名古屋市の大一美術館では2014年4月20日(日)まで、「エミール・ガレを中心に アール・ヌーヴォー&アール・デコ ガラス名品展」を開催しています。日用品にすぎなかったガラス工芸を芸術の域にまで高め、アール・ヌーヴォーを牽引したエミール・ガレ、宝飾デザイナーからガラス作家へと華麗に転身、アール・デコ様式を確立したルネ・ラリックなど、著名なガラス作家の作品から選りすぐりの逸品を展示しています。
アール・ヌーヴォーとは「新しい芸術」の意。19世紀から20世紀初頭にかけ、フランスを中心に欧州で展開された芸術運動です。草花や鳥、虫などをモチーフとしたデザインや流れるような曲線が特徴で、絵画、工芸、建築と多岐にわたる分野に影響を与えました。
エミール・ガレ「ジャンヌ・ダルク文ランプ」(1903年)。ジャンヌは、愛国心の強さの表れとか
ドーム兄弟「カタツムリ葡萄文花器」(1900年頃)
ガラス工芸の分野で革命を引き起こしたのが、エミール・ガレです。トンボやセミなどの昆虫が大胆にデザインされていたり、色ガラスを組み合わせてさまざまな花が浮き彫りにされていたりと、多様な技法が駆使された作品には目が釘付け。また、フランスの国民的英雄ジャンヌ・ダルクを題材とした作品は黒いガラスが用いられており、他の作品とは異なる落ち着いた魅力を放っています。琥珀色に浮かび上がる、ジャンヌの凛々しい姿は必見です。
アール・ヌーヴォーを代表する作家で、ガレのライバルとも言われているのがドーム兄弟(オーギュスト・ドーム、アントナン・ドーム)です。2人は日用的なガラス食器などを作っていましたが、ガレに刺激を受け芸術作品を手掛けるようになりました。ガレに比べると比較的色がきれいで明るく、風景や四季をモチーフにしている作品が多いのが特徴。そのため、女性に好まれる傾向があるそうです。
ミューラー兄弟「ダチュラ文化器」(1904年)
ルネ・ラリック「オラン」(1927年)
1910年代になり、アール・ヌーヴォーに替わってアール・デコが台頭しました。アール・デコには「装飾美術」の意があり、シンプルで直線的なデザインが特徴です。この時期に活躍した作家が、ルネ・ラリック。宝飾デザイナーとして名声を得ながら、香水瓶の制作にかかわるようになり、最終的にガラス作家へと転身しました。花瓶や食器などの日用品から、カーマスコット、噴水、列車の内装に至るまで、幅広く作品を制作しています。華麗なデザイン、彼の代表色とされる「乳白色」に注目してください。
1階展示室。さりげなく天井にもガレのランプが飾られているので、気をつけて見てみよう
アルバート・ペリー「球状ランプ」(1997年)。アメリカ建築協会から、協会名誉賞を受賞した作品
この企画展が催されている1階展示室は、あえて照明が抑えられ、じっくりと作品と向き合えるような演出がなされています。一方、2階展示室は明るく開放的なスペースに、デイル・チフーリと現代ガラス作家の作品を常設展示しています。チフーリは、現代ガラスアートの第一人者として知られるアメリカ人作家です。1992年には、本国で初めて人間国宝に選定されました。繊細さと大胆さを併せ持ったフォルムと色彩が魅力。大型作品が多いのも特徴で、なかでも目を引くのが「壁ガラス」という作品です。壁一面に色とりどりのガラスの花が飾られているのですが、そこに付けられた照明が一定時間ごとにゆっくり変化し、さまざまな美しい表情を見せてくれます。
デイル・チフーリ「壁ガラス」。出窓にも飾られており、外からの光に美しくきらめく
インパクト大!チフーリの「シャンデリア」。約600個のガラスで構成され、重さは約500キロ
1階企画展では、アール・ヌーヴォーからアール・デコへの作品の変化。そして、1階と2階では、近代と現代の作品の違い。このような作品の変化や違いも楽しむことができるでしょう。
休憩スペースには、アール・ヌーヴォーを代表するグラフィック・デザイナー、ミュシャの作品が
大一美術館にはギャラリーもあり、個展やグループ展など作品発表の場として利用できる
「ガラスアートに、身近なものとして興味を持っていただけたら」と話すのは、学芸員の市原理江子さん。「作家や作品の知識がなくても大丈夫。ただ『きれいだな』と感じて楽しむところから始めてみてはいかがでしょうか」。東海三県では珍しいガラス工芸美術館。貴重な作品の数々を、ぜひご自分の目で見て堪能してください。
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インフォメーション
大一美術館は、株式会社大一商会のメセナ活動の一環として1997年5月に開館。「特色ある美術館」をめざし、世界各国のガラス工芸品を蒐集・展示しています。主に、19世紀末にフランスで活躍したエミール・ガレのアール・ヌーヴォー作品と、現代ガラスアートの第一人者でアメリカの人間国宝第一号に認定されたデイル・チフーリのパワフルな作品を常設展示。近代と現代の両巨匠の作品を通して、それぞれの文化を味わうことができます。このほか、半年に一度の入れ替えで行われる企画展や、各国の新鋭アーティストの作品も発表・展示なども。
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●アクセス
名古屋市中村区鴨付町1-22
TEL 052-413-6777
地下鉄東山線「中村公園」駅 徒歩25分
地下鉄東山線「中村公園」駅 市バス稲西車庫行きにて「鴨付町」下車 徒歩1分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.daiichi-museum.co.jp/
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