信州・安曇野、北アルプスの雪解け水の恵み「大王わさび農場」

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風薫る5月、爽やかな初夏の日差しのもと、長野県安曇野市にある大王わさび農場を訪ねました。風光明媚な自然が広がる水の里で、マイナスイオンをたっぷりいただきました。

 

松本市の少し北に位置する安曇野市、日本の原風景のようなのどかな時間が流れる街です。西の方を見上げれば、晴れた日には標高3000m前後の北アルプスの峰々が一望できます。

 

これがワサビ田、黒い布で遮光しています

 

晴れた日には北アルプスの山並みが拝めます

 

安曇野は、いくつもの扇の形の扇状地が重なって並ぶ、全国でも珍しい複合扇状地です。山から下ってきた川の水は、扇状地を流れるうちに一旦地下に浸透します。それから扇状地が終わる端の部分(扇端という)にある安曇野で低い場所に集まって、湧き出てくるのです。

 

地下を流れてきた湧水は外気温に左右されることなく、1年中水温は13度前後。東京ドーム約11個分という広大なわさび田からは、毎日12万トンもの水が湧き出しています。この独特の地形と湧水の自然を活かしてワサビ田が開拓されました。

 

奥まで広がるワサビ田、植えつけから収穫まで2年かかるそう

 

畝を流れる水は透明で、人の歩く速さくらいで流れるよう水路が傾斜しています

 

そんな安曇野のワサビ田ですが、明治初期から大正時代中期まで、このあたりはナシの栽培地でした。ところが湧き水によるナシの病害が多く、水はけを良くするために作った水路で、ワサビ栽培が始まったと言われています。

 

明治20年代にはワサビの粕漬けを、犀川の船で新潟方面へ運び販売を始めました。また、明治35年に篠ノ井線が開通、東京に出荷すると高値で売れたことから、ナシ畑はワサビ田へと変わっていきました。そして大正12年の関東大震災と台風で、主要産地だった伊豆や静岡のワサビが打撃を受け、信州産のワサビが脚光を浴びることになったのです。

 

大王わさび農場は約15haの広さを持つ個人のワサビ田です。創業者の深沢勇一さんは、土地も資金もほとんどない状態からワサビ田の開田に着手しました。大正4年から工事に着手、農閑期に土地の農民1日平均200人を雇い、20年の歳月をかけて地面を掘り下げ、土砂を周りに積み上げて、最初のワサビ田を完成させました。

 

ゴム長靴も重機もない時代。人々は厳寒期でも藁靴や草履姿で水に入り、鍬やザルのような簡単な道具を使い土砂を運びました。そうした先人の努力のおかげで、今では美味しいワサビがたくさん生産され、年間100万人を超える人が全国から集まる観光地となっています。

 

地域の伝統である八面大王を祀った大王神社、農場の中央部にあります

 

ワサビの学名は、「ワサビア・ジャポニカ」といい日本原産の植物です。寿司や刺身などに欠かせない香辛料として、和食の広がりと一緒に世界へ存在を広めています。解毒や抗酸化、血流改善効果、また美肌などの若返り効果もあると言われています。

 

栽培方法は2つで、渓流や湧水で育てる水ワサビ(谷ワサビ、沢ワサビ)と、畑で育てる畑ワサビ(陸ワサビ)がある。平成22年度のデータで都道府県別で比較すると、水ワサビの生産量は長野県が1位(2位は静岡県)。そして長野県全体では、その9割は安曇野産です。この地がワサビの好む冷涼な気候と、1年を通して13度前後という清らかな水に恵まれているからなのです。

 

駐車場に車を止めて、まずは水車小屋へ。蓼川(たでがわ)のほとりに3基の水車がゆっくりと回っています。この水辺は、1989年黒澤映画「夢」の舞台として選ばれ、ロケが行われ、当時のままの風景を今も残しています。

 

水車の向こうでボート遊びをする人がいました

 

巨大なワサビのオブジェ?

 

そこから少し歩くとサッカーグランド1面はありそうな、大きなワサビ田が目に飛び込んできました。畑で見るような畝が幾本も田の底に描かれていて、その周りを水がさらさらと流れていきます。黒い布が全体に被せられていますが、これは日光によるワサビの葉の変色を防ぐためです。さらに奥へと進むと、ワサビ田が次々と姿を現しますから驚きです。

 

田園風景の中、きれいな湧水が流れて、青々とした木々の間を風が吹き抜けてゆきます。そこにいるだけで清々しくて、何とも幸せな気持ちになりました。まさに英気を養うには相応しい場所ですね。安曇野の豊かな自然を活かした大王わさび農場は、多くの人々に見てほしい、体験してほしいという思いから、入場料も駐車場も無料になっています。

 

新鮮な生ワサビも販売しています

 

人気があるワサビのソフトクリーム、さっぱりした甘さで美味でした

 

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アクセス

長野県安曇野市穂高1692
TEL 0263-82-2118
JR大糸線穂高駅下車、タクシーで約10分
詳しくは、下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.daiowasabi.co.jp/
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