美容の神水「八坂神社」

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社伝によると八坂神社の創始は斉明天皇2年(656年)に高麗の使節が日本を訪れた際、新羅の牛頭山に座した素戔嗚尊(すさのおのみこと)を山城国愛宕郡八坂郷の地に奉斎したことに始まるとされています。素戔嗚尊は伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が日向にある橘の小戸の阿波岐原(あわぎはら)での禊の最中、洗った鼻から産まれ落ちた神様だとされています。
その名の示すよう(「スサ」は「凄まじい」の意)、素戔嗚尊は古来より荒ぶる神として知られ、伝わる神話にもその豪放磊落な性質を裏打ちするエピソードに事欠きません。

 

西楼門。切妻造りで建てられ、別名夜叉門とも駕籠門とも称されています

 

本殿

 

伊邪那岐命より海原の統治を任された素戔嗚尊、これに不満を感じ、泣きわめくかの如く山を荒らし海を枯らせ、幾多の厄災を起こしたことで伊邪那岐命により追放されてしまいます。さらにその後向かった天照大神(素戔嗚尊の姉)の統べる高天原(たかまのはら、たかあまはら等)でも、彼女との誓約(うけい)に勝利し、その優越と元よりあった姉への不信から荒ぶる本性そのままに乱交の限りを尽くしたが結果、ここでも追放の憂き目にあってしまいます。

 

八雲立つ、出雲八重垣、妻籠(つまご)みに 八重垣作る その八重垣を

 

乱暴狼藉の限りを尽くしてきた素戔嗚尊ですが、出雲の国では不思議と知力と武力を兼ね備えた英雄として祀られています。そのイメージを醸成したのは素戔嗚尊が八岐大蛇(やまたのおろち)を懲らしめた英雄譚と無縁ではないでしょう。八岐大蛇を退治し、犠牲となるはずだった櫛稲田姫命(くしいなだひめのみこと)を救って、妻とし、共に出雲の須賀の地に構えた宮で子の八柱御子神(やはしらのみこがみ)を産んだ。ギリシャ神話の英雄譚にも由来するこの種の説話(男が怪物を殺し娘を救い結婚する)に私たちは素戔嗚尊の単なる乱暴者ではないヒロイズムに基づく男らしさを重ねるのかもしれません。なお上記の和歌は、素戔嗚尊が出雲で詠んだもので、日本で最初の三十一文字の歌であることから素戔嗚尊は和歌の始祖とも和歌の神とも称されています。

 

美御前社。1591年建造

 

美容水

 

八坂神社の御祭神は中御座に素戔嗚尊、東御座に櫛稲田姫命、西御座に八柱御子神の3柱。
一つ屋根の下、拝殿と本殿の2棟を合わせた様式の「祇園造り」で建つ本殿は5度の焼失ののち、1654年に徳川幕府によって竣工されました。その下には大きな池があり、そこには八岐大蛇を彷彿とさせる龍が棲んでいるとも、清龍の龍穴と呼ばれる底なし井戸があるとも噂されています。

 

それが事実かどうかはさておくとしても、境内を歩いていると、八坂神社には水に関わるスポットがとても多いことに気づかされます。例えば末社の美御前社(うつくしごぜんしゃ)。その御祭神は多岐理毘売命(たきりひめのみこと)、多岐津比売命(たきつひめのみこと)、市杵島比売命(いちきしまひめのみこと)の3柱で、先に挙げた、素戔嗚尊と天照大神が神生みを競う誓約にて生まれた神様だとされています。別称、宗像の3女神とも呼ばれ、美しく、わけても市杵島比売命は美貌の女神とされる吉祥天と習合していました。参ると美容美徳のご利益あり、特に社の横に沸き流れる「美容水」は2,3滴手に取り肌につければ張りは元より心から美しく磨かれるありがたいご神水なのだそう。

 

祇園の御神水

 

大黒さまと白うさぎ像

 

美容水を肌へと塗った後はそこから南へ30メートル先に位置する「祇園の御神水」も試してみてください。流れ落ちる一筋の水は地下およそ90メートルからの湧水で、一説には本殿下の底なし井戸と同じ水脈からの水ではないかとされています。別名「力水」とも呼ばれるこの神水を飲んで「美容水」も肌に塗りこめればより一層絶世へと近づき、今よりもっと輝く魅力をその身に抱けるかもしれませんね。

 

美しさに一歩近づけたところで出会いと縁結びのご利益にもあやかるべく、本殿南西に位置する末社の大国主社へ向かいましょう。とても小さな社ですが、その御祭神は大国主命(おおくにぬしのみこと)、事代主命(ことしろぬしのみこと)、少彦名命(すくなひこなのみこと)の3柱。大国主命は素戔嗚尊の6世の孫で、俗に大黒さまとしても親しまれている有名な神様ですね。福の神、そしてまた縁結びの神として厚く信仰されていますが大国主命と聞けば即座に「因幡の白兎」のお話が想起されますでしょうか。その兎と大国様の出会いを象った石像がちょうど社の鳥居の脇に据えられています。注連縄が巻かれ、特に物々しいというわけで

 

祇園えべっさん。蛭子社の脇に立つ像で触れると商売繁盛のご利益があるとされています

 

南楼門。八坂神社の正門。1866年の焼失を経て、1879年に再建されました

 

一層美しくなった姿で素敵な異性と奇跡的な出会いを果たす。多くのご利益に授かれる八坂神社は女性ならば一度は訪れてみるべき神社かもしれません。

 

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アクセス

京都府京都市東山区祇園町北側625
TEL 075-561-6155
京阪祇園四条駅より徒歩5分、阪急河原町駅より徒歩8分
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