多くの謎を秘めた、「丹波の正倉院」と呼ばれる達身寺

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兵庫県の北部に位置し、豊かな自然が残る街・丹波市。丹波栗や黒枝豆、松茸といった秋に採れる特産物でも知られています。山々に囲まれてとても静かで、とても落ち着いた雰囲気。呼吸するたびにカラダの隅々まで新鮮な空気がゆきわたっていくような気がします。そんなのどかな山里にたたずむ、情緒あふれるお寺が達身寺です。

 

8世紀半ば、行基菩薩によって開かれ、後に曹洞宗に改宗したと伝えられていて、当時は多くの僧兵を抱えた山岳密教の大寺院だったといわれています。現在、平安後期から鎌倉初期の約80躯の古い仏像を有する、ここ達身寺。そのうち、国重要文化財が12躯、兵庫県指定文化財が34躯、丹波市指定文化財が33躯と、古く、貴重なものばかり。そして、そのほとんどが木彫仏の一木造で、保存状態の良さに驚かされます。「丹波の正倉院」という愛称にも納得です。

 

住職の渡辺さん。「謎に満ちたお寺です。仏様で心を清め、花々で目を和ませてください」とのこと

 

本堂の奥にずらりと並ぶ、素朴な佇まいの数々の仏像のほか、別棟の宝物殿には、阿弥陀如来、薬師如来の姿も。でも、古文書が残っていないため、こんなにも多くの仏像がある理由がはっきりとされていないのです。
「明智光秀による丹波攻めの際、僧侶たちは寺を焼かれる前に仏像を谷へ隠した。その後、村に疫病が流行って多くの人が亡くなったとき、占い師に『仏像を放置したのが原因』と告げられた村人たちは、仏像を集め、修復してお堂に安置して奉った、と村に伝えられています」と、住職の渡辺健臣さんがお話をしてくださいました。

 

中心に奉られているのが、鎌倉初期の「御本尊阿弥陀如来坐像」です。優しい目と小さな口、慈愛に満ちた表情をされています

 

下腹がぽっこりと膨らんだ、「達身寺様式」と呼ばれる独特のスタイルも見ることができます

 

製作途中だと思われる仏像も多く残されています

 

また、通常は一寺に一躯奉ればよいとされる兜跋毘沙門天が16躯あったり、本尊仏になる仏像が数多く残っていたり、とほかにも謎が多く、未完成の仏像や破片が多いことから、京都や奈良で活躍した丹波仏師の工房であったのではないかともいわれています。そして、こちらも古文書がほとんど残っていないため、真相はわからないままなのです。

 

多くの謎が残る神秘的な空間で、時間が経つのも忘れて個性豊かな仏像に見入ってしまいました。長い歴史を越えて、今を生きる私たちの心も和ませてくれる、ロマンあふれる達身寺。一年中、四季折々の花が咲くそうですが、コスモスの群生があたりを彩り、紅葉が見事に色づく秋は特におすすめですよ。

 

コスモス畑と隣接しています

 

可憐なコスモスに心癒されてください

 

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アクセス

兵庫県丹波市氷上町清住259
TEL 0795-82-0762
JR福知山線「柏原駅」もしくは「石生駅」よりタクシーで約15分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.tashinji.jp/

【写真協力】岸隆子
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