怪しいアノの花が見られるかも?「東京都薬用植物園」

0

今回ご紹介するのは、東京・小平市にある「東京都薬用植物園」です。名前の響きからは、どんな植物が植えられているのか想像しがたい、しかもどこかお堅い雰囲気が感じられます。しかし、行ってみると大違いで、そこは多くの人が散策を楽しみ、何気なく植物を愛でに訪れる、憩いの場でした。ある一角を除いては…。
ちょっと含みをもたせて書き出しましたが、その理由は後半のお楽しみです。

 

薬草教室やイベントも頻繁に行われている「東京都薬用植物園」

 

温室ではカカオの実がなっていて、熱帯ムード満点です

 

5月中旬、平日の午後に訪れた時には駐車場は満車。予想外の盛況ぶりにまず驚かされました。入園してすぐ目の前にある温室には、植物に詳しくなくてもわかる南国特有の植物、バナナやカカオもあり、実がなっているのを見ると東京にいるのを一瞬忘れそうになる雰囲気です。

 

“薬用”植物園の名の通り、園内の植物はただの植物ではありません。漢方薬原料植物区、製薬原料植物区などに区分けされています。園内を散策するだけで、薬用植物に関する知識が深まります。園内にあるのは知らない植物ばかりだろうと思われるかもしれませんが、私たちの身近にある植物も多数あり、それが薬用だったことに驚かされます。

 

水辺や湿地に生える薬用植物が栽培されている、水生植物区

 

紫色のハーブティーになるウスベニアオイは喉に良く、レモンを入れるとピンクに変わるので、色の変化も楽しめます

 

例えば、民間薬原料植物区には、ヨモギやクコなどスイーツにも用いられ、身体に良いとよく聞く植物があります。染料・香料植物区には、天然甘味料のステビア、アジア料理には欠かせないコリアンダー、ディルやミント、ラベンダーといったおなじみのハーブが並んでいます。ハーブティーで親しまれている、ウスベニアオイ(マロー)がキレイな花を咲かせていました。

 

薬用になる植物があれば、逆の植物もあります。例えば、満開の白い花をつけていたドイツスズラン。可憐でかわいい姿をしていますが、このスズランがあったのは有毒植物区。強心作用が強く、誤って口にすると心臓停止で死亡する危険性があります。日本のスズランも同様です。ほかにも、福寿草、スイセン、クレマチス、クリスマスローズ、アセビなども同区内にありました。日本には200種類以上の有毒植物があるそうですが、触るとかぶれるものから口にすると下痢を起こすもの、死に至るものまでその症状は様々。実際に中毒事故も発生しているので、しっかり知識を持ち、注意することが大切です。

 

かわいい見た目とは違い、誤って口にすると危険なスズラン

 

フェンスの上には有刺鉄線まで張り巡らされている、ケシ・アサ試験区

 

毒に関連してさらに緊張感が張りつめている一角があります。2重のフェンスに囲まれて監視カメラまで設置されているのです。なぜフェンスで囲まれていると思いますか? 一般来園者が簡単に触れたり、持ち去られては困る「ケシ・アサ試験区」だからです。この植物園の最も特徴的な区域です。ケシは、モルヒネなどのアヘンアルカロイドを含み、鎮痛、鎮咳薬などの製造原料として重要な植物ですが、強い依存症を引き起こす麻薬の側面も持っています。人にとって、薬とも毒ともなる植物なのです。
普段は決して入ることができませんが、外側のフェンスが5月1~24日までの期間限定で解放されていて、満開のケシの花を、通常より少しだけ近づいて見ることができました。大ぶりの白や朱色の艶やかな花が咲き誇っていました。

 

フェンスの間をぬって撮ったケシの花

 

こちらは植えても良い、ケシ科のアイスランドポピーやヒナゲシ

 

ケシにも種類があり、フェンスの中のケシは『あへん法』で栽培が禁止されていますが、趣味の園芸で私たちが植えて楽しめるケシもあります。フェンスの隣には、植えても良いケシ科の植物、アイスランドポピーやヒナゲシが満開でした。植えても良いケシとそうでないケシの見分け方がパネル展示されていて、不正なケシを見つけた場合は、同植物園をはじめ関係施設に知らせるよう連絡先も記されていました。

 

武蔵野を象徴する雑木林として、大切に保護・管理されている林地もあります

 

このように同植物園では、薬用植物への正しい知識の普及に努めています。園内は一般公開されていて、誰でも無料で入園できます。知っている植物の意外な一面、また知らない植物についても知識を得るために、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

 

[su_note note_color=”#f6f6f6″]
インフォメーション

昭和21年に設立された、薬務行政の一環で薬用植物の収集、栽培をしている植物園です。現在は、違法ドラッグや健康食品の指導・取締りに向けた植物や鑑別などの試験検査や調査研究を主に行っています。

[/su_note]

 

[su_note note_color=”#f6f6f6″]
●アクセス

東京都小平市中島町21-1
TEL 042-341-0344
西武拝島線「東大和市駅」より徒歩2分

詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.tokyo-eiken.go.jp/lb_iyaku/plant/

[/su_note]