信貴山真言宗総本山「朝護孫子寺(ちょうごそんしじ)」

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朝護孫子寺の境内を歩いていると至る所に虎の張り子が据えてあることに気づくでしょう。
そのゆえは開基である聖徳太子のエピソードに端を発し、つまりは用明2年(587)、聖徳太子が物部守屋を打ち滅ぼすために戦勝祈願をしたところ、天空より毘沙門天が現れ、必勝の加護を与えた、まさにその瞬間が寅の年・寅の日・寅の刻でした。やがて守屋を滅ぼした太子はその毘沙門天を祀る寺院を創建し、名称を「信ずべき貴ぶべき山」の意を持つ「信貴山」としました。

 

赤門。寛政5年再建された赤門が平成21年鮮やかな赤に塗り替えられました

 

赤門前の虎

 

その後、平安の頃には村上天皇に至る歴代皇族の勅願寺となり、延喜2年(902)には醍醐天皇が記した「朝廟安穏・守護国土・子孫長久」の願文が今に残る朝護孫子寺の名の由来となりました。以来、幾多の困難に見舞われながらも名だたる武将や皇族の庇護をうけた朝護孫子寺は山腹に多くの伽藍が建ち並ぶ信貴山真言宗総本山のお寺として、そして同時に一般には「信貴山の毘沙門さん」の愛称として地元の人から親しまれるお寺となっています。

 

剱鎧護法堂。命蓮が勅命で毘沙門天に醍醐天皇の病気平癒の祈願をした後、剱鎧護法の使者が天皇の枕下に現れ霊感を授けられると忽ち病が癒された話が今に残っています

 

本尊は上にも挙げた毘沙門天(多聞天)。増長天、持国天、広目天に並ぶ四天王の一尊に数えられる武神で、日本のみならず中国やインドでも厚い信仰の対象となっています。
また平安時代末期にはエビスさまの本地仏とされ、福の神として中世を通じて人気を高めていく中、室町時代には融通招福の神さまとして七福神の一尊に崇められるようになりました。その姿は七福神の中では唯一甲冑を装備し、左手に宝塔、右手には宝棒を握り、その足下には悪業煩悩の二鬼を踏みつけた造りになっています。その勇ましい造りが古来より商売繁昌、福徳開運、諸願成就にご利益ありと信じられているのは宝塔の内にある「如意宝珠」が無量無辺の功徳に満ち、右手の別称「如意宝殊の棒」の宝棒が無量の財宝を涌出すると信じられているからで、その福徳にあやかるべく全国より特に商売人や経営者の方が多数訪れるようです。

 

本堂。舞台造りの本堂から大和平野が一望できます

 

そして本堂を参った後は多くがその脇に入口のある戒壇巡りへと向かいます。戒壇巡りとは本堂真下にある暗闇の回廊を進み、中で祀られている千手観音や阿弥陀如来など含めた八体の仏像へお詣りするもの。およそ5分程度の戒壇巡りの最後には格子に下がった鉄の錠前があり、これに触れることで、毘沙門天の如意宝珠と同じ功徳がもたらされるスポットも存在していますので是非体感してみてくださいね。

 

戒壇巡り入口

 

ちなみにこの如意宝珠に関連し、根来寺の開基で新義真言宗の開祖でもある覚鑁上人が当山に参篭された折、毘沙門天より真陀摩尼という如意宝珠の玉を授かり、寺の代表的な塔頭の一つである「玉蔵院」に納めた話が今に残っています。どうやら玉蔵院の名はこのエピソードに端を発しているようですね。

 

聖徳太子蔵。日本を代表する北村西望作の馬に乗る聖徳太子像

 

同じく搭頭の一つである「成福院」の融通殿にも如意宝珠(如意融通宝生尊)が祀られています。これは後嵯峨天皇の御念持佛とされ人々の願いを意のままに叶えていただけるご利益があるようですが、現在「融通がつく」の意で用いられる句はまさにこの如意宝珠の働きに端を発しています。金運隆昌を融通、人徳愛嬌を融通、良縁合縁などあらゆる願いを融通してくれる如意宝珠に手を合わせ是非とも思い描く念を実現しましょう。

 

幾つかの念を融通していただいた後は、折角ですから違う念を他のパワースポットで実現させましょう。同じく成福院の境内には他にも「寅大師」と称される彫像とその足下、寄り添うように据えられた「撫で虎」の彫像が目を引きますでしょう。古来より秘蔵のお金のことを「寅の子」と呼んでいますが、その意に添うよう寅の足を撫でれば出ていったお金が戻ってくる効験があるようです。更には頭を撫でるとボケ封じ、牙を撫でると立身出世、そして尻尾を撫でると延命長寿と、境内それほど目立たない存在でありながらもなかなかあなどれない霊験あらたかなスポットであるかなといった印象でした。

 

寅大師

 

その寅を撫でた手で次に同じ成福院境内にある「撫で小槌」を試しましょう。この小槌は大黒さまの「七福融通小槌」と言われ、大黒天の御真言を唱えながら小槌を撫で、その手を頭と胸に当てると心身に降りかかる災いを祓い、服を招いてくれるのだそうです。

 

七福融通小槌

 

各伽藍を詣ででほとんどエネルギーは満たされていましたが、出口の赤門へ向かっている折に3つ目の搭頭「千手院」が目の端をかすめたので入って見ました。中には「護摩の毘沙門さん」として知られる運気上昇の護摩堂、安産、子育てにご利益のある「観音堂」、日本で唯一「銭亀善神」を祀り金運を高めてくれる「銭亀堂」が建っています。いずれの神さまも専門のご利益が違っていますので、失礼にならないようこれまで念じた願いを整理した上、尚も満たされない心の隙間が残っているのなら手を合わせ埋めてみるとよいでしょう。

 

かやの木稲荷。社の後ろにある榧の木は大和朝廷の時代に一粒の榧の実が萌芽して以来1500年の樹齢を誇っています

 

銭亀堂

 

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アクセス

奈良県生駒郡平群町信貴山
TEL 0745-72-2277
JR・近鉄「王寺」駅下車 奈良交通バス「信貴山門」行き、「信貴大橋」下車徒歩5分 他
詳しくは、下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.sigisan.or.jp/
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