「さいたま市大宮盆栽美術館」は、その名前から“公立の施設”“盆栽”という固い印象を感じるものの、「盆美(ぼんび)」の愛称で親しまれ、盆栽の素人も玄人も楽しめる、明るくオープンな雰囲気の美術館です。来館者は盆栽が好きな年配の方が大半を占めるものの、若いカップル、一人で来られる女性も多いそうです。また、外国人観光客も多いので、4カ国語(日・英・韓・中)対応の音声ガイドの貸し出しも行っています。
盆栽の“聖地”にある「さいたま市大宮盆栽美術館」
ウィーン!と入口の自動ドアが開くと、目の前には「季節の一鉢」が展示されています
盆栽は、“BONSAI”とそのまま言っても海外で通じるほど、日本が世界に誇れる文化で、さいたま市の伝統産業にも指定されています。しかも、今回ご紹介する盆美がある大宮は、知る人ぞ知る盆栽の“聖地”。盆美の周辺には盆栽園が約10軒もあり、その一帯は「大宮盆栽村」と呼ばれる、世界的にも有名な地域です。
大宮盆栽村の歴史は古く、盆栽村が誕生したきっかけは、大正12(1923)年に起きた関東大震災にあります。江戸時代から明治・大正時代にかけて、現在の東京・文京区千駄木にある団子坂には当時、多くの職人がいて、盆栽業を行っていました。しかし、関東大震災をきっかけに盆栽業者だけの村をつくるために広い土地を求めて大宮に移り、誕生したのが大宮盆栽村です。
かがんで小人になったつもりで下から見上げると、まるで松林にいるかのような気分になる『蝦夷松(えぞまつ)寄せ植え』
コレクションギャラリー右手の壁面にはグラフィックパネルがあり、盆栽の観賞ポイントが示されています
大宮盆栽村の中心拠点として、盆栽文化を発信している盆美を訪れ、盆栽の楽しみ方を教えてもらいました。
1 まずは盆栽の正面に立ちます。
2 次にグーッと腰をおろして、盆栽を下から見上げます。そうすると、立って見ていたときは小さかった盆栽が、だんだん大木に見えてきます。
3 肝心なのはここから。想像力を総動員し、自分が小人になった気分で、その大木の下に潜り込みましょう。
たとえば、『蝦夷松(えぞまつ)寄せ植え』は大小いくつもの蝦夷松が一鉢の中に植えられているので、小人になったつもりで見ると、まるで千島や国後島の蝦夷松林の中に入り込んだような気分になること間違いありません。盆栽にこんなメルヘンチックな鑑賞方法があったなんて、驚きですよね。
室内の床の間などに、盆栽や書画や工芸品を飾り付ける日本の伝統文化「座敷飾り」
五葉松 銘『千代の松』。大きすぎて動かすのが大変なので、年中同じ場所にあり、陽の当たりを調節するために鉢の下は回転するようになっています
館内のコレクションギャラリーでは、盆栽の展示とともに、初心者の方にも楽しんでもらえるように盆栽の見方や種類などをグラフィックパネルで展示しています。たとえば、根の張り方を見る「根張り」や、樹木を支える幹の「立ち上がり」といった、鑑賞ポイントと盆栽用語を教えてくれます。そのほかにも、盆栽の樹種と形態、美しい姿に育てるための盆栽の技も紹介されています。自然の植物でありながら、人の手がかけられることで美しく成長し、美術品になる盆栽。屋内には座敷飾りコーナーを含め常時9点ほどの盆栽があり、庭園には季節に合わせた見頃の盆栽が40点から50点展示されています。それだけの数を見て回ると、どんな樹種や形態の盆栽が自分の好みなのかがしだいにわかってきます。
ゆっくり散策を楽しみたい盆栽庭園
週末は、盆栽庭園を見渡せる2階テラスに「盆美カフェ」がオープンします
盆美では週に一度、盆栽の展示替えを行っています。盆栽は美術品でありながら、日々成長し続けている生きた植物のため、メンテナンスが必要だからです。一般的な美術館とは異なり、盆栽美術館だからこそ行われる頻繁な展示替えで、たびたび訪れても飽きることなく、四季折々で姿を変える盆栽を楽しめます。盆栽の前で小人になったり、話しかけたりして、飛び込んでみると意外と親しみやすい盆栽の世界。盆美を訪れて、体験してみてはいかがでしょうか。
手ぬぐいや煎餅など、ここでしか買えない“盆美グッズ”が人気のミュージアムショップ
大宮盆栽協同組合の即売所もあり、数百円~数万円まである盆栽を購入することができます
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インフォメーション
さいたま市大宮盆栽美術館は、盆栽文化を発信するため平成22(2010)年3月に開館した、世界初・公立の盆栽美術館です。盆栽を中心に、盆器、水石、絵画資料、歴史資料などの紹介をしており、人々に広く盆栽のすばらしさに触れてもらう、さいたま市の新たな観光拠点をめざしています。
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●アクセス
埼玉県さいたま市北区土呂町2-24-3
TEL 048-780-2091
JR宇都宮線「土呂駅」より徒歩5分、東武野田線「大宮公園駅」より徒歩10分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.bonsai-art-museum.jp/
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