどこだわったという“伊東ブルー”も必見です。

 

館内の各所にあるサンゴの彫刻が、海を回遊しているような雰囲気を創りだしています

 

まるで海中にいるような気分になるコルトンルーム

 

伊東ブルーの海の中、一気に地下に潜った先には、伊藤氏のアート作品をより一層リアルに見せてくれるコルトンルームがあります。大型コルトンボックスは、空港などでよく見られる照明設備です。アクリル板に内部から照明をあてることにより、まるで光が差し込む深海にいるような感覚をここでは楽しむことができます。

 

はじめは暗いのでドキドキしながら、そして世界初のコルトンルームとはどんな展示室なのかワクワクしながら歩を進めると、少しずつライトが点灯していきます。ほかの来場者と重ならず、運良くコルトンルームに1人になれたら、とってもラッキー!!! 本当に深い海の中にいるような感覚に襲われます。深く、静かで、鮮やかな色彩を放っている生き物たちに囲まれると、人は何を思い、何を考えるのか。そのまばゆい世界に喜びを感じて憧れるのか、自然界に対する畏怖の念を覚えるのか、もしくは、ただただ無の境地になり、呆然と立ち尽くしてしまうのか。あなたならどんな気持ちになるのかを一度試しに訪れてみてはいかがでしょうか。

 

見つけると幸せが訪れる(?!)フクロウがいる屋上。この写真の中にも小さく写っていますよ

 

インフォメーション

2013年11月にオープンした伊東昭義美術館は、“海中の色彩の発見者”と評されている海中のクリエイティブ・アーティスト、伊東昭義氏のアート世界を堪能できる美術館です。美術館では世界初となる、海中にいるような臨場感あふれるコルトンルームを併設しています。

 

●アクセス

東京都目黒区目黒3-11-3
TEL 03-6451-2123
JR山手線、東急目黒線、地下鉄「目黒駅」より徒歩10分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://ito-art.com