川崎市市民ミュージアム「昔のくらし今のくらし2013」展

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私たちは日々のくらしの中でさまざまな道具を使用していますが、その中には、時代を経ても形の変わらないものもあれば、形だけでなく驚くほど機能が変化したものもあります。そうした生活道具の移り変わりから、くらしの変化を振り返る企画展「昔のくらし 今のくらし2013」を、川崎市市民ミュージアムでは3月31日まで開催しています。

 

等々力緑地内にある川崎市市民ミュージアム

 

ちょっと昔の昭和に使用していた生活道具など、見覚えのあるものが多く懐かしい展示室内

 

縄文時代のものから昭和のものまで展示されていますが、見ていて懐かしく話に花が咲くのは、幼い頃、家庭にあった昭和のものです。
たとえば、“三種の神器”。約60年前に誰もが憧れ、ほしいと思った白黒テレビ・冷蔵庫・洗濯機です。その10年後には、人々の憧れはカラーテレビ・自動車・クーラーへと変化しましたが、さらに50年経った現代の私たちが、心からほしいと思う“三種”はいったい何なのでしょうか。

 

大阪万博が開催された昭和45年の茶の間も再現されています

 

昔は“三種の神器”でも、今は“三種の必需品”ですね

 

さらに、本展では、特集展示として「旅」をテーマに江戸時代と現代の旅行スタイルの変化を紹介しています。
簡単に情報を入手でき、空・海・陸の交通網も発達しているので、誰でも気軽に日帰りで近郊の温泉に行ったり、週末を利用して近場のアジアへ買い物・グルメツアーへ行ったりと、とくに「旅」と意識することもなく、思い立ったら簡単に出かけられる現代。では、今ほど旅をしやすい環境が整っていなかった時代、人々はどんな旅をしていたのでしょうか。

 

歴史をさかのぼってみてみると、人々が気軽に旅をするようになったのは、街道沿いの整備が進み、旅籠屋ができはじめた江戸時代の中頃だったそうです。現在の三重県にある伊勢神宮を参拝する“伊勢参り”に代表されるように、信仰や物見遊山を目的に、人々は旅をしていました。鉄道がない時代ですから、移動手段はもちろん自分の足。江戸と伊勢を往復するのですから、それなりの日数と費用が掛かります。そのため、個人で費用を捻出するのはむずかしいので、たいていの場合、村の人々でお金を出し合い、代表者たちが旅に出ていました。お伊勢さんを参拝したら、そのまま関西や四国にも足を伸ばして寺社や名所もまわり、長いと2カ月にも及ぶ旅になったそうです。

 

これだけを聞くと、お金をだしてもらって長い旅に出られていいように思えますが、代表として旅立ったのですから、のんきに遊んで帰るわけにはいきません。帰郷したら村のみんなへ旅の報告をしなければなりません。そのため、旅の日記帳に細かく日々のことを記し、決算のためにおこづかい帳には毎日の出費をつけていました。これらが現存し、私たちに当時の人々の旅の様子を詳細に物語ってくれるのです。

 

ブリキの湯たんぽ、豆炭あんか、白金カイロ。懐かしい人も多いのでは?!

 

江戸時代の旅人の行程マップと旅日記

 

今回の企画展では、3人の旅人の実際の「道中日記」が展示されています。その中の1人、須山金蔵さんの旅日記を見てみると、1847年1月6日に出発し、帰郷は3月13日。2カ月以上もの大旅行です。伊勢・奈良・大阪・四国・兵庫・京都をまわって、帰りは信州から日光まで足を伸ばすという盛りだくさんの旅です。金蔵さんの足取りがわかりやすく日本地図に示されているので、どれほどの長旅だったのかがよくわかります。日記には細かな文字が並んでいて、疲れきった1日の終わりに旅籠屋で毎日書いていたのかと思うと、村の代表者になるには健康・健脚だけではなく、強靭な精神力も必要だっただろうと思われます。なんでもそうですが、1日サボってしまうと、ずるずるとそのまま怠けてしまいますものね。

 

現代はガイドブックやインターネットで旅の情報を簡単に得られますが、江戸時代にも旅の案内書が出版されていました。宿場と宿場の間の距離や旅籠屋の情報、観光名所、渡し船の運賃など、内容は現代と変わりありません。
旅日記や旅の案内書を通して江戸時代の人々の一世一代の旅を見ると、電車で1~2時間も掛けて長距離通勤している私たちのくらしとのあまりの違いに、時代の流れを感じずにはいられません。

 

展示室の最後には、足踏みミシンなどの体験コーナーもあります

 

明治時代になると鉄道が敷かれ、人々の旅も楽に長距離を移動できるようになりました。鉄道の旅というと、楽しみの1つが駅弁ですよね。そこで、1階のレストラン3104では、今年のテーマ「旅」に合わせて、駅弁の特別メニューを提供しています。
展示を見て昔のくらしに思いを馳せたあとは、レストランでのんびり駅弁ランチを味わいながら、春の旅プランを考えてみてはいかがでしょうか。

 

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インフォメーション

川崎市市民ミュージアムは、「都市と人間」をテーマに掲げて1988年に開館した博物館と美術館の複合文化施設です。常設・企画展や映像の定期上映のほか、コンサートや講座、ワークショップなど様々な事業を展開しています。

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●アクセス

神奈川県川崎市中原区等々力1-2(等々力緑地内)
TEL 044-754-4500
JR線、東急東横線「武蔵小杉駅」よりバス「市民ミュージアム前」下車すぐ
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.kawasaki-museum.jp

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