否応なしに目に飛び込んでくるほど大きな“たこ”の看板を掲げている、東京・目黒にある「たこ薬師 成就院」に行ってまいりました。
たこ薬師を開山したのは慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)ですが、大師とたこがどうやって結びついて「たこ薬師」になったのか。気になるところですよね。そこには不思議な物語があるのです。
承和5(832)年、大師は唐に渡り同14年に帰国するまでの間、各地に仏法を伝えて回りました。帰国の途中、海が荒れ危険にさらされましたが、大師は小像を海神に捧げて難を逃れ無事に帰ってくることができました。その小像とは、若いときから眼病を患っていた大師が、あらゆる病を治す法薬を与え、医薬の仏さまとして信仰を集めている薬師如来を自ら刻んだ像で、唐に渡る際も肌身離さなかったものです。
その後、大師が諸国を巡り肥前の松浦に行ったとき、海の上で光を放っているものに気が付きました。以前、海神に捧げた薬師像が、なんと、たこに乗って浮かんでいるのです!大師は歓喜して、天安2(858)年に目黒に来たとき、あらゆる病が治癒するようにと、松浦で拝み奉った薬師の姿をそのまま模して霊木に刻み、その小像をその胎内に秘仏として納めました。以来、たこ薬師如来として1000年以上も祀られています。
一見したところ普通の寺院に見える「たこ薬師」
表からもよく見えるたこの看板がドーンとあります
3匹のたこに支えられている薬師如来(中央)
たこに乗った薬師像なんて想像しがたいので、できることなら見てみたいものの、残念ながらご開帳は毎年1月8日の初薬師縁日だけです。たこ薬師という名前だけあって、こちらの絵馬やお守りにはたこが描かれています。「たこ=多幸」とはいえピンク色の軽薄そうなたこでなんだか福を招いてくれるようにはとても思えない…と言ってはバチがあたりそうですが、ユーモアたっぷり、愛嬌のあるたこが少々残念です。
たこの絵馬やお守り以外に、たこ薬師には有名なものがあります。それは、「おなで石」という石で、いぼ、魚の目、眼病などにご利益があるそうです。
『ヲン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ』と唱えながら、石でじかに、又はその部分に布か紙をあてて、毎日一時間以上、熱心に何回かに分けてなでるのです。その時間が長ければ長いほど、回数が多いほど、早くご利益があるそうです。ただし、おなで石を、人と貸し借りすることは御法度!
禁止事項はほかにもあります。これがもっとも重要なことで、お願い中はたこを食べないこと!
なでている間は食べてはいけないのか、願いが叶うまでたこは断食しないといけないのか定かではありませんが、毎日たこを食べないと気が済まないほどたこが大好き!という人は、そうそうはいないでしょうからあまり問題はないでしょう。
このおなで石、おねしょ、脱腸、ぢ、神経痛、ぜんそく、水虫、ひふ病、消化不良、そのほか奇病、難病いっさいにご利益があるというのですから驚きです。これらの病もなでて治すのか、なでるには患部が微妙な場所もありますが…。
薬師如来が安置されている本堂
愛嬌たっぷりのたこが描かれている絵馬
たこの目がなんともチャーミングです
お守りのたこは、なぜか宇宙人チック
見た目はなんてことない石が秘めている未知のパワー。どんなものなのか実際に手に取ってみたくなり、美肌茶房編集部の私も一ついただいてきました。
黒くて平たい3cm四方のおなで石は、手のひらに収まるちょうどよい大きさ。つるつるしていてなめらかで、ずっと触っていたくなるような心地よさがあります。
ギュッと握りしめると手のひらを通して体に伝わる、内面に働きかけるようなやさしいパワーを感じます。握っていた手を開くと石は温かくなっていて、自分だけの石のように感じて、さらに愛着が増します。
主にはイボとりのご利益があるとして知られているようですが、それ以外の魅力もおなで石には潜んでいます。おなで石の1500円という価格を自分自身に納得させようと、勝手に付加価値を探しているわけではありませんからっ! 決して…。
なんだか不思議と落ち着く「おなで石」、ぜひ入手して体感してみてくださいね。
これが「おなで石」、触っているとツヤツヤになってきます
ちょうど手のひらサイズだから、なでやすい?
東京都目黒区下目黒3-11-11
TEL 03-3712-8942
東急目黒線「不動前駅」より徒歩7分
http://www.jyoujyuin.jp/