家具と絵画のコラボレーション「村内美術館」

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東京・八王子にある、家具インテリア店(株)村内ファニチャーアクセスの会長が館長を務める村内美術館を今回はご紹介します。1982年の開館以来、19世紀・フランスのバルビゾン派の作品を展示してきた村内美術館は、バルビゾン派のファンの間では有名な美術館でしたが、2013年7月に家具と絵画をコラボレーションさせた美術館としてリニューアルオープンしました。
村内道昌館長は、家具と絵画のコラボレーション美術館に至った経緯を次のように話してくれました。「家具と絵画は別なものとして捉えがちですが、絵画はインテリアの総仕上げです。家具業界で恩返しをしたいという気持ちがあり、家具インテリア店として家具と絵画の両方を考えると、このような他にはない美術館になりました」

 

村内ファニチャーアクセス内にある「村内美術館」

 

家具でも絵画でもありませんが、エントランスには『BMWイセッタ300』も展示されています

 

村内ファニチャーアクセス内に併設された美術館ですが、館内はとても広く、家具と絵画を7章にわたって紹介しています。
第1章と第2章では、デザインチェアを展示しています。マッキントッシュやヤコブセン、コルビュジェ、柳宗理といった名だたるデザイナー作品が並ぶ中、ひときわ目を引くのが『柏戸イス』です。剣持 勇(けんもちいさむ)が横綱・柏戸に寄贈したイスで、杉の根元の抜根を積み重ねた、木材の年輪を引き立てて見せる乳造り(うづくり)で仕立て上げられています。
第3章「花鳥風月~日本の雅・西洋の華麗」では、婚礼家具3点セット『雪月花(せつげっか)』に注目です。会津の最高級の桐を使用し、蒔絵まで施された桐タンスは、人間国宝の松岡英一さんの手によるものです。家具でありながら、美術品としても価値ある逸品です。
リニューアルした現在もバルビゾン派の絵画はいくつか展示されていて、コンスタン・トロワイヨンの『羊の放牧』の前には、『シープチェア』というタイトルがついたチェアを置いてコラボレーションさせています。

 

デザインチェアを展示している第2章「椅子の森」では、絵画も「森」を描いたものを中心に展示されています

 

勇が横綱・柏戸に寄贈した『柏戸イス』

 

昭和51(1976)年から絵画の収集をはじめ、現在も気に入るものがあると購入しているという村内館長ですが、バルビゾン派以外の特に日本人画家の作品は、どれも個性的なものばかりです。
たとえば、“ブラジルのピカソ”とも言われブラジルで活動していた日本人画家のマナブ間部。抽象的な絵なのに、鮮やかな色づかいで印象に残る作品が、ビビッドカラーのソファとともに展示されています
そのほかに、和紙にアクリル絵具で描く智内兄助(ちないきょうすけ)の代表作『暁斎交感(きょうさいこうかん) 百鬼 姑獲鳥(ひゃっき うぶめ)、孕女(うぶめ)』も、産んだ子どもを鬼婆に連れ去られるおどろおどろしい雰囲気でインパクトのある作品です。

 

今後これだけのものがつくられることはないという逸品、婚礼家具3点セット『雪月花』

 

コンスタン・トロワイヨンの『羊の放牧』と『シープチェア』をコラボ展示

 

「怖い絵の後には、清々しい作品を見てもらおう」との館長の考えで、智内兄助の後には田渕隆三のエベレストの雄大な作品が登場します。
このように、館内の展示には館長のアイデアがふんだんに盛り込まれています。それが特に表れているのが、第6章「ビュッフェ ベニスシリーズ」の展示室です。ベネチアをイメージした部屋なのでカンツォーネが流れ、壁面にはベルナール・ビュッフェの絵画、そして部屋の中央には、村内ファニチャーアクセスのリペア職人が館長の命を受けてつくった縮尺約7分の1のゴンドラが展示されています。有名な絵画と自社の社員作品をコラボレーションさせてしまうのも、会長のセンスによるものです。

 

智内兄助の代表作も見ることができます

 

座り心地の良いソファで楽しみたい、田渕隆三によるエベレストの雄大な作品

 

そのユーモアのセンスが学芸員さんたちにも伝染している(?!)と思わせるのが、バルビゾン派の展示室にいる羊たちです。それぞれにバルビゾン派の画家たちの名札が付けられ、よく見るとまつ毛まで付けられていたりします。学芸員さんたちがそんなことをしてしまう楽しい環境の村内美術館。常設展ではありますが、まだまだ所蔵品があるそうなので、展示作品だけでなく展示手法も楽しみに時々出掛けたくなる美術館です。
家具インテリア店の美術館なので、最高級の家具にも触れてもらい、座り心地を確かめてもらいたいとの思いから、第4章以降に置かれているソファ(ドマーニ)には実際に座ることができます。お出掛けの際には、そちらもぜひ体験してみてくださいね。

 

ビュッフェ作品よりもリペア職人の器用さに目が行ってしまう、縮尺約7分の1でつくられたゴンドラ

 

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インフォメーション

村内美術館は、家具インテリア店(株)村内ファニチャーアクセスの村内道昌会長が、長年にわたり収集してきたコレクションを展示している美術館です。1982年に開館し主にバルビゾン派の絵画を展示してきましたが、2013年7月に、日本初の「家具と絵画のコラボレーション」美術館としてリニューアルオープンしました。

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●アクセス

東京都八王子市左入町787
TEL 042-691-6301
JR、京王線「八王子駅」より、(株)村内ファニチャーアクセスの無料シャトルバスで約15分

詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.murauchi.net/museum/

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