日本の近代美術を代表する画家の作品を展示~名古屋市・文化のみち 堀美術館

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静岡県の浜名湖畔にある「浜名湖ガーデンパーク」に行ってきました。温暖な気候の浜松市は、ガーベラの生産量が日本一。その他にもバラや洋ランなど674品種の生産が行われている「花の都」なのです。

 

浜名湖を一望するパノラマ360°の「展望台」

 

静岡県民の誇り!? 「富士山」花檀

 

「浜名湖ガーデンパーク」は2004年に開催された花博の会場跡地です。ちょうど十年後になる今春は、「浜名湖花博2014~花と緑の祭典」が開催される予定です。現在、着々と準備が進められています。そのため、立ち入り禁止区域があったのは残念でしたが、シーズンオフの園内で、イベント前の裏側の世界を見ることができました。

 

園内には土の匂いが漂っていました。新しい苗を植えるために大量のチョコレート色の土が用意されていたからです。花壇で作業をしていたのは、地域のボランティアや学校、企業の人々でした。和気あいあいとした声が飛び交う憩の場。「浜名湖ガーデンパーク」の最大の魅力は、市民参加型の都市公園だということです。

 

名古屋城から徳川園(尾張徳川家の邸宅跡にある日本庭園)に至るエリアには、名古屋の近代化の歩みを伝える歴史的建造物が多く残され、一帯が「文化のみち」と呼ばれています。堀美術館は、その一角にたたずむ小さな美術館。しかし、小さいながらも貴重な日本の名画を多数所蔵・展示、さらに積極的に絵画の蒐集も毎年行っており、専門家や美術ファンから高い評価を得ています。

 

堀美術館は、ダイテックグループ創業者・堀誠氏が長年にわたって蒐集した絵画を一般公開するためにつくられた、公益財団法人「堀科学芸術振興財団」の付属美術館です。日本の絵画に絞られているのが特徴で、パリに留学して本場の絵画を学んだ藤田嗣治や梅原龍三郎ら“エコール・ド・パリ”の“熱き芸術家たち”のほか、三岸節子、杉山寧、加山又造、須田剋太など著名作家の作品がずらり。来館者からは「すごい作品がたくさんあって驚いた」の声も多く聞かれるそうです。

 

1階。椅子やベンチが置いてあるので、座ってしばし作品と向かい合ってみることもできます

 

三岸節子のコーナー。31歳の若さで亡くなった夫・三岸好太郎の作品「ピエロ」も一緒に展示

 

建物は2階建てで、1階には洋画が展示されています。洋画における注目ポイントは、やはり藤田嗣治でしょう。「エコール・ド・パリの寵児」とも言われた画家で、繊細な描画と白色をきかせた画風が独特の魅力を生み出しています。「占いの老女」「エバァ」「バラを持つ美女達」など、これだけの作品を揃えた美術館はあまりないのだとか。また、女流画家の先駆者として活躍した三岸節子の「さいたさいた桜がさいた」も素敵です。この作品は、90歳を過ぎてから死の直前まで描き続けたもの(享年95歳)。桜の花がこちらに迫ってくるようで圧倒されます。「カーニュの我が窓より」「花(3)」など、どの作品も力強く、彼女の気迫や生命力といったものを感じることができるでしょう。

 

藤田嗣治「占いの老女」 101.8×76.0cm キャンバス・油彩 額装(1949年)

 

梅原龍三郎「姉妹併座図」 91.0×54.0cm 間似合紙・岩彩、油彩 額装(1942年)

 

2階では、主に日本画を展示。抜群の描写力で新境地を開き続けた杉山寧、斬新な発想と洗練された美意識で新風を吹き込んだ加山又造、戦後の日本画壇をリードした2人の作品に注目です。日本画の「美」を追求した精緻な描写、色使いに思わず見入ってしまうに違いありません。ほかにも、洋画ですが、力強い奔放な筆致が特徴的な須田剋太の作品も多く見られます。司馬遼太郎の「街道をゆく」の挿絵を制作した画家と言えば、絵が思い浮かぶ人も多いでしょうか。書の世界にも深く傾倒し、書画や抽象画、具象画と幅広い作品を遺しています。

 

三岸節子「さいたさいた桜がさいた」 110.9×110.9cm キャンバス・油彩 額装(1998年)

 

杉山寧 69.1×92.2cm 麻布・彩色

 

素晴らしい作品ばかりだからといって、構える必要はありません。「お客様がふらっと立ち寄られて、気に入った作品が1枚でも見つかったときに、『今度は友達と来ようかな』と思えるような心に残る美術館でありたい」というのが館長の思い。実際に1人で訪れ、1時間ほどゆったり過ごしていく人も珍しくないそうです。スタッフに作品の見方をうかがうと「理屈ではなく、自分の感性で作品にふれてみては。好みとかそうでないとか、自分なりに受けとめればいいと思います」とのこと。その際、「プロフィールなど、画家や作品の背景を知っておくと、鑑賞の手助けになりますよ」とアドバイスをいただきました。

 

2階の入口から見たところ。右手、近藤浩一路の水墨画「百駿図」(1930年)が目に飛び込んでくる

 

杉山寧、加山又造のコーナー。写真一番手前、加山又造作「雪・櫻島」の鮮やかなブルーが印象的

 

堀美術館は作品の蒐集・展示だけでなく、財団として若手アーティストへの支援活動も展開しています。まずは、2年に1度開催している「Dアートビエンナーレ」。国内で創作活動に従事している若手アーティストに作品発表の場を提供するもので、入選作品から選ばれた最優秀賞受賞者には500万円を授与、海外派遣も行っています。2015年には「第4回Dアートビエンナーレ」を開催する予定です。さらに、愛知県立芸術大学、名古屋芸術大学、名古屋造形大学に在学する学生を対象とした「三芸大学生選抜 H/ASCA展」も2013年から毎年開催。各大学から推薦で選抜された15作品を展示し、やはり優秀な作品には賞金の授与と海外派遣を行っています。このような支援活動は、全国でも類を見ないもの。強いアートへの思い、地域文化発展への願いの現れと言えるでしょう。

 

1階から階段を上ったところに展示してある、児島善三郎の油彩画「青空」(1932年)が迫力満点

 

2014年(平成26年)以降、開館日が土曜日・日曜日・祝日(12:30〜17:00)となるので要注意

 

堀美術館周辺には、輸出陶磁器商の井元為三郎によって建てられた「橦木館」や、日本初の女優と謳われた川上貞奴と電力王・福沢桃介が暮らした「双葉館」など観光スポットがいっぱい。おしゃれなカフェもあり、一日中楽しめます。明治や大正のロマンに浸りながら、散策してみませんか。

 

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インフォメーション

文化のみち「堀美術館」は、ダイテックグループとダイテック創業者・堀誠氏のコレクションを広く一般に公開するため2006年6月、公益財団法人「堀科学芸術振興財団」の付属美術館としてオープンしました。藤田嗣治、梅原龍三郎、三岸節子、杉山寧といった、日本の近代美術を代表する画家の作品を常設展示しています。また、若手アーティストに作品発表の場を設け、賞金の授与や海外派遣を通しての創作活動支援にも力を入れています。

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●アクセス

名古屋市東区主税町4-4-2
TEL 052-979-5717 または 052-856-5520(事務所)
地下鉄桜通線「高岳」駅下車 徒歩10分

詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.horimuseum.jp/

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