翡翠の魅力とパワーがみなぎる「翡翠原石館」

東京・北品川の閑静な住宅街に、とても珍しい博物館があります。翡翠(ひすい)に特化した「翡翠原石館」で、館長の靏見(つるみ)信行氏が長年にわたりコレクションしてきた翡翠原石の数々を展示しています。

 

偶然にも、世界有数の翡翠産出国であるミャンマー大使館のそばにある「翡翠原石館」

 

       壁画『奴奈川姫』と靏見館長

 

小さい頃から石が好きだったという靏見館長。縄文遺跡で翡翠をはじめて見てからというもの、日本では有数の翡翠産地である新潟県・糸魚川(いといがわ)にいつか行ってみたいと思い、二十歳の時に初めて糸魚川を訪れました。その後は家業を継いで忙しく過ごしていましたが、大病を患ったり海外で危険な目に遭ったりしたことがきっかけとなり、「死ぬ前に好きなことをやりたい!」と思うようになり、再び糸魚川を訪れたとき、親不知(おやしらず)海岸で光る翡翠を見つけました。その運命的な出合いによって、翡翠への気持ちが加速していったのです。「翡翠は寂しがり屋だから、いっぱい集まってくる」そうで、博物館を開けるくらいにまでいつしか集まり、今日に至ります。

 

2階からは、鉱物がびっしり隙間なく貼られた壁画を近くで見ることができます

 

館内にある翡翠原石のパワーで空気が良いのか、グリーンもイキイキしています

 

翡翠原石館に入ると、大きな壁画が目に飛び込んできます。「宗教的でも性的でもない、朝霧の中にかすかに見える新緑の様に」をテーマに掲げて製作された、本間洋一氏による『奴奈川姫』(ぬながわひめ)です。翡翠をはじめアマゾナイ
ト、大理石など40~50種類の鉱物が10万個以上も使われています。手作業で石を角砂糖くらいの大きさにし、それをさらに細かくして隙間を埋めてくという作業が6年がかりで行われました。
現在の新潟県糸魚川市近辺を統治していたとされる奴奈川姫は、古事記に登場するお姫様で、翡翠の勾玉(まがたま)を身に付けていました。「翡翠」は、「ひすい」と読むほか「カワセミ」とも読みます。この作品で翡翠を身に付けた奴奈
川姫は、やさしいまなざしでカワセミを見つめています。また、壁画とその手前にある翡翠原石は連続性を持たせてあるので、まるで奴奈川姫が岩場に立っているかのような演出もされています。

 

総檜風呂とはよく聞きますが、こちらは世にも珍しい総翡翠風呂

 

2階のテーブルで来館者にスリランカティーがふるまわれます

 

1階をさらに奥に進んでいくと、博物館なのにお風呂があります。翡翠原石館ですから、もちろん翡翠原石からつくられたお風呂です。糸魚川産の数10トンもの翡翠をくり抜いてつくった翡翠風呂です。日本で唯一、世界でもここだけかもしれません。浴槽だけでなく、壁も床も全て翡翠です。なぜお風呂をつくろうと思ったのか靏見館長に伺うと、「翡翠のぐい飲みでお酒を飲んだら透明でマイルドな味わいになったので、お風呂ならどうなるのか試してみたかったから」。そんな理由で、開館当初は庭だったところへわざわざお風呂を後からつくり足してしまったというエピソードのあるユニークな館長です。
翡翠がひんやり冷たいうえに大きな浴槽ですから、家庭で入れるように40数度のお湯ではすぐに冷たくなってしまいます。そのため、78度のお湯を入れるそうです。実際に入浴するとなると、ガラス張りのため外から中が丸見えなのが気になりますが、お湯を入れるとガラスは曇って中が見えなくなるそうです。また、浴槽の横にある不動明王像は蒸気できれいな緑色になるそうですが、残念ながらその美しい姿を来館者は見ることができません。館長自身もたまにお孫さんたちと入浴するくらいで、もちろん一般には解放されていませんので、館長からお話を聞き、想像を膨らませるしかありません。翡翠原石のお風呂に入ると、お湯と体内の水分が一体になり肉体が消滅して、まるで精神が浮遊しているような感じがするそうです。

 

2階には、様々な原石や加工品が展示されています

 

日本では新潟県・糸魚川が翡翠の産地ですが、宝飾品にも使われて世界的に有名なのはミャンマー産の翡翠です。宝石としても人気の高い翡翠は、ダイヤモンドやルビー、サファイアなどのように単結晶ではありません。翡翠は結晶の集まりなので透明になるのが難しく、そのため透明感のあるものは価値があるそうです。でも、「自分が好きなのがいちばん」と力強く言われた靏見館長。確かにいくら価値があっても自分が好きでなければ身に付けても楽しくありませんし、そんな気持ちでいては翡翠が持っているパワーも発揮されないかもしれませんね。
純粋な翡翠輝石は白色で、鉄やクロムの成分で緑色になっていたり、チタンによって紫色になったりします。ギャラリーでは翡翠のコレクションが展示されているほか販売も行われているので、原石ではなく宝飾品になった翡翠の数々も見て、自分ならどんな翡翠に心が動かされるのか感じてみてはいかがでしょうか。翡翠原石のパワーにあふれ、空気が澄んでいる翡翠原石館を訪れると、きっと翡翠の魅力に夢中になりますよ。

 

インフォメーション

2002年に開館した翡翠原石館は、靏見信行館長が約50年にわたって収集した翡翠の原石を展示している博物館です。現在2号館を建設中で、2014年のうちに開館を予定しています。

 

●アクセス

東京都品川区北品川4-5-12
TEL 03-6408-0314
京浜急行線「北品川駅」より徒歩5分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.hi-su-i.com/