大人も子どもも、木や環境問題について楽しく学べる「木材・合板博物館」

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机、イス、棚、扉など、私たちの身の回りには大小さまざまな木材製品があふれていますが、それらの製品が無垢(むく)の木材か合板かどうか、気にしたことはありますか? 大きな机や扉などを無垢の木材でつくろうとすると、とても大きな木が必要になり、製造に限界があります。そこで、活躍するのが「合板(ごうはん)」です。合板は、木の良さに加工のしやすさが加わった、先人の知恵から生まれたものです。
今回は東京・新木場へ、木材と合板について深く知ることができる「木材・合板博物館」に行ってまいりました。

 

駅から少し離れていますが、目立つ高層ビルにあってわかりやすい「木材・合板博物館」

 

耐水合板で製作されている「マーメード号」のレプリカ

 

博物館があるビルの1階には、ドーン!とヨットが展示されています。1962年に日本人ではじめて単独太平洋横断に成功した、堀江謙一さんが乗っていた小型ヨット「マーメード号」のレプリカです。耐水合板で製作されています。1962年5月12日に西宮港から出港したマーメード号は、94日間かけてサンフランシスコに到着し、単独横断を成功させました。今から約50年も前に、小型とはいえ全長5.8mものヨットが合板でつくられていたことに驚きます。

 

木材・合板博物館を訪れるなら、ぜひ見学していただきたいのが、週に2度(水・土曜日の14時から)行われる博物館の目玉、ベニヤレースの実演です。ベニヤレースとは、丸太を大根のカツラむきのようにむいて、「単板(たんぱん)」をつくる機械のことです。単板のことを英語でベニヤといいます。
世界初の外周駆動方式のベニヤレースは、国産メーカーの名南製作所によって開発されました(博物館にある稼働模型も同社の製作・寄贈)。刃物の技術が優れている日本だからこそできた機械だそうです。この機械の登場によって、スギ、ヒノキの間伐材や細い木材、曲がった木材などからも、無駄なく単板を製造できるようになりました。
ベニヤレースから小気味よく単板が出てくる様子は、いくら見ていても飽きません。次々と流れ出てくる均質の単板に、日本の技術力の高さを感じさせられます。

 

ベニヤレースの実演は必見! 単板が出てくるのと同時に木のよい香りもしてきます

 

柳宗理氏デザイン「バタフライスツール」は、合板だからこそできたやわらかな曲線が特徴

 

こうして丸太を薄くむいてできた単板を乾燥させ、接着剤で繊維の方向(木目)をタテとヨコに交互に積み重ね、奇数枚を貼り合わせたものが「合板」です。単板の木目をタテとヨコの交互に重ねることで、板のヨコ方向にも強くなり、伸び縮みがほとんどなくなり、割れにくくなるのです。丸太をむいて板をとるので、広い面積がとれるのが合板の特長で最大の利点です。合板をつくる際に単板と単板を貼り合わせる接着剤は、開発当初は水に弱いものでしたが、年々進化し、堅牢な合板をつくれるようになりました。合板の製造に欠かせない接着剤の進化が、合板の発展につながっています。

 

近代の技術かと思ったら意外や意外、合板の歴史は古く、正倉院に合わせ板のものが残されているそうです。本格的に日本でベニヤレースが開発され、合板がつくられるようになったのは明治40年(1907)年、名古屋の浅野吉次郎さんがつくった「木材丸剥機(まるむきき)」という、現在のベニヤレースに匹敵するものからだそうです。

 

木材と合板を知るには、必然的に森林や地球環境についても考えることになります。博物館では、いろいろな樹種の丸太を展示していて、それらを比べて年輪の形成や木材の割れ方、日本をはじめ世界の森林や樹木、人工林の育成などについて学ぶことができます。

 

木のこと、環境問題についても学ぶことができます

 

「ウッドアース」上の緑の布が、地球上の森林面積

 

では、地球にはいったいどれだけの緑があると思いますか? それは館内の「ウッドアース」を見れば一目瞭然です。木でつくられた地球儀に緑色の布を置いて、おおよその森林面積を知ることができます。地球の表面積の約1/3が陸地で、そのうち約1/3が森林だそうです。
国土が狭い日本の森林面積は世界21位ですが、人工林の面積は世界第5位の森林国で、国土に占める森林面積の比率は、フィンランドの73.9%に次いで第2位の68.2%を誇ります。国土の広いアメリカ、オーストラリア、中国などをさしおいて?! と不思議に思うかもしれませんが、それらの国には広大な砂漠があるため、国土に占める森林面積という点では劣るのです。

 

プラスチック、木、アルミの3つの空間に入って、どんな気分になるかを体験するという、ユニークなコーナーもあります

 

ものづくりコーナーでは、おもちゃの製作が毎回人気

 

木材と地球環境に関しては、詳しくパネル展示されています。しかし、解説を読み進めていくうちに、見ごたえがありすぎて少々疲れてしまいます…。館内にいるスタッフの方に声を掛けたり、できれば訪れる前に博物館に連絡して、案内をお願いすることをおすすめします。楽しくお話ししながら、わかりやすく解説してもらえますよ。

 

エコバッグなどの博物館オリジナル商品もあるミュージアムショップ

 

ものづくりコーナーもあり、博物館では夏休みを中心に木工教室も開催しています。木や合板を利用したおもちゃづくりは毎回好評を博しているそうです。
親子、カップル、友だち、1人で行っても楽しく学べる木材・合板博物館へ、ぜひ行ってみてくださいね。

 

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インフォメーション

木材・合板博物館は、森林、樹木、私たちの身近な暮らしのなかで使用されている木材・合板が果たす役割を紹介している博物館です。日本に合板が誕生し、100年の節目の2007年10月に開館しました。

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●アクセス

東京都江東区新木場1-7-22 新木場タワー3F・4F
TEL 03-3521-6600
JR京葉線・東京りんかい高速鉄道・地下鉄有楽町線「新木場駅」より徒歩7分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.woodmuseum.jp

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