雲上の地で大自然のパワーをフル充電!美ヶ原高原の王ヶ頭

パワースポットとしてこれまで神社を多く紹介してきました。今回は自然の景勝地を取り上げます。“八百万の神”と古くから言われるように、私たち日本人は山や木など自然にも神聖を感じる民族です。そんな日本人のDNAを大いに刺激する場所を訪ねてきました。

 

王ヶ頭の頂はホテルのすぐ近くあります。標高2,000mなのに一般人でも来て冬山をしばし楽しめるなんて贅の極みです、バチがあたりそう ※

 

美ヶ原は八ヶ岳中信高原国定公園にある高原で、日本百名山の一つとして知られています。
山頂付近に広がる高原は広いところで南北8km、東西4kmで、高原台地としての広さは日本一です。今回紹介する王ヶ頭(おうがとう)はその美ヶ原高原の山頂で標高は2,034mです。美ヶ原では春から秋にかけて、観光客やハイカー達はバスや自家用車を利用して高原のドライブを楽しみ、頂上に近い美術館やホテルなどを訪ねます。大草原の牧場には牛たちが放牧されてのんびり草を食べています。そして、レンゲツツジやニッコウキスゲ、マツムシ草など約200種の高山植物が咲き誇ります。
しかし、冬期は降雪で道路閉鎖になるためアクセスは出来ません。一般人に許された方法は山頂にあるホテルに宿泊することだけです。宿泊者向けにホテルの送迎バスがあり、今回はそれに乗って冬の別世界、王ヶ頭を訪ねました。

 

特急あずさで新宿からおよそ3時間。新幹線なら東京から神戸くらいまで行けるかな?などと思いましたが、「日常と違う時空の世界へワープするには、このくらいのプロローグはあった方がいい!」。そんな超ポジティブに考えつつ松本駅前からホテルのマイクロバスに乗車。こんな時期ですから当然ガラガラ・・・ではなくナント満席!ヤマが好きな皆さんとご一緒に一路雪の王ヶ頭を目指しました。

 

松本駅から10分くらい走ってバスはヤマのふもとへ。そこでバスを止めたドライバーさんはサクサクと滑り止めチェーンを3分くらいで装着、マッハの速さ!に一同どよめきました。そこからは急傾斜の林道ドライブが始まりました。国定公園内なので開発や観光には厳しい制約があります。冬期、この細い林道に一般車は侵入できず、頂上にある電波塔を管理するテレビ局の人か、王ヶ頭ホテルの関係者だけが特別に許可されて乗り入れているそうです。だから、かなり長い林道の除雪は自分たちで毎日行うのです!この日も林道の途中でショベルローダーを同ホテルの会長さんが軽快に操り道路の雪を除けていました。

 

林道なのでクネクネした狭い道で、正直、夏場に自分の車で運転するのも大変そうな険しさ。でもドライバーさんはヤマや雪、動物のことなど車内マイクで楽しく説明しながらスイスイと高度を稼いでいきました。
ようやく着いた山頂の王ヶ頭ホテル付近は吹雪で景色はほとんど見えず。でも、ホテルの玄関外までスタッフの方が迎えに出てきて、温かく歓迎してくださいました。この60分あまりの道中、正直なところ車酔いする人にはあまりお勧めできません。しかし、この時間は下界から来た人たちが、頂上にあるもう一つの世界、アナザーワールドへ入っていくために心のスイッチを切り替えるにはちょうど良い“舞台装置”になっています。

 

一見したところ普通の寺院に見える「たこ薬師」

 

到着後、しばらくすると雪上車体験ツアーが始まりました。宿泊者向け無料イベントで、南極大陸の昭和基地でも活躍した同じ型の、かなり年季の入った雪上車に乗り、美しの塔までの雪原を往復する約30分のツアーです。エンジン音はうるさく、ガタガタと乗り心地は良くないのですが、キャタピラで雪を噛んでかき分け、逞しく走るのは圧巻!初めての体験でとても楽しかったです。他に天気が良ければスノーシュー(かんじき)をつけて、付近の雪原を歩く冬らしいアクティビティもあり人気だそうです。

 

