天と人と地を結ぶもの、それは「言の葉(ことのは)」です。昔の人は葉っぱに自らの名前を書いて祈りを託しました。「言の葉」には魂が宿ると信じられてきたからです。
静岡県掛川市にある事任八幡宮には、およそ1800年前から己等乃麻知媛(ことのまちひめのみこと)が祀られています。親しみを込めて「ことのままの神様」と呼ばれ、多くの人々の生活や人生において道しるべとなってきたようです。
現代では“願い事を叶えてくださる神様”として知られていますが、その名の「麻」は「真(まこと)」を意味します。つまり「真(まこと)を知り、事(こと)にてお導きくださる」のが本来であり、神の言葉を人間に伝えるという大切なお働きをなさってきた神様なのです。
社務所で拝見した地図によると、人々が賑わっている境内は里宮(さとみや)といって、山に登らなくてもお参りができるように遷された神殿なのだとわかりました。旧国道一号線が通るまでは、本宮(ほんぐう)と里宮はひとつづきの山だったそうです。
本宮と里宮をつなぐ目印となるのは朱色の橋。里宮内から渡ることもできますし、旧国道一号線からこの橋を使えば、どちらの拝殿にも行くことができるように配慮されています。
本宮と里宮の架け橋となっている「朱色の歩道橋」
山道の階段をひたすら271段昇ると、本宮のお社が迎えてくださいます。お社の周りに敷かれた白い石が、視界へと飛び込んできました。余計なものが何もない静寂の空間に佇むと、「最初の石は神様のため、二つめの石はみんなのため、三つめの石は自分のために、と心を込めて磨きます」と説かれたお言葉がすぅっと心へと入ってきたような気がします。
案内に従って道を行くと「本宮入口」に着きます
本宮のお社の足元には、手のひらくらいの大きさの光の玉ができていました。そこへ偶然昇っていらした神社の方とお話することができました。いつも見られるわけではない現象だそうです。
「こどだまの杜」という立て札が見えたら、本宮まであと少し!
山道の石段を271段登ると「本宮山の拝殿」に着きます
創立年代は未詳とされるこの八幡宮。清少納言の『枕草子』にも登場するほど永い時を刻んできました。まことしやかに言い伝えられる神話に思いを馳せつつ、地図に示された見所を巡ることをおすすめいたします。ゆっくりとした時の流れを感じていると、真夏でも涼しい境内にはほっと一息をつきに訪れる地元の人々の姿も多くありました。
朱色の歩道橋を降り、石橋を渡ると里宮「一の鳥居」
里宮境内を覆うように枝葉を広げる「大楠」は樹齢500~600年
里宮の方には、千年もの時を生きて杜を見守りつづける「ご神木杉」、2本の杉の根が仲良くくっついている「夫婦杉(めおとすぎ)」、種類のちがう2本の木の根っこが自然と重なりあって大きな石を抱く「むすびの神様」など見所も多いです。悠久の年月を重ねた木々が放つ力強さは、とても言葉にはなりません。
里宮境内で寄り添う「夫婦杉」
ことのままの杜を長い間見守られている「ご神木杉」
里宮の上方で隆々と根をはる「むすびの神」
禊場(みそぎば)となっている境内の裏手を流れる逆川(さかがわ)にも足をのばしてみました。天と地を行き来される龍神様のお社が、水流を守っておられました。
事任八幡宮の水流を守る「逆川(さかがわ)」は禊場です
さいごに。ことのままの神様を訪ねるときは、“神様に捧げる言葉”を大切にしましょう。自らの「言の葉」でつながることを大切にして、もしもお願い事をしてかなったときは改めて自らの「言の葉」でお礼の手紙をしたためてください。
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アクセス
静岡県掛川市八坂642番地
TEL 0537-27-1690
JR掛川駅北口よりバスで約20分
詳しくは、下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.geocities.jp/kotonomachihime/
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