醤油

 

日本人は中国など海外から伝来したものを、さらに進化させた食品をたくさん産み出してきました。醤油もその代表です。

 

醤油のルーツは古代中国に伝わる「醤(ジャン)」であると言われています。原料を塩漬けにして保存したことから生まれたもので、果実や野菜、海藻など材料にした「草醤(くさびしお)」、魚を使った「魚醤(うおびしお)」、肉を使った「肉醤(にくびしお)」、穀類を原料とする「穀醤(こくびしお)」などがありました。日本の醤油はその中でも米や小麦、大豆などを使用した穀醤が原型と考えられています。

 

8世紀の大宝律令によると宮内庁に属する「醤院(ひしおつかさ)」で大豆を原料とする「醤」が作られたとの記録があります。これは今でいう味噌と醤油の中間のようなものでした。鎌倉時代になると中国から帰国した信州の禅僧・覚心が持ち帰った味噌作りの製法を人々に教えているうちに、醤からしみ出る汁が美味しいことに気がついて、今日の「たまりしょうゆ」になったと言われています。

 

その後、日本で最初の醤油屋と伝えられる玉井醤が1580年頃には創業、醤油は大阪の人々に普及してまいりました。関東ではその頃まで製造されておらず、上方から運ばれてきたものは「下りしょうゆ」と呼ばれ、珍重されていました。

 

江戸時代も元禄から享保時代になると江戸の人口が増加。江戸っ子の好みに合う濃い味の醤油が関東で作られるようになりました。原料の大豆や小麦が産出される広大な関東平野にあって、利根川や江戸川などの水運にも恵まれていたことから千葉県の野田や銚子が醤油の産地となりました。現在も「こいくちしょうゆ」が生産されています。

 

そして、日本各地で地域の嗜好や醸造の歴史により様々な個性の醤油が生まれました。大きくは「こいくち」「うすくち」「たまり」「さいしこみ」「しろ」の5つに分類されています。

 

その中でも「こいくち」は国内生産量の約8割を占める醤油で、調理用、卓上用のどちらの調味料にも使える万能性があります。その製法は本醸造という伝統的なもので、蒸した大豆と炒った小麦を混ぜて、そこに種麹を加えて「麹」を作ります。これを食塩水と一緒に仕込んで「もろみ」を作ります。撹拌を重ねながら6~8か月の間、寝かせます。麹菌や酵母、乳酸菌などにより分解・発酵が進み、さらに熟成されて醤油特有の色や味、香りが生まれます。

 

「うすくち」は関西生まれで色の淡い醤油です。素材の持ち味を生かすために色や香りを抑えています。

 

「たまり」は主に中部地方で作られています。とろみと濃厚な旨味が特徴的です。“刺身たまり”と言われるように、寿司や刺身などの卓上用や、照り焼きなどの調理用に使われます。

 

「さいしこみ」は山陰から九州地方が特産の醤油です。他の醤油は麹を食塩水で仕込むのに対して醤油で仕込むので、“再仕込み”と呼ばれています。濃厚な色、味、香りが特色です。
「しろ」は愛知県生まれ。うすくちよりさらに淡い琥珀色で、味は淡泊ながらも甘みが強く、独特の香りがあります。

 

今、世界的に和食への関心が高まっていますが、寿司や刺身などの料理と共に醤油は世界の食卓へと広がっています。

 

【参考資料・web】

「しょうゆ情報センター」HP
「食と日本人の知恵(著:小泉武夫)」岩波現代文庫