まるで南極の昭和基地?雪上車体験ツアーにおじさんもおばさんも大喜びでした

 

雪上車で向かった美しの塔は高原のシンボル、雪に覆われていました。もともとは登山者の霧鐘塔として建てられ、霧で視界の悪い日には鐘を鳴らしたそうです ※

 

さて、このホテルですが雲上の一軒宿なのに館内は部屋も食堂もどこも清潔。さらに料理は美味しく、お風呂もサイコー。ふもとのホテルや旅館にも負けないクオリティなのです。どうして山頂の辺鄙なところで(例えば飲料水。数キロ先の湧水を引いていて、冬期もスタッフが毎日、清掃と管理で現場へ行くのだそうです)、素晴らしいサービスを良心的な価格で提供できるのかとても疑問でした。
それはホテルの歴史に理由があるようです。

 

翌朝、部屋の窓から撮りました。雲が下界に溢れていて、背の高いヤマだけが頭を出しています。まさに雲上の宿です

 

この王ヶ頭ホテルの前身は山小屋で昭和28年、相次ぐ遭難をなくすべく建てられました。その後、増築し名前もホテルと変えて今に至ります。「わざわざ来てくれたのだから、できるだけのサービスをしたい」という経営者の想いが、若いスタッフにもしっかり受け継がれ、館内にはホスピタリティーが満ち満ちています。
私は仕事やプライベートで各地のホテル・旅館に泊まることが多いのですが、こんな気持ちになることはなかなかありません。市街地より条件的に厳しいヤマの方が温かい心のこもったサービスが提供できるなんて、実に不思議で感動してしまいます。帰り際に次回の予約をするお客が結構いるそうで、リピーターが多いというのも頷けます。

 

さてさて、パワースポット企画なのでホテルもいいのですが、自然の素晴らしさを紹介しましょう。ホテルのパンフレットには「標高2,000m、360°の大パノラマはまさに“アルプスの展望台”」とあり、南方には富士山や八ヶ岳連峰の赤岳、南アルプス連峰の北岳や甲斐駒ヶ岳、中央アルプスの木曽駒ヶ岳など天気が良いと見えるそうです。西から北の方角には御嶽山や乗鞍岳、北アルプスの槍ヶ岳や穂高連峰、そして白馬連山まで。東は浅間山や草津白根山など。もし、運よく晴れていればこれらの山々を展望できるそうです。
翌朝は吹雪も止んで、時折、朝日が雲間から差していました。今回は雲が多く、見ることができたのは槍ヶ岳や白馬連山など一部だけでした。それも雲が流れて日が差す一瞬です。それでも十分にヤマから神々しいパワーをたくさんいただきました。なかなか簡単に拝めないからこそ、見えた時にはとても有難いと思うのですね。あとはじっと目を閉じて雲や霧で見えないヤマを心に思い描き“エアーアルプス”を満喫しました。短い滞在でしたが、心と体をヤマにつなぎ“アース”することで、しっかりリセット出来ました。リフレッシュしたい人にはお勧めのパワスポです。

 

天気が良いとこんな朝日も拝めるそうです ※

 

こちらは朝日に染まる白馬の峰々 ※

 

運が良いとサンピラー(太陽柱)が発生することもあるそうです ※

 

この美ヶ原の比類なき自然の豊かさを、私の文字や写真ではとても伝えきれませんが、山岳詩人の尾崎喜八がこの地を訪ねた時に詠んで、美しの塔に刻まれた詩を最後にご紹介します。

 

「美ヶ原熔岩台地(尾崎喜八)」より

 

登りついて不意にひらけた眼前の風景に
しばし世界の天井が抜けたかと思う。
やがて一歩を踏み込んで岩にまたがりながら、
この高さにおけるこの広がりの把握になおもくるしむ。
無制限な、おおどかな、荒っぽくて、新鮮な、
この風景の情緒はただ身にしみるように本原的で、
尋常の尺度にはまるで桁が外れている。 

 

アクセス

美ヶ原高原・王ヶ頭ホテル
長野県松本市入山辺美ヶ原高原王ヶ頭
℡ 0263-31-2751
http://www.ougatou.jp/

 

印の写真は王ヶ頭ホテルよりお借りしたものです。