東京23区内で、自然の地形としてはいちばん高い山が、港区にある愛宕(あたご)山です。標高26メートルの愛宕山の山頂には神社があり、そちらが今回ご紹介するパワースポットの「愛宕神社」です。徳川家康の命で“防火の神様”として祀られました。江戸大火災、関東大震災、帝都大空襲などによる焼失は免れませんでしたが、昭和33年に再建され、現在に至っています。
大鳥居の向こうに見えるのが「出世の石段」
愛宕神社に行くと、大鳥居の隣に「出世の石段」と書かれた看板がドーン!と立っていて、大鳥居の向こうにもの凄い石段が見えます。そうです。愛宕神社はこの石段が有名なのです。別名「男坂」とも言う、86段の急な階段です。
一段の高さがある上に勾配も急なので、前を見る余裕はまったくなく、ただ足元だけを見て上るのがやっとです。途中に踊り場もないので、振り向いて上ってきた景色をちょっと見てみる、なんてこともできません。へたに振り向いたら、バランスを崩してとんでもないことになりそうです。
愛宕神社は、神谷町駅のほか虎の門、御成門も徒歩圏のオフィス街に位置するので、ワイシャツ姿の若い男性が勢いよく駆け上っていく姿を見かけました。お昼休みの時間だったので、もしかしたら毎日来てトレーニングでもしているのかもしれません。それくらい慣れた足取りと勢いでした。
この石段がなぜ「出世の石段」と言われているかというと、3代将軍・徳川家光の時代にまで遡ります。
梅が満開の時期に、愛宕神社の下を通りがかった家光公。山上に梅を見つけて、馬で梅を取ってくるように家臣に命じました。しかし、歩いて上るのもやっとの急な石段を馬で上る勇気のある家臣は誰一人としていませんでした。家光公が怒りを爆発させるかと思われたその時、ある家臣が馬で石段を上り始めました。曲垣平九郎(まがきへいくろう)という家臣でした。平九郎は石段を見事に上り、山上の梅を手折り、さらにまた馬で石段を下りてきて家光公に梅を献上したのです。平九郎は、家光公から“日本一の馬術の名人”と讃えられました。
この故事にちなんで、愛宕神社の正面の坂(男坂)は「出世の石段」と呼ばれるようになったのです。
境内には鯉が泳いでいる池があり、鯉のエサも売っています
出世階段を登った右手には、山であることを示す「三角点」がちゃんとあります
実際に訪れて石段を見たら、馬で上ったなんてぜったい作り話だ!と思わずにはいられないほど、とてつもなく急な石段ですが、平九郎の後にも挑戦して成功した人が数人いるそうです。
馬ではありませんが、9月に催される例大祭では御神輿が出世の石段を行き来するというのですから、そちらも見ものです。
愛宕神社には、「男坂」のほかにもう一つ坂があります。男坂の右側にも石段があり、そちらは「女坂」と言われています。男坂より少しだけ勾配は緩いですが、誰一人として上っている人はいませんでした。やはり皆さん、せっかく上るなら男坂の方を!と思うのでしょう。
上から見た男坂。どれほど急な石段かわかるでしょうか
上から見た女坂。途中に踊り場もあるので、男坂よりもまだ楽そう
丹塗りの門の奥が社殿。主祭神「火産霊命(ほむすびのみこと)」を祀っています
出世の石段を上って乱れた呼吸を整えたら、手水舎で手と口を清めて、主祭神「火産霊命(ほむすびのみこと)」を祀っている社殿へ向かいましょう。
参拝したら、社殿の少し手前にある「招き石」も忘れずに。招き石は、なでると福が身につくそうです。どれだけの人になでられてきたのか、なでられすぎてピカピカしています。
なでられすぎて、部分的に黒光りしている「招き石」
平九郎が家光公に献上した梅の木は、今も変わらず拝殿前の左手にあります
愛宕神社のホームページによると、火に関するもの、防火、防災、印刷・コンピュータ関係、商売繁盛、恋愛、結婚、縁結びにご利益があるそうですが、なんといっても出世の石段です。体験しにぜひ出掛けてみてくださいね。上りきったときの達成感と爽快感は格別です。その際は運動靴で行かれることを強くおすすめします。ヒールのある靴はもってのほかですよ!
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アクセス
東京都港区愛宕1-5-3
TEL 03-3431-0327
地下鉄日比谷線「神谷町駅」より徒歩5分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.atago-jinja.com/
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