納豆

 

大豆を原料とする日本独特の発酵食品といえば味噌と醤油が代表格ですが、これに次ぐのが納豆です。日本には大きく2つのタイプの納豆があり、その一つは寺納豆と呼ばれる「塩辛納豆」、もう一つは現代の私たちが良く知る、ご飯にかけて食べるあの「糸引き納豆」です。

 

塩辛く糸を引かない納豆は糸引き納豆より古い歴史があり、その原形は大陸から伝えられました。奈良時代に宮内省で作っていた大豆の塩漬け「くき」がそれで、京都の大徳寺や天竜寺など寺院で作られることが多かったことから寺納豆と呼ばれました。

 

その製法は煮た大豆に麹菌を繁殖させて大豆麹を作り、これを塩水に浸してしばらく放置し、酵母と乳酸菌で発酵させた後、これを乾燥させたものです。この黒くて栄養豊富な自然食は、デンプン主食型の日本人の食卓には栄養バランスをとるのに適したものでした。また、味がとても濃いので、二、三粒でも十分にご飯が食べられ質素な食生活には重宝されたのでした。

 

糸引き納豆は寺納豆とは全く異なる製法で、日本人の発明品です。大豆を煮て、これを稲藁に詰めて保温すると藁の中に生息していた納豆菌が大豆上で繁殖し、あの特有のネバネバした納豆が出来上がります。今から1000年も前に生まれた驚くべき食の知恵と言えます。今日では培養した納豆菌を大豆に添加して大規模に生産されています。

 

煮ただけの納豆に比べて糸引き納豆にはビタミンB2が5~10倍も増加し、ほかのビタミン類も大幅に増えるなど、豊富なタンパク質とともに理想的な栄養バランスになるのです。さらに煮た大豆より納豆の方が消化が速やかで、粗食な日本人には格好の滋養食品として愛されてきました。

 

主食の米を粒の形のまま食べる日本人が、大豆をすりつぶさず粒のまま食べる納豆を副食として食べる。納豆は粒食民族である日本人が発明した食文化の傑作なのです。質素で早食いの日本人が粒飯に納豆をのせてよく噛まずに飲み込んでしまっても、糸引き納豆にはタンパク質やデンプンを分解する消化系酵素が豊富に含まれているので、問題もありません。

 

【参考資料・web】

「食と日本人の知恵(著:小泉武夫)」岩波現代文庫