“伊奴”と書いて“いぬ”と読む、日本でここだけ?!の珍しい犬の神社が名古屋にあります。人間と犬が親密な関係を保つようになってからできた、歴史の浅い神社かと思いきや、伊奴神社は1340年もの歴史を有する古社です。伊奴神社のある稲生町は、その地名からも推測できるとおり昔は稲作が盛んな土地で、収穫した稲を皇室に献上した際(673年、第40代天武天皇時代)に建立されました。
厄除けと家内安全の御神徳がある素戔嗚尊(すさのおのみこと)と、その子どもで農業の守護神・大年神(おおとしのかみ)、そしてその妃の伊奴姫神(いぬひめのかみ)の3神が伊奴神社には祀られています。子授け、安産、夫婦円満の御神徳がある伊奴姫神が社名の元になっているので、伊奴姫神と同じく安産の象徴でもある“犬”に転じていったのかと思われますが、それ以外にも伊奴神社には犬と関連する物語が伝えられています。
外は犬の気配はしませんが、境内には像や絵馬など犬の姿があちこちに見られる「伊奴神社」
参拝者の願いがぎっしり詰まっている「絵馬殿」
昔々、この地は近くを流れる庄内川の恩恵を受けて稲作が盛んでした。庄内川が氾濫して村人が困っていたあるとき、ひとりの山伏が村を訪れました。村人にもてなしを受けた山伏は、村の状況を知ると御幣を立ててお祈りをしてくれました。するとその年は川が氾濫することはありませんでした。
喜んだものの、村人は気になって気になって、開けてはいけないと言われていた御幣を開けてしまいました。するとそこには、犬の絵と“犬の王”の文字が!
御幣を開けてしまったからなのか、翌年また庄内川が氾濫。再び村を訪れた山伏に村人が詫びたところ、御幣を埋めてそこに社を建てて祀るようにと教えられました。そのとおりにしたら、その後庄内川が荒れることはありませんでした。
これが伊奴神社のはじまりとも言われています。
りりしい姿の犬の石像。飼い犬がしているような首輪が気になりますが…
そのため境内には犬の姿があちこちに見られ、“犬の王”の文字とともに立派な犬の石像が立っていたり、立派な絵馬殿には、愛犬の健康や自分自身の安産と家庭円満を祈願する、犬の絵が描かれた絵馬がたくさん並んでいます。
御守は開運、厄除け、良縁、学業、交通安全などもありますが、ここは伊奴神社ですから、犬の御守が充実しています。犬の健康と幸福を願う御守や、愛犬と飼い主との絆を強くする絆御守など、ほかではお目にかかれない御守ばかり。愛犬家ならどれにしようか迷ってしまうことでしょう。
おみくじも、普通のおみくじではありません。もちろん犬がらみのおみくじ、その名も「開運いぬみくじ」。犬の王というにはあまりにあどけない顔の、白い小さな犬の像の底におみくじが入っています。伊奴神社のシンボルの犬の王が幸せを運んでくれるので、おみくじを見た後、犬の像は神棚や身近なところに飾っておくと良いそうです。
すくすくと巨木に育った、珍しいシャシャンボの木
石像とはうってかわり、愛らしい姿の「開運いぬみくじ」
境内には犬のほかにも見どころがあり、サクラ、ツツジ、ナンジャモンジャ、紫陽花などが四季折々の表情を見せてくれます。ご神木もありますが、それよりも、といってはバチあたりかもしれませんが、常緑低木のなんでもないシャシャンボの木が珍しいのです。すくすくと育って巨木になっています。7月ごろにそっと小さな花が咲くそうなので、またその頃に訪れて見てみたいものです。
[su_note note_color=”#f6f6f6″]
アクセス
愛知県名古屋市西区稲生町2-12
TEL 052-521-8800
地下鉄鶴舞線「庄内通駅」より徒歩10分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください
http://www.inu-jinjya.or.jp/index.html
[/su_note]