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大豆たんぱく質由来の滋養食品が「ゆば」ならば、小麦のそれは「麩(ふ)」です。

 

小麦粉に食塩水を加えて練って生地を作り、粘りが出たところで生地を布製の袋に入れて水の中で揉みます。デンプンが水中に流失した後、ガムのように残ったものがグルテン。これに餅粉を混ぜたり、蒸したり茹でたりして「生麩(なまふ)」が出来ます。京料理には欠かせない伝統的な食材で、生麩を使った精進料理は、京料理のほか、加賀料理(石川県)が知られています。

 

もちもちとした独特の食感で、お刺身風にいただいたり、油で揚げて味噌をぬって田楽にしたり、それ自体が料理の主役になることもあれば、「手鞠麩(てまりふ)」や「花麩(はなふ)」のようにお膳に美しい彩りを添えることもあります。

 

グルテンに強力小麦粉を加えて練り、焼いたものが「焼麩(やきふ)」です。山形県や新潟県、沖縄県などが焼き麩の名産地として知られています。

 

山形県庄内地方の「庄内麩」は焼き麩の一種ですが、全国的にも珍しく、板のような平たく薄い形状をしています。登場したのはおよそ300年前。北陸と関西を往き来する北前船に積みやすいよう、板状になったそうです。少し湿らせてから、お好みの形に切り分けて使用しますが、現在は、一口大の「きざみ麩」も販売されています。薄いのに煮くずれしにくく、味もしっかりしていると評判の庄内麩は、味噌汁や吸い物の実はもちろん、煮ながらもどしてすき焼きの具にしたり、その形状を活かしてミルフィーユのように重ねて調理することもできます。

 

お麩といえば生麩、焼き麩の2つに大別されますが、これら以外に、宮城県を中心につくられているのが「油麩(あぶらふ)」です。大豆油や菜種油で揚げてつくる麩で、焼き麩よりも濃い色の棒状なので、フランスパンのバゲットと間違えそうな外観です。
焼き麩と同じように、味噌汁やうどん、すき焼き、肉じゃがなどに使えますが、油麩から溶け出す油が他の具材にしみ込むため、コクのある仕上がりになるのが特徴です。たっぷり汁のしみ込んだ油麩を卵でとじて、あつあつのごはんにのせた「油麩丼」が地元では人気だそうです。カツ丼や親子丼のような味わいで食べ応え十分なのに、お肉を使わないのでとってもヘルシーなところが受けている理由かもしれません。

 

室町時代より日本人が長く食べてきたお麩。消化がとても良く、良質なたんぱく質を多く含む低カロリー食品なので、健康志向の現代には食事にもおやつにもおすすめです。

 

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【参考資料・web】

「食と日本人の知恵(著:小泉武夫)」岩波現代文庫
「全国粉料理MAP」 HP
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