さいたま市に、狛犬ならぬ狛ウサギがいる神社があります。「調」と書いて「つき」と読む調神社で、地元では「つきのみやさま」と呼ばれ親しまれています。「月」と同じ読みなので、江戸時代中期以降に人々の間に根付いていた、月が上るのを待ち心願をかけた月待信仰(つきまちしんこう)と結びつきました。そのため、調神社には月神さまの使いとされるウサギが、狛ウサギのほかにも境内のあちこちに登場しています。
鳥居がないのも特徴の「調神社」
狛犬ではなく狛ウサギが鎮座しています
第9代天皇の開化天皇時代に創建され、約2100年もの歴史を有する調神社は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)、豊宇気姫命(とようけひめのみこと)、素戔嗚尊(すさのおのみこと)の三柱を祀っています。由緒ある神社なのに、不思議なことに調神社には鳥居がありません。それは第10代・崇神天皇時代の出来事に起因しています。
伊勢神宮の斎主・倭姫命(やまとひめのみこと)がこの地を選んだことから、神宮に献する貢物(調物)を納める倉が建てられました。そして鳥居は貢物の運搬の妨げになるとの理由から取り払われ、現在でも調神社には鳥居がないままなのです。
手水舎にもウサギ! 横から見るとかわいらしくもあり、リアルです
こちらが本殿
鳥居がないとやはり物足りない気がしつつ、狛ウサギを仰ぎ見たあと境内に進むと、今度は手水舎でインパクトのあるウサギが待ち構えています。正面から見ると、なんともマヌケ顔の愛嬌のあるウサギ。しょっぱなから笑わされてしまいます。そのほか随所にウサギの姿が見られますが、調神社でもっとも長生きのウサギがいるのが、本殿の奥にある旧本殿です。
市の指定有形文化財(建造物)にもなっている旧本殿は、江戸時代中期の享保18(1733)年に建立されました。一間社流造りで銅板葺きの屋根も一見の価値がありますが、それよりも注目したいのがウサギの彫刻です。江戸中期の建造物にウサギが彫られていたことが、調神社と月待信仰の関係をなによりも物語っているからです。
現代の私たちでも、月の存在は神秘的に思えるのですから、江戸の闇夜を照らしてくれた月は、昔の人々にとっては畏怖するとともに、その輝きが無限のパワーを授けてくれる偉大なものに感じられたことでしょう。ウサギはかわいらしくて見ていると自然に笑顔になりますが、ましてや月神さまの使いともなればさらに愛着がわいて、当時、調神社を訪れた人々は境内で笑顔が絶えなかったかもしれませんね。
奥にある旧本殿へ続く道は厳かな雰囲気
旧本殿にもウサギの彫刻が施されています
調(つき)なだけに“ツキ”を授けてくれるご利益があるという調神社。参拝した後、お守りよりも立体的な姿の方が良い気がして、月神さまの使いのウサギの置物をいただいて帰りました。ツキを求める人は、ウサギに会いに出掛けてみてくださいね。境内にはいったい何羽のウサギがいるのか、数えてみるのも楽しいかもしれませんよ。
池にはニヒルな顔で水を噴出しているウサギも
ウサギに託して“ツキ”を持ち帰りました
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アクセス
調神社
埼玉県さいたま市浦和区岸町3-17-25
JR東北本線「浦和駅」より徒歩10分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください
http://www.stib.jp/info/data/tsuki.html
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