自己と向き合える伊豆稲取「かやの寺」の不動消災の道

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伊豆稲取駅にほど近い済廣禅寺(さいこうぜんじ)は、別名を「かやの寺」といい、境内に樹齢750年もの榧(かや)の大樹があることで知られるパワースポットです。1965(昭和40)年に静岡県の天然記念物にも指定されたかやの木は、高さが約18mもあり、その前に立つと健やかなパワーが感じられます。かやの木を見上げて静かに佇んでいる人を何人も見かけましたが、かやの木が与える安心感がそうさせているようです。

 

「かやの寺」こと済廣禅寺

 

かやの寺がパワースポットといわれる所以は、このかやの木があるから

 

さて、このかやの寺には、かやの木以外にもパワーをいただける場所があります。「不動消災の道」です。本堂には地下へと続く階段があり、その先は一寸先すらまったく見えない真っ暗闇。目を閉じても開けても何も変わらない、漆黒の闇の世界です。
足元に注意し壁に手を添わせながら、行く先が見えず不安な気持ちを抱えたままゆっくり歩を進めます。暗闇を彷徨うこと、体感時間でおよそ3分。人によっては5分にも10分にも感じられることでしょう。ほんのりした灯りとともに、私たちにふりかかる災難を取り除いてくれるという不動明王が現れます。ようやく辿り着いた光に、不動明王の姿を見たとたんその存在感に、思わず安堵の声を漏らしてしまいます。不動消災の道を行き、闇の中を進むことで心身が研ぎ澄まされ、光に感謝する人は災いが消え、癒しを求める人は病が回復するそうです。
これは各地の寺院にも見られ、長野県・善光寺の本堂に安置されたご本尊の下にある、真っ暗な部屋をめぐると極楽浄土が約束されると言われている「お戒壇めぐり」が特に有名です。一度経験すると、日常生活の中では体験できない自己と向き合える貴重な時間を求めて、折に触れてたびたび訪れたくなる特別な空間です。

 

境内にある世界最大のビルマ佛鐘と大理石のお釈迦様

 

ビルマ佛鐘の前で実をつけている「佛手柑(ぶっしゅかん)」は、その名の通り仏様の手のように見えます

 

かやの寺の境内には、もう1つ不思議があります。あちらこちらに点在し、参拝客を惹きつけてやまない変わった姿形の石像です。どれもお爺さんのような風貌で、寝転んでいたり、釣りをしていたり、それぞれ自由気ままに寛いでいますが、ただの好々爺の石像ではありません。「羅漢様」という、お釈迦様の弟子で悟りを開いた方々です。あるがままの姿で、自由に悟後の修行をしているため、くだけた姿なのです。ついつい、境内には何人いらっしゃるのか数を数え、それぞれどんなポーズを決めているのかを確かめたくなってしまいます。

 

本堂の地下に「不動消災の道」があります

 

裏庭でくつろいでいる、らかん様たち

 

このようにかやの寺は子どもから大人まで楽しめる要素満載で、ほかに類を見ないパワースポットですが、海辺の小さな町・伊豆稲取は、温泉地としても名高く、福岡県柳川市の「さげもん」、山形県酒田市の「傘福」と並んで日本三大つるし飾りの一つ、「雛のつるし飾り」でも有名な地域です。江戸時代後期から稲取に伝わるつるし飾りは、高価なお雛様を購入できない家庭の母親や祖母が、かわいい子や孫の成長を願い、せめてお雛様の代わりにと手づくりしたのがはじまりです。
戦後すたれてしまった稲取のみに伝わるこの美しい風習を、近年、地元の婦人会が復刻させました。稲取温泉旅館協同組合が行う春のイベント(2014年3月31日まで「雛のつるし飾りまつり」を開催中)には、一つひとつ丁寧に作られたつるし飾りを見に、大勢の観光客が全国からやって来ます。
昼間は、かやの寺参りとつるし飾り見学を楽しみ、夜は温泉でのんびりくつろぎに、伊豆の小さな町を訪れてみてはいかがでしょうか。

 

門前にいらっしゃる、おでむかえらかん様

 

一般的な段飾りの雛人形と、伊豆稲取が発祥の「つるし飾り」

 

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アクセス

静岡県賀茂郡東伊豆町稲取563-1
TEL 0557-95-2737
伊豆急行線「伊豆稲取駅」より徒歩3分

http://kayanotera.izu-net.com/
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