ぽっくり往生と縁結び。老若男女でにぎわう「八事山興正寺」

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中京大学、南山大学、名古屋大学、名城大学が集まり、文教地区として知られる名古屋市昭和区・八事(やごと)。学生や家族連れの多いこの地で、古くから人々に親しまれてきたお寺が「真言宗 八事山興正寺」です。全国で修行を重ねた末、高野山で弘法大師の五鈷所(ごこしょ:密教の法具)を授かった天瑞圓照和尚が貞享(じょうきょう)3年(1686)に草庵を結んだことがはじまりで、その2年後には尾張藩2代目藩主・徳川光友の帰依を受け、「八事山遍照院興正律寺」の称号を授かりました。「尾張高野」とも呼ばれています。

 

参道から見た中門。もとは女人門といい、東山と西山の境に建ち、女人禁制を守っていた

 

愛知県で唯一の木造塔である五重塔。国の重要文化財に指定されており、興正寺の象徴

 

緑豊かな4,000坪もの境内は、東山遍照院と西山普門院に分かれています。東山には総本尊大日如来を祀る大日堂を始め、奥之院、弘法堂、不動堂など、西山には五重塔のほか本堂、観音堂、能満堂、圓照堂、普照殿などと由緒ある建造物が多数。平日は比較的静かですが、毎月5日と13日に行われる縁日や21日のマルシェには大勢の参拝者でにぎわいます。

 

総門(現在改修中)をくぐり参道に出ると、正面に中門と五重塔が見えます。流れるような屋根のラインが美しい五重塔は文化5年(1808)に建立されたもので、高さ30メートル。昭和57年(1982)に、愛知県で唯一の木造五重塔として国の重要文化財に指定されました。更に奥へ進んで、正面が本堂です。ここには、本尊の大日如来、大隋求明王(だいずいぐうみょうおう)、不動明王、愛染明王、文珠菩薩、弘法大師、寿老人などが祀られています。

 

写真右が、納骨壇式永代供養を行っている圓照堂。左の階段奥には、エスカレーターもある

 

縁結びのご利益も。蝶々の形をした札が可愛らしい。「縁結びの木」に願いを込めて

 

近年、興正寺が広く知られるようになったのには、実は本堂の大隋求明王に理由があります。この大隋求明王、無病息災や安楽往生の仏様で、通称「ぽっくりさん」。お参りすれば「苦しまずに、安らかに逝くことができる」「老後に下の世話にならずにすむ」と主に口コミで徐々に広がり、多くの年配者が訪れるようになりました。特徴的なのが「七ヶ月参り」です。月に1度お参りをして印を受け、七ヶ月目(連続でなくてもよい)で満願。「無病息災で永く闘病せずに暮らせる」ように守ってもらえるということです。もちろん、ご利益はほかにも家内安全、商売繁栄、身体健全、心願成就、良縁成就、学業成就などさまざまあるので、どれでも自分の思いを込めて祈ってください。

 

興正寺の本尊、大日如来像が安置されている大日堂。八事山内で一番高いところに位置している

 

弘法大師、開山天瑞圓照和尚、興正菩薩の三祖が祀られている開山堂(弘法堂)

 

さて、本堂から東山へと向かい山内をひたすら上っていくと、大日堂が姿を見せます。堂内には、重さ2トン、高さ3.6メートルの大日如来像が鎮座。これは元禄10年(1697)、徳川光友が母の供養のために鋳造させたものです。そして、そこから道なりに下ると奥の院。不動護摩堂や東山本堂があります。東山は豊かな自然が残っており、参拝といっても森の中を散策しているような感じです。実際、「八事山を歩こう会・史跡散策路コース」というのが設けられているので、ところどころにある立札を見ながら進むといいでしょう。

 

三十三観音の石像。興正寺は「尾張三十三観音霊場」の第三十三番札所でもある

 

奥の院にある不動護摩堂。興教大師覚鑁作の不動明王が祀られている。奥に見えるのは東山本堂

 

東山をぐるりと回って本堂周辺に戻ったら、西山の観音堂にもぜひ足を運んでみてください。徳川光友より寄進された慈覚大師作・観世音菩薩(秘仏)が本尊として安置されています。脇にある鐘楼では普段から自由に鐘をつけるので、鐘の音で心を落ち着かせてみてはいかがでしょうか。

 

興正寺では、現在「平成大改修」が進行中です。総門のほか、座高6.1メートルの平成大仏「釈迦牟尼大仏」(今年9月に入仏予定)を奉安する牟尼殿、茶寮となる持仏院などが平成28年に完成予定です。「いつまでも人々が集う心のよりどころでありたい」との願いを持ち、これからの100年を見据えたお寺を築こうというのが、今回の大改修の目的。今から完成が楽しみです。

 

観音堂の脇にある鐘楼。毎年、大晦日には除夜の鐘つきが行われ、多くの人でにぎわう

 

東山の入口として、宝永年間に名古屋城から移築した東山門。「黒門」とも呼ばれている

 

隣接する中京大学は興正寺の土地に建っており、隔てる壁もとくに無く、境内を散策しているとそのままキャンパスに入って行けるほどです。そのため、学生が日常的に行き来し、年配者だけでなく若者や家族連れの憩いの場にもなっています。先に挙げた縁日やマルシェも、大勢の老若男女でとてもにぎやか。創建から300年以上経ち、ますます「人々が集う心のよりどころ」になっているようです。

 

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アクセス

名古屋市昭和区八事本町78
TEL 0120-8510-78(フリーダイヤル)
地下鉄鶴舞線・名城線「八事」駅から徒歩3分

http://www.koushoji.or.jp/
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