夏こそオススメ?!気持ちが引き締まる「刀剣博物館」

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渋谷区代々木にある刀剣博物館では、『江戸の刀剣 刀装具~作家たちの好奇心~』を、9月29日まで開催しています。
平安時代の末から約1000年もの歴史を有する刀剣ですが、一部の愛好家、歴史ファンを除くと、刀剣の興味深い世界を知る人はほとんどいないでしょう。今回、企画展で取り上げられている江戸時代の刀剣・刀装具は、聞きなじみのある将軍の名前や動物が出ているなど、親しみやすい展示物が揃っています。これを機会に、刀剣の世界を覗いてみませんか。

 

     展示物同様に外観も渋い「刀剣博物館」

 

刀剣は“姿”“地鉄(じがね)”“刃文(はもん)”を、刀装具は細部の技巧までじっくり見て楽しみましょう

 

美肌茶房読者は女性が多いので、学芸員の田中宏子さんに、女性が興味を示しやすい刀装具を主に案内していただきました。
刀剣は武士の必需品であり、持ち主の裕福さやセンスをうかがい知ることができるものでもありました。刀装具はその象徴ともいえるでしょう。刀装具の中でも、注目は「鐔(つば)」です。簡単に説明すると、刀と持ち手の境目の部分にある丸い形のもののことです。刀剣は左側の腰に差すので、鐔は差したときに真正面から見えます。そのため、凝ったものがよくつくられていました。

 

春曙堂昆寛(花押)』は、その名の通り象がデザインされています。「なぜ象?」と現代の私たちは不思議に思いますが、歴史をみてみると、8代目将軍の徳川吉宗に象が献上され、それにともなって江戸では象の一大ブームが起きたそうです。ということは、象は当時トレンドのモチーフだったといえます。異国情緒を醸し出している象は、昆寛の手によって品よく配され、彫技の高さが遺憾なく発揮されています。現代にたとえるなら、上野動物園のパンダが話題になり、さまざまなグッズがつくられているのと同じかもしれませんね。

 

      『象図鐔 銘 春曙堂昆寛(花押)』

 

    『節分図鐔 銘 丁未歳製清寿法眼(花押)』

 

『節分図鐔 銘 丁未歳製清寿法眼(花押)』は、玄関に柊(ひいらぎ)と鰯(いわし)の頭があり、家に入れず戸惑っている鬼の様子が描かれている鐔です。“柊”“鰯”“鬼”といえば、何を表しているかおわかりですよね? 幕末の江戸金工の1人、田中清寿によって節分がコミカルに描かれています。季節限定の鐔。時季に応じて鐔を替えるなんて、いかに裕福でオシャレな男性であるかが、この鐔を見るだけでわかるというものです。

 

『円窓両雄図小柄 銘 宗珉(花押)』

 

徳川氏によって江戸幕府が開かれると、刀工や金工、鞘師(さやし)、塗師(ぬし)などの刀剣に携わる作家たちが江戸に拠点を移しました。江戸の自由闊達な気風を受けて、金工の世界ではさまざまな工人、流派が生まれました。
『円窓両雄図小柄 銘 宗珉(花押)』は、「町彫(まちぼり)の祖」といわれる横谷家3代目・横谷宗珉(よこやそうみん)の作で、宗珉が得意としていた片切彫(かたきりぼり)が駆使されています。片切彫とは、筆で絵を描く時のような線の強弱を金属の上で表現する彫刻技法です。やわらかい線や細い線、そして力強く太い線の使い分けから、水墨画のようなリズムや遠近感が感じられます。

 

刀装具は、季節や個々人の好みに応じて付け替えることが可能なものでした。このような凝った刀装具を用いることは、現代の私たちが、好きなブランドやお気に入りの作家のバッグや靴などで自分のこだわりを見せることと同じなのかもしれません。そう考えると、江戸時代の武士が身近に感じられませんか?

 

刀装具ばかりでなく、刀剣も1点ご紹介します。『重要刀剣 短刀 銘 越前国康継 本多飛騨守所持内 なんはんかね三条こかぢ迫』 は、江戸幕府の初代将軍・徳川家康とゆかりのある刀工の作です。
刀工の康継は、家康の前で鍛刀し、その賞として家康から「康」の一字を賜ったほどの人物です。「康継」と名前を改め、葵の紋を刀に彫ることを許されました。康継は徳川幕府の所有する数々の名刀を写していて、今回展示されている短刀は、大阪城落城の際に焼けてしまった『名物海老名小鍛冶』の写しです。

 

刀剣鑑賞ポイントの1つ“姿”にも、表に示されているようにいろいろあります

 

田中さんによると、刀剣は“姿(=バランス)”を見てもらいたいそうです。
「刀剣はシンプルで引き締まったラインをしています。刀剣は武器であり武士のシンボル。凛とした姿を見ると、こちらも身が引き締まります。暑い季節はダラッとしがちですが、刀剣のムダのない凛とした姿を見て、シャキッとした気持ちになってください」とのメッセージもいただきました。夏ならではの刀剣鑑賞の楽しみ方です。この機会に、ぜひ刀剣博物館を訪れてみてはいかがでしょうか。

 

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インフォメーション

刀剣博物館は、古来より伝統技術をもって制作されてきた日本独自の文化財である刀剣、刀装、刀装具等を展示している博物館です。平安時代から現代にわたる著名な刀工の名品をテーマに合わせて展示しています。また、現代に活躍する刀匠や研師といった職人達の作品を展示する「新作名刀展」や「研磨・外装コンクール入賞作品展」等も開催しています。

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●アクセス

東京都渋谷区代々木4-25-10
TEL 03-3379-1386
小田急線・参宮橋駅もしくは京王新線・初台駅より徒歩7分

詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.touken.or.jp/museum/

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