霊山ふもとの古社で心静かに安全祈願「猿投神社」

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愛知県豊田市と瀬戸市の境に位置する猿投山(さなげやま)。古代より霊山としてあがめられ、人々の信仰を集めてきました。この山のふもとに鎮座しているのが、豊川市の砥鹿(とが)神社、知立市の知立神社と並ぶ“三河国三宮”の一つ、猿投神社です。ふもとの本社をはじめ、東峰に東宮、西峰に西宮が祀られており、三社は総称して猿投三社大明神と呼ばれています。

 

御祭神は、第12代景行天皇の第一皇子である大碓命(おおうすのみこと)。日本武尊(やまとたけるのみこと:熱田神宮の御祭神)の双子の兄でもあります。日本書紀には「大碓命が東征を欲せられなかった為に、美濃国へ封ぜられ、三野国造の祖神の娘二人を妃とせられ、二皇子を生む」などとあり、また、社蔵の縁起書には「景行天皇52年(122)猿投山中にて蛇毒の為に薨ず、御年42歳、即ち山上に斂葬し奉る」と記されています。つまり、大碓命は猿投山で毒ヘビにかまれて亡くなり、山に葬られたということです。明治8年(1875)に行われた教部省(宗教関係を所管する官庁)による実地調査の結果、この記録は確かなものとされ、現在、西宮の後方に墓所があります。

 

今回は、本社のほうを紹介しましょう。

 

比較的交通量の多い道路に面した神門をくぐると、緑におおわれた参道が続き、一転して厳かな空気に包まれます。ひんやりとした心地よさを感じながら100メートルほど歩けば、社殿に到着です。ここで目を奪われるのが、社殿に向かって右脇に奉納されたたくさんの絵馬。左鎌の絵が描かれているものもあれば、左鎌をかたどったユニークなものあります。これは、大碓命が左利きであったことに由来しています。言い伝えによれば、大碓命が左鎌を用いてこの地を開拓したことから、左鎌を奉納して祈願するようになったそうです。現在では交通安全や職場安全といった安全祈願が主で、なかでも会社関係の奉納が多く見られます。

 

神門。前の道がちょうどカーブしているので、徒歩でわたるときは注意しよう

 

社殿へと続く、緑豊かな参道。空気が澄んでいる

 

たくさんの絵馬。やはり会社関係が目立つ

 

絵馬のさらに右脇には、摂末社が並んでいます。社殿側から順に熱田社、塞神社、八柱社、八幡社、大国社、御鍬社。一社一社丁寧に拝む参拝者の姿も見られました。後ろに向きを変えると大きな太鼓殿あるので、そこをぐるりと回り、今度は社殿に向かって左側へ。小さな滝(御手洗乃滝)が見えます。奥には厳島社(弁天社)があるので、そこでも忘れず手を合わせましょう。

 

参道から正面に見えるのが、この拝殿。奥に中門、本殿がある

 

りっぱな中門。ここから奥の本殿に向かって拝む

 

猿投神社は「猿投まつり」でも有名です。毎年10月の第2土曜日に試楽祭、翌日曜日に本楽祭が執り行われます。この猿投まつりのメインとなるのが、愛知県の無形民俗文化財にも指定されている伝統芸能「棒の手」です。

 

棒の手は、戦国時代の足軽が自分の身を守るために武術を身につけたことに始まります。足軽たちは棒と棒で訓練を行い、やがてこの「棒の手合わせ」が、「棒の手」と呼ばれるようになりました。長く続いた戦乱の時代が終わり江戸時代になると、棒の手は武術の技を神社・仏閣で奉納する演技、見せる演技へと変わっていきます。そして、三河国では猿投神社が幕府から奉納を許されたのでした。

 

猿投神社から東へ500メートルほど離れたところには「猿投棒の手ふれあい広場」があります。棒の手会館では、棒の手の起源や流派の特徴、棒や槍、薙刀などの武具を紹介。猿投まつりでの力強い棒の手奉納の様子をスライドで見ることもできます。ぜひそちらへも足を伸ばしてみてください。

 

また、本社横の遊歩道は猿投山山頂へと続いているので、時間があれば本社・東宮・西宮の三社巡りもおすすめです。ただし、散策というよりは“登山”なので、服装(とくに靴)やスケジュールなど相応の準備は必要です。準備が整ったら、ゆっくり山歩きを楽しんで。春には淡紅色の桃の花、夏には青々とした緑、そして秋には真っ赤な紅葉と、季節の美しい景色が目を喜ばせてくれます。そのほか、天然記念物に指定されている球状花崗岩「菊石」、そして御船石、蛙岩、屏風岩、御鞍石などの巨岩もあり、見どころいっぱいです。自然からも、いっぱいパワーをもらいましょう。

 

摂末社。境外にも広沢天神社・建速神社・秋葉社などがある

 

太鼓殿。中に大きな太鼓が見える

 

大小2つある御手洗乃滝。左の赤い鳥居が厳島社

 

棒の手顕彰碑。棒の手は、まつりの2日間にわたり奉納される

 

「猿投棒の手ふれあい広場」にある棒の手の像。迫力満点だ

 

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アクセス

愛知県豊田市猿投町大城5
TEL 0565-45-1917
電車:名鉄豊田線「豊田市駅」から、とよたおいでんバス「藤岡・豊田行き(加納経由)」で猿投神社前バス停下車すぐ
車:猿投グリーンロード・猿投インターチェンジから北へ約5分
  東海環状自動車道・豊田藤岡インターチェンジから北へ約5分
*バスの本数が少ないため、車で行くことをおすすめします。

詳しくは、下記サイト(豊田市観光協会)をご覧ください。
http://www.citytoyota-kankou-jp.org/spot/42/
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