リモージュ磁器の歴史と美しさを堪能〜瀬戸市美術館「華麗なリモージュ磁器の世界」展

瀬戸市美術館外観。入口前、文化ホールや文化交流館ともつながる屋根が特徴的

 

愛知県瀬戸市の瀬戸市美術館で、3月15日(日)まで「華麗なリモージュ磁器の世界 —アドリアン・デュブーシェ国立美術館収蔵品によるリモージュ磁器250年の歩みー」展が開催されています。

 

リモージュ市は、ヨーロッパを代表する磁器の街として名高いフランス・リムーザン地方の中心都市。瀬戸市とは2003年11月に姉妹都市提携をしており、一昨年で10周年を迎えました。本展では、歴史あるリモージュ磁器184点を時代順にたどりながら、その美しさや高い技術力の素晴らしさを4章構成で紹介しています。

 

1F常設展示室。ふだんは陶芸を中心に、館所蔵の作品を展示している

 

1F企画展示室(1)。”リモージュの白”が一堂に。同じ白でも表情はさまざま

 

リモージュにあるアドリアン・デュブーシェ国立美術館は、フランス随一の陶磁美術館です。同館の名になっているのが、リモージュ出身の実業家アドリアン・デュブーシェ。彼は熱心な美術愛好家でもあり、定期的にパリに出向いては、収集家や評論家など多くの著名な文化人と交流を結びました。また、自身も陶磁器を収集し、同館館長(当時は県立)に就任した翌年の1866年には400点、亡くなるまでに約4,000点もの個人コレクションを寄贈。現在では彼の寄贈品を中心に、約1万6,000点にのぼる作品を収蔵する国立美術館となっています。

 

まずは「リモージュ磁器の始まり」。リモージュ市における磁器生産は、1768年にリモージュ近郊のサン=ティリエ=ラ=ペルシュという町で、磁器の原料となるカオリン(磁器土)が発見されたことに始まります。カオリンはドイツ・マイセンの原料にも使われており「白い金」とも呼ばれていました。この発見により、当時リムーザン地方の長官であったチェルゴーが、その利益に着目して磁器の製造を奨励。1771年には「チェルゴー長官の紋章文メダイヨン」が、初めて作品として製作されました。この貴重な最初の作品も展示されていますので、ぜひじっくりご覧ください。

 

《チェルゴー長官の紋章文メダイヨン》 1771年 グルレ/マシエ/フルネラ製陶所 ※

 

その後は王家の庇護のもと、積極的に磁器の開発がなされ、技術も向上していきます。初期のころには種類が少なく、デザインもシンプルだったものが、王家が使うことを想定して花柄が施され、芸術性の高い作品も作られるようになりました。しかし、1780年代から90年代にかけて起きたフランス革命の混乱によって、いったん廃れてしまいます。

 

「産業の夜明け」では、リモージュ磁器の復活を象徴する作品を紹介。19世紀初頭になると、これまでのような個人の好みに合わせたものでなく、世界的な流れを感じながら、時代に応じたものが作られるようになります。絵柄や彫刻など前の時代を引き継いだ作品がある一方で、例えば「『旅行百科事典』模様の5枚の組皿」は、各国の民族・住民たちが描かれた非常に大衆向けのものです。また、写実的なものも多く「鳥形のリングホルダー」「蛇の皿」「時計と二つの花瓶」など、形も色合いも独特で目を引きます。

 

《美の女神に支えられた籠》1830年頃 クサク=ボヌヴァル製陶所 ※

 

水差し/受け皿 1872年以前 ジビュ&ルドン製陶所 ※

 

そして「リモージュ磁器の黄金期」。19世紀後半になって、「リモージュの白」と称される透明感のある白色の素地が完成します。この「真っ白」を作るのには非常に高い技術力が必要で、日本の有田焼でもできるものの、希少な特級品となるそうです。「リモージュの白」を前面に出しPRした万国博覧会では高い評価を得、世界的な産業として発展していったのでした。

 

《米粒》セット:テーブルセンター 1878年 プイヤ製陶所 ※

 

2F企画展示室(2)。独自の形、凝ったデザインのものが多くみられる

 

また「《米粒》セット:テーブルセンター」をみても分かるように、いくつもの小さな穴や透かし彫りなど細かい細工がされ、さらに歪みがないことにも驚かされます。磁器は造形物が難しいのですが、それだけ素地が強いということでしょう。ほかにも、同じ白色でも釉薬がかけられ艶のあるものと、マットなものとの違いにも注目してみてください。

 

最後は「アール・ヌーヴォーそしてデザイン」。20世紀初頭になると、世界的な流れとして曲線を生かしたアール・ヌーヴォーが取り入れられるようになります。1920〜30年代には、今度は幾何学的な線とパターン化された模様を特徴とするアール・デコ。「《モンゴリア》セット:シュガーポット」には、それが顕著に現れています。このように実用面だけでなく、最先端のデザインとフォルムを追求しながら発展をし続け、現在に至っています。

 

全体を通して、タイトル通り「華麗」で美しく、ため息が出るほどです。これほどのリモージュ磁器を一度にみられる機会はなかなかありません。ぜひとも足を運んでください。展示期間中、関連事業としてワークショップやギャラリートークなども行われます。

 

《花文紡錘形花瓶》 1900年頃 ジェラール/デュフレセー/アボット製陶所 ※

 

《モンゴリア》セット:シュガーポット 1925年 ルグラン製陶所 ※

 

※©RMN-Grand Palais

 

インフォメーション

愛知県瀬戸市は、一千余年の歴史と伝統をもつ「やきもの」のまちです。その文化の発信拠点として、昭和57年10月に瀬戸市文化センターが完成しました。瀬戸市美術館・文化ホール・文化交流館の3棟からなっており、同美術館は陶磁器をはじめ、絵画や彫刻など美術作品全般の展示を行っています。オープン以来、地元作家を中心とするさまざまな企画展を開催しながら、瀬戸市の文化情報を発信し続けているのが特徴。加藤唐九郎、加藤土師萌、藤井達吉といった瀬戸市にゆかりの深い作家を中心に、陶芸・絵画・彫刻など約1000点を収蔵しています。

 

●アクセス

愛知県瀬戸市西茨町113-3(瀬戸市文化センター内)

TEL 0561-84-1093

名鉄瀬戸線「尾張瀬戸」駅下車、徒歩13分

詳しくは、下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.seto-cul.jp