“みる・きく・ふれる”展示がモットーの「浜松市楽器博物館」

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西暦1900年に第1号の国産ピアノが静岡県浜松市で誕生しました。そこから「音楽文化都市浜松」の歴史は動き始め、そして1995年、日本で初めての公立楽器博物館として「浜松市楽器博物館」が開館しました。年間のべ9万人が訪れ、「世界の楽器を偏りなく平等に展示して、楽器を通して人間の知恵と感性を探す」をコンセプトに、世界に向けて音楽文化を発信しつづけています。

 

        浜松市楽器博物館の外観

 

「サイン・ワイン」は旋律を奏でる打楽器です

 

取材に行って驚いたのは、ほとんどの楽器がケースに入っていないことです。無防備に置かれた楽器と説明の少ないこの展示方法は、訪れた人それぞれの自由な感性を尊重するため。近い距離で楽器を観察するもよし、設置されたヘッドフォンを使って音色を聴くもよし、また、番号のついている楽器は貸し出し用のヘッドフォンで詳しい説明を聞くこともできます。

 

館内には、1300点以上の楽器がアジア・オセアニア・アフリカ・アメリカ・ヨーロッパ・日本・鍵盤楽器・電子楽器・国産洋楽器など地域ごと時代ごとに展示されています。楽器はその土地に根付いた素材でできており、背景には文化が垣間見られます。

 

約30種類の楽器が集まり川の流れを奏でる「ガムラン」は博物館で一番大きな楽器

 

地下の鍵盤楽器コーナーで催される「デモンストレーション」

 

どの楽器にもドラマがあるのですが、ひとつ興味深かったお話を紹介しましょう。モンゴルの「カンリン」やチベットの「ガ二ラン」は人間の大腿骨でできた笛です。これには、肉体が天に還る「鳥葬」という文化背景があり、火葬を行わず、お墓を持たない遊牧民族だけに受け継がれた楽器なのです。

 

ヨーロッパの楽器がコンサートのための道具だったのに対して、アジアの楽器は儀式の中で形を変えずに使われてきた傾向があります。ヨーロッパとアジアの楽器を、着眼点を変えながらみるのも面白いのではないでしょうか。ヨーロッパの楽器コーナーでは年代ごとの変化を観察し、アジアの楽器コーナーでは人々の生活や風習に思いを馳せてみるのも、ひとつの楽しみ方です。

 

展示室いっぱいに珍しい楽器があふれています

 

精霊の顔が彫刻された儀式用割れ目太鼓「タムタム」

 

気になる楽器をさらに追究したくなったら、1階の「レファレンスコーナー」に立ち寄ってみてください。参考図書があり、設置のパソコンで作曲もできます。何よりこの博物館を楽しむポイントは、館内スタッフに質問することです。お客さまの求める情報を「歩くガイド」として提供してくれます。

 

楽器に触れたくなってきたら、1階の「体験ルーム」に行ってみましょう。このように“みる・きく・ふれる”展示が実践される博物館には、楽器に親しむ糸口がいくつも用意されています。

 

この博物館で一番古い400年前の鍵盤楽器「ヴァージナル」

 

自由に楽器に触れられる「体験ルーム」

 

毎時00分に鍵盤楽器コーナーで催されるデモンストレーションも必見です。演奏だけでなく、その楽器の歴史や、関係が深い音楽家の話まで聞くことができました。時間ごとに楽器やスタッフが変わるため、何度聴いても飽きません。
ここでは鍵盤楽器の変化の過程が分かるように並べられています。「吹く」から「押す」、「弾く」と変化し、「叩く」ことで音を出すピアノになったそうです。「吹く」という言葉は“空気を使って演奏をすること”を意味するため、オルガンは本来「吹く」になるそうです。こういった豆知識に触れると、楽器に対する親近感が湧いてきますね。

 

本物を心行くまで堪能したら、手のひらサイズの楽器に癒されましょう。ミュージアムショップ「アンダンテ」には約1500点もの楽器をモチーフにした商品が並んでいます。

 

ミュージアムショップ「アンダンテ」

 

帰り道では、浜松の街をゆっくり散策することをおすすめします。街そのものがさりげない美術館のようになっているからです。あちらこちらに散りばめられた音楽をモチーフにした立体造型、彫刻モニュメント、壁面、床のモザイクなど…いくつ見つけられるでしょうか? 宝探し気分を楽しんでみてくださいね。

 

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●アクセス

静岡県浜松市中区中央3-9-1
TEL 053-451-1128
JR浜松駅北口より徒歩10分

詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.gakkihaku.jp

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