漬け物

 

日本人は漬け物を大変古い時代から食べてきました。縄文時代には蔬菜の皮を塩漬けしたものが既にあり、平安時代の文献「延喜式」にも春や秋の野菜の漬け物が紹介されています。

 

このように日本が漬け物の伝統国になった理由は大きく二つあります。味噌、醤油、酒粕、米糠、麹などの変化に富んだ漬け床の材料が多くあったこと、もう一つは、漬け床に合った野菜が多種多様に栽培されていたためでした。

 

漬け物の美味しく漬け上がる原理は、塩分などの作用により野菜の細胞から水分が出て脱水されて浸透圧で細胞膜が破壊、内からも外からも通ずる膜に変化します。この細胞膜の壊れたところから、細胞内に食塩が入る現象を「漬かる」といいます。脱水された水に代わって漬け床の味や香り、栄養成分が野菜に入っていくことで美味しい漬け物が出来るのです。

 

この漬け物には日本人の食の知恵が数多く盛り込まれています。例えば糠漬けの場合、糠はビタミンB群の宝庫ですから、脚気や疲労などB群欠乏症の予防をこの漬け物で補うことができます。米をついて出た副産物の糠で、漬け物の風味を高めて栄養素の補給まで行うのですから素晴らしい生活の知恵です。

 

また味噌や醤油もろみに野菜を漬けておけば、食べたい時にいつでも食べられるのでとても便利。質素で、おまけに食事に時間をあまりかけたがらない日本人には、まさにぴったりの食品でした。

 

さらに賢い日本人は漬け物が腸内で身体に良い微生物、特に乳酸菌を増やすことを大いに助けることを体験的に知っていたようです。野菜にはもともと乳酸菌がついていますが、これを漬け物にすると塩に対して抵抗力のある乳酸菌が漬け床で盛んに繁殖します。人がこれを食べると漬け物についていた乳酸菌の一部が腸内まで達し、そこで活発に増殖を始めます。すると腸内は良い乳酸菌で支配されるようになり、腐敗菌などが侵入してきてもその繁殖を抑えることが出来るのです。

 

さらに増殖した乳酸菌は腸内で多種のビタミンを合成するので、人はこれを腸から吸収し、身体のために役立てることにもなりました。

 

昔の人が漬け物を食べる時、漬け上がった野菜だけを食べるのではなく、二日に一度は漬け床をぬるま湯に溶いて飲む習慣がありました。西欧人が健康のためにヨーグルトや乳酸菌飲料を摂取していたように、日本人は漬け物と漬け床から健康と食を考えていたことがわかります。

 

【参考資料・web】

「食と日本人の知恵(著:小泉武夫)」岩波現代文庫
「漬物ポータルサイト」全日本漬物協同組合連合会