ご神体の大霊岩が女性の味方「越木岩神社」

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大阪と神戸の中間に位置する兵庫県西宮市は、阪神タイガースや高校野球でおなじみの甲子園球場がある街です。海に近い甲子園球場は市の南側エリア。そこから市街地を抜けて北西へ、宝塚方面に向かう高台に越木岩神社があります。

 

現在の拝殿は昭和58年に建造されました

 

千年前の延喜式神名帳に記録されている「大国主西神社」が、この神社であったといわれているほど、古くから信仰を集めている由緒ある神社です。大鳥居をくぐると、枝を広げた大きな木、清らかな森の香りに包まれて空気が一変します。この森と境内が兵庫県の天然記念物に指定されており、東六甲山の麓で唯一の霊場として、また地元の産土神として崇められています。
拝殿の前に立つと涼やかな風が吹いてきて、清々しい気持ちになりました。ここに祀られているのは、商売繁盛のご利益がある恵比寿様です。西宮市には十日戎の賑わいが有名な西宮神社があることから、こちらは「北の戎」と呼ばれています。柏手を打って参拝をしてから、拝殿の西側にある参道を歩きます。

 

ご神体の迫力に圧倒されます

 

石段を登り切ると、ご神体である大霊岩「甑岩(こしきいわ)」が目の前に現れました。高さ10メートル、その大きさに圧倒されるとともに、何か神聖な力を感じます。このご神体は弁財天で、七福神の一員であり音楽や芸術の女神様です。女性を守ってくださることから、縁結び、子授け、安産の神様ともいわれています。願いを込めてこのご神体のまわりを一周するとよい、ということでお社の横からまわってみました。

すぐに現れたのが、不思議なしるし。これは池田備中守長幸の家紋で、大阪城築城のために切り出そうとした時の刻印です。大阪城が造られた時というと400年以上前。さわってもいいと書かれていたので、遠慮なく…。こんな大きな岩を切り出して、大阪まで運んでいくなんて、どれだけの労力がかかったことでしょう。でも、ご神体なのに切り出していいのかしら、という疑問が浮かびます。調べてみると、答えは地元に伝わる民話の中にありました。

 

くっきりと家紋が描かれています

 

『築城のために切り出そうとした役人に村人は「神様の岩だからやめてほしい」と懇願したそうです。しかし役人達は耳を貸そうとはせず、石切職人に命じて作業をさせました。職人が槌でノミを打つたびに火花が散り、そのうちに岩の裂け目から白い煙が吹き始め、すぐにものすごい勢いで吹き出したのです。その霊気に石切職人達は岩もろとも転げ落ち、役人達も命からがら逃げ出した(抜粋)』と伝えられています。
甑岩は、古代信仰の磐境(いわさか)・磐座(いわくら)とされ、神が降臨される祭祀の場であったようです。甑岩と呼ばれるのは、酒造りに使われた甑に形が似ているからという説があり、日本酒造りで知られる灘五郷のある西宮ならではだと納得。甑は酒米を蒸すために使われるから、お話の中の煙を湯気に例えたとしたら、民話に信ぴょう性がありますね。
さて、ぐるっとまわって再び元のお社の前に。周囲は約40メートル、段差があったので少し粗くなった呼吸を整えて改めて見上げると、力強いその姿に再び手を合わさずにはいられません。心の中でお願いごとを復唱しました。

 

切り出された岩がそのまま残っています

 

拝殿に戻り、西側に行くと大阪城築城の残石が残されています。右の御影石にある刻印は池田備中守長幸、左は鍋島信濃守勝茂。豊臣秀吉に命ぜられた大名が、採石したものの運び出されなかった石です。境内から数個の刻印石が発見されていることから、この付近一帯が採石地だったことがわかっています。
越木岩神社は地元の人にとって身近な産土神で、帯祝い、お宮参り、七五三と人生の節目に参拝します。また、毎年9月に開かれる伝統行事「越木岩泣き相撲」が有名で、力士に抱かれた赤ちゃんが神聖な土俵に上がり、子どもが健康に育つように祈願します。元気な赤ちゃんの鳴き声が響く様子を、弁天様が見守ってくださるのですね。

 

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アクセス

兵庫県西宮市甑岩町5-4
阪急甲陽線「甲陽園駅」または「苦楽園口駅」より徒歩約15分
阪急バス・阪神バス「夙川短大前」より徒歩5分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.koshikiiwa-jinja.jp/
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