急須や茶碗選びのコツ ~お茶の基本 入門編~

Q:急須や茶碗に陶磁器が多いのはなぜ?
A:陶磁器は、ほかの素材と比べて蓄熱性に優れているからです。

 

 

陶磁器

陶磁器とひとくくりに言われることが多いですが、陶器と磁器のことです。これは国や研究者によって分類に違いがありますが、単純に分けると、作るときの焼成温度の違いで区分できます。陶器は粘土を原料としていて、1200℃前後の温度で焼成した、非透光性の焼き物のことを指します。素地のガラス化が十分ではないので、粒子が粗く吸水性があるのが特徴です。
磁器は陶石が主原料で、1300℃前後またはそれ以上の高温で焼成した、白色の焼き物をいいます。特徴は、硬質で吸水性がなく、素地のガラス化が進んでいるので、陶器と比べて透光性が高いことです。

 

 

陶器と磁器の見分け方

購入する際、陶器と磁器は土見(つちみ)という釉薬が施されていない部分で見分けることができます。高級磁器を除くほとんどの陶磁器は、畳付という高台下部にだけ素地が露出しています。裏返して土見を観察したり軽く擦ると、陶器と磁器の粗密の差がわかります。
茶碗売り場でするにはあまり好ましくありませんが、自宅で現在使用しているものが陶器と磁器のどちらなのかを知りたい場合は、もっと簡単な方法があります。指で陶磁器を弾くと、素地の粗密の差で音が全く異なり、澄んだ金属音がする方が磁器、曇った鈍い音がするのが陶器です。

 

 

陶器と磁器の茶碗に淹れたお茶の違い

陶器と磁器には、原料や焼成温度という作り方の違い方のほかに、それぞれの茶碗にお茶を注いだ際に大きな違いが出てきます。
陶器はほとんどの場合、釉薬を施してガラスのコーティングを行い素地の吸水を防止していますが、そうすることで素地中の微細孔が空気層として機能して保温効果が高まり、お茶が冷めにくくなります。また、お茶を注ぐと微細孔に渋みなどの成分が入ることで角が取れ、まろやかな味わいになります。

一方、磁器はガラス化が進んでいるので素地が緻密で美しくなめらかですが、空気層はほとんどないため、陶器よりも保温力は劣ります。陶器のような吸水性はないので、香りが立ち、シャープなお茶を味わえます。
茶道では、陶器と磁器の保温力の違いをうまく生かし、夏茶碗と冬茶碗で使い分ける工夫がされています。一般的には、玉露や煎茶に用いられ、おもてなし用によく使われるのは磁器の茶碗です。これらは低めの温度で淹れるお茶なので、薄手の茶碗でも手に持ったときに熱くないという実用的な意味合いもありますが、磁器の茶碗は内側が白いものが多いので、お茶の水色が映えるという効果もあるからです。
一方、熱湯で淹れる番茶やほうじ茶には、厚手で熱さが手に響かない陶器が向いています。磁器にはないぽってりとした厚みと、やさしさを感じさせる手触りが、陶器の魅力でもあります。

 

陶器と磁器の茶碗に淹れたお茶の違い

玉露や上級煎茶は少なめのお湯で淹れるお茶のため、一般的に小さめの急須が使われます。玉露は100ml、上級煎茶には250~300ml程度の大きさの急須が適しています。ふだん飲むことが多い並煎茶用は600mlが目安になります。
普通サイズの急須のほかにもう一つあると便利なのが、それよりももう一回り大きな急須です。玄米茶、ほうじ茶などはたっぷりの湯量を使った方が美味しく淹れられ、また熱湯を注ぐので、容量800mlほどの厚手の陶器の急須や取っ手付きの土瓶が向いています。

 

陶器と磁器の茶碗に淹れたお茶の違い

中国や台湾で行われている珍しい急須の取り扱い方があります。
中国式の急須、茶壺(チャフー)など陶器の茶器は、使い込むほど独特の色や艶、深みが出てきます。ひとつの茶壺を大切に使い、ゆっくり時間をかけて養っていくことを「養壺(ヤンフー)」と言います。
やり方は簡単ですが、いくつものお茶の香りが茶壺に移らないように、1茶壺に1種類のお茶を決めることが大切です。
お茶を淹れ終わったら洗剤は使わず熱湯だけですすぎ、自然乾燥させます。やわらかい布でやさしく磨いていくと、だんだん深い艶が出てきます。これを日々繰り返すだけで茶壺は育ち、お湯を注いだだけでほんのりと香り立つようになり、お茶は味と香りに深みが増し、まろやかになります。

 

【参考資料・web】

新訂 緑茶の事典(髙野實・谷本陽蔵・富田勲・中川致之・岩浅潔・寺本益英・山田新市 執筆、日本茶業中央会 監修/柴田書店 発行)
おいしい日本茶の事典(成美堂出版編集部編/成美堂出版 発行)