美肌茶房読者の皆さんは、“マンドリン”という絃楽器をご存知ですか? 今回は、日本で唯一マンドリンに特化した、珍しい博物館「マンドリンの音の博物館」をご紹介します。名古屋市にある同館は、国内でも有数のマンドリン奏者である南谷博一(なんやひろかず)氏が館長を務めている博物館です。
名古屋市の落ち着いた住宅街にある「マンドリンの音の博物館」
館内ではゆったりイスに腰掛けて、映像を見たり館長のお話をうかがいます
マンドリンの祖先ともいえる初期型は数千年前に生まれ、1620年頃に現在のマンドリンの基ができ、1850年頃イタリアのナポリで現在のような形状になりました。その後、マンドリンが日本へやって来たのは1894年とのことです。昭和12(1937)年生まれの南谷館長がマンドリンを習いはじめたのは、マンドリンが日本に来て50年経った頃、弱冠7歳の時です。それ以来、南谷館長は約70年マンドリンとともに人生を歩んできました。
音楽の道へ進むことを考えた時もありましたが、家業を継ぐことを求められていたこともあり薬科大学へ進み、卒業後は大学の医学部で薬理の助手をしていました。しかし、多忙を極めマンドリンと向き合う時間がとれないことから、大学を辞めて家業の薬局を継ぐことを決意。その後は薬局で働きながらマンドリンの演奏活動を精力的に行い、国内外でたびたびリサイタルを開催してきました。
昭和初期、マンドリンは流行歌の伴奏で使用されたことから広く知られるようになりましたが、その一方で、本場イタリアで高く評価されている芸術的な楽器・マンドリンとは大きくかけ離れ、大衆的な楽器・マンドリンという印象が日本では根付いてしまいました。南谷館長によると、若い世代でもマンドリンを弾く人は多いものの、研究したり収集したりする人は少数で、楽しんで弾くだけの人がほとんどだといいます。
そこで、南谷館長はマンドリンの普及、文化の発信のため、約30年続けた薬局を廃業して改築し、1995年に同館をオープンさせました。館内には、若い頃から収集してきた楽器、楽譜、マンドリンが生まれたイタリアをはじめとする諸外国のレコードなどを展示しています。中でも楽譜の数は膨大で、約8000曲にも上るそうです。
また、マンドリンのコレクションは、わかる人が見たら驚くような名器揃い。バイオリンで言うところのストラディバリウスに匹敵するマンドリンの名器「ガエタノ ヴィナッチァ」や、日本で最初にマンドリンを製作した 鈴木政吉氏の作品など、貴重なマンドリンが展示されています。
壁面には、マンドリンやレコードなど貴重なコレクションが並んでいます
マンドリンの名器「ガエタノ ヴィナッチァ」(1926年、イタリア製)
映像でマンドリンの歴史を学んだり、南谷館長が指揮するマンドリン楽団「デルフィーニ ドーロ(日本語で金のシャチの意味)」が、2010年にローマの音楽院で演奏した映像を見せていただいたり、南谷館長にマンドリンの歴史について語っていただいたり、同館を訪れて、何を見たり、聴いたり、話していただくかは、来館者しだい。マンドリンを習っている、マンドリンの音色を聴くのが好き、マンドリンを深く知りたいなど、来館者それぞれのマンドリンとの関わりに応じて、南谷館長が臨機応変に対応してくれます。もちろんマンドリンに詳しくなくてもOK。同館を訪れたら、きっと新たな世界との出会いにワクワクすることでしょう。
「私は心底からマンドリンが好きで、信仰しているという言い方をしてもいいくらいです」と、マンドリンへの並々ならぬ想いを話してくれた南谷館長。そのため、せっかく来てくださった方々には、マンドリンを愛するオーラを感じてもらい、良い気持ちになって帰っていただきたいそうです。
特別に生演奏を聴かせてくれた、
南谷博一館長
ちなみに、同館がオープンしたのは、平成7年5月8日の“ナゴヤ”の日。入館料は、24歳以上700円、24歳未満500円、小学生80円となっていて、こちらも“ナゴヤ”にちなんでいます。24歳という区切りに疑問を持った方は鋭い! そこにも秘密があります。名古屋市を数字で表すと7584になり、4つの数字を足すと24になります。また、オープンした平成7年は、西暦1995年。1995の4つの数字を足しても24になるのです。説明してくれた南谷館長は、ちょっと得意げで楽しそうな顔をされていました。
マンドリンへの深い愛情と、103歳でのソロリサイタル開催の夢を持ち、一方ではこんなユニークな一面を持つ南谷館長に会いに、ぜひマンドリンの音の博物館を訪れてみてくださいね。
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インフォメーション
マンドリンの音の博物館は、イタリア発祥の絃楽器・マンドリン専門の日本で唯一の博物館です。マンドリン演奏歴約70年、マンドリンの普及・発展に尽力している南谷博一氏が、館長を務めています。
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●アクセス
愛知県名古屋市昭和区川名本町 6-38
TEL 052-751-1678
地下鉄鶴舞線「川名駅」より徒歩3分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www5d.biglobe.ne.jp/~mandolin/
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