名古屋大佛に見守られながら、やすらぎの時を~名古屋市・桃巌寺

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織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の“三英傑”が活躍した名古屋およびその周辺地域には、彼らゆかりの城や寺社が点在しています。ここ「泉龍山 桃巌寺」も、その一つ。天文18年(1549)、織田信長の弟である信行が父・信秀の菩提を弔うために建立したもので、寺号は信秀の法名「桃巌道見大禅定門」から付けられました。恵心僧都作の聖観世音菩薩を本尊として奉安、辯財天(べんざいてん)画像を守護神として奉祭したのがはじまりです。

 

「大悲の水を似って洗除し、清からしむ」の文字が刻まれた清浄門。寺の正門はここになる

 

不老門。俗に竜宮門とも呼ばれている。「この門をくぐると忘れ得ぬ思い出となる」とか。

 

織田信秀の菩提寺というほかにも、みどころはたくさんあります。まずは、何と言っても「名古屋大佛」でしょう。台座5メートル、座高10メートルの堂々たる釈迦像で、全体に派手めな緑色をしているのが特徴です。昭和62年(1987)に建てられた当時はよくある青銅色でしたが、平成18年(2006)に行われた改修工事の際、現在の色に生まれ変わりました。目・耳・唇などに金箔が施されており、その柔和な表情は見る者を包み込むようです。お参りについて説明している看板には「佛様と無言の対話をしてほしい」と書かれていますが、まさにその通り、時を忘れてしばし静かに過ごしてみてはいかがでしょうか。佛様から温かいパワーをいただけるかもしれません。

 

大佛正面。説法をしたときの身振り(手の形)を模した説法印の釈迦で、青銅でつくられている

 

大佛背面。台座の壁面には菩提樹、法輪・五比丘・鹿・孔雀・10頭のインド象などに囲まれている

 

そして本堂。入口で、巨大な木魚が目に飛び込んできます。直径が1メートルもある、日本一大きな木魚です。「片手を触れるのみでも過去の悪業が消滅する」とのことなので、ぜひ触れておきましょう。そのほか、堂内にずらりと飾られている写真に目を通すこともお忘れなく。見覚えのある顔を見つけることができるはずです。先にも書いたように、桃巌寺の守護神は辯財天。信仰すれば「辯舌さわやかになり、知識が豊かになり、芸道上達し、開運・事業繁栄・家庭円満す。又、良縁成就・子宝にめぐまれる」ことから、数多くの芸能人が訪れているのです。古くは木暮実千代、高橋幸治、吉沢京子……漫才師や落語家も。往年の歌番組「ザ・ベストテン」出演時(同寺からの中継)の田原俊彦の写真もありますよ。

 

大佛の手のひら試作品。手のひらの上に、人が1~2人ほど座れそう。撮影スポットにおすすめだ

 

本尊聖観音と十六羅漢が安置されている本堂。前には護法灯籠があり、昼夜火が灯されている

 

さて、ここまで拝観料は無料ですが、1,000円を払うと「ねむり辯天尊像」を見ることができます。本堂から渡り廊下を通って辯才殿へ。信仰すれば安眠できるという、横たわる辯天様の姿はとてもきれいでセクシーでした。撮影したかったものの、お寺の方の話によれば「撮影してもいいけれど、撮影した人たちの多くに、その後よくないことが起きている」とか。これは止めておいたほうが良さそうですね。普段はガラスの扉越しに見るだけですが、毎年1月1・2・3・4・5日と5月7・8日(8時〜18時)には扉が開かれるので、この時期に近くで拝見するのもいいでしょう。

 

本堂内にある木魚。樹齢100余年のクスノキでできており、直径1メートルと日本一の大きさ

 

本堂内の絵天井。青龍社同人20名が人形文楽や花鳥を描き、辯才天に上達を祈念して奉納したもの

 

ねむり辯天を見て中に入ると、辯財天が厳かに祀られています。その両側にあるガラス扉の奥には、なんと数えきれないほどのリンガ(男根)が。実は桃巌寺、ここだけでなく境内のあちらこちらにリンガがあることでも有名なのです。織田楳仙住職がインドでヒンズーの神々に強く影響を受けたそうで、宗派を越え、エキゾチックな建築の意匠や歓喜佛なども随所に取り入れられています。

 

相辯才殿。辯才天と眷属十五童子が祀られている。両側のガラス戸の奥には、リンガがいっぱい!

 

屋上にあるパゴタ塔。ラマ佛も忘れずに参詣しよう。ついでに屋上からの名古屋の街並も楽しんで

 

さらに、外に出て辯才殿の屋上へ行ってみましょう。真ん中に、これまた変わった形の大きな「パゴタ塔」が建っています。塔内には白竜霊神とラマ佛が祀ってあるので、こちらもぜひ参詣してください。インパクトのある姿にやや衝撃を受けるかもしれませんが、左右(男女)のラマ佛を同時にさすると霊験があると言われています。

 

織田家廟所。旧末森城外にあったものを、信秀没後400年の昭和26年(1951)に現在地へ移した

 

桃巌寺の法燈を守護する赤石(守護石)。本堂に向かって右手に2つ、どっしり置かれている

 

桃巌寺周辺は、名古屋大学が近いこともあり比較的若者の多い街です。しかし、賑やかな街中にありながら境内は4,000坪余、別世界のような静寂が広がっています。家族や知人と訪れるのもいいですが、1人で心穏やかに過ごすのもおすすめです。時間の許す限りのんびり見て回れば、意外な発見もあるでしょう。最後に1つ。拝観料1,000円を払うと「開運守」がいただけます。中は、お札と小さな金色のリンガ。財運や家庭運などにご利益があるようなので、財布の中などに入れて持ち歩いて願いを叶えてください。

 

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アクセス

名古屋市千種区四谷通2-16
TEL 052-781-1427
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