奥深い日本画の魅力を感じて〜鞍ヶ池アートサロン「日本の美 -伝統と近代」展

img class=”alignnone size-medium wp-image-75″ src=”https://bihadasabo.net/hp/images/town/spot/tenji_126h.jpg” alt=”” width=”300″ height=”200″ />トヨタ鞍ヶ池記念館外観。目の前に鞍ヶ池公園があり、家族連れでにぎわっている

 

愛知県豊田市の鞍ヶ池アートサロンで、12月14日(日)まで「日本の美 − 伝統と近代」展が開かれています。本展では、近代日本画が西洋からの影響をいかに受けとめ、力強い変革が現代に至るまでになされてきたかを紹介。伝統をもとに各世代の画家たちが描き出した“日本の美の世界”を堪能できます。

 

明治維新以降、日本は急速に近代化が進み、あらゆるものがめまぐるしく変容していきました。美術界も例外ではなく、西洋の影響を多大に受けることになります。そうしたなか、従来の伝統的な日本の絵画は、西洋から移入された「洋画」と区別するため「日本画」と称されるようになりました。そして、画家たちは時代に即した新たな日本画の創造をめざします。それは、日本古来の伝統と美意識に根ざしながら、西洋絵画の手法を取り込もうとするものでした。このような時代の変化とともに新たな可能性を模索し続ける姿勢は、今日まで受け継がれています。

 

アートサロン入口。トヨタ創業展示室が隣接しており、そのまま続けて楽しめる

 

展覧会リーフレット。掲載されている作品は、福田平八郎「雉」1948年作

 

ご存じのように絵画は、平らな画面に描く二次元の世界です。ただし、遠近法や影を書く等の技法で三次元(立体)の世界を表現することもできます。それは洋画でも同じですが、「日本画の魅力」は、その三次元の世界に“時の流れ”(一次元)を加えて描いていることです。時の流れ(一次元)+空間(三次元)=時空(四次元)の世界を創り出そうとしました。これにより、独特の侘び寂び、はかなさ、静けさなどが表現されるようになりました。

 

いくつか作品を見てみましょう。

 

まずは川合玉堂。彼は、伝統的な技法に西洋流の遠近法も積極的に取り入れた画家です。「深山抄秋」ではそれがよく表れており、近景の岩、中景の木々、遠景の山並みを靄(もや)でつなぐことによって遠近感が強調されているのが分かります。日本庭園に共通する宇宙観が表現されているのも特徴です。また、1年にわたり欧州へ美術留学していた小林古径は、洋画の手法を取り入れつつも東洋的な線描の技術を高め、線一本一本を大切にしました。「菊花白描」を見ても、花びらや猫の毛などが非常に丁寧に描かれています。背景を排した多くの余白からは、静かな時の流れが感じられるでしょう。

 

川合玉堂「深山抄秋」1930年頃作

 

小林古径「菊花白描」1926年頃作

 

上村松園「つれづれ」1940年頃作

 

上村松園は、女性の内面からあふれだす美しさを描き「近代の美人画」を確立させました。「つれづれ」では、着物や帯の色の合わせ具合、かんざしの透明感などに注目してください。手に持っている書物が『源氏物語』の「玉かづら」であることの意味や、物思いにふけった目線の先を想像してみるのもおもしろいかもしれません。松園の息子である上村松篁は、美人画ではなく花鳥画を得意としました。「燦(さん)」は、色鮮やかなハイビスカスとハチドリという西洋のモチーフが、見事に日本古来の美意識と並び立っています。そして、やはり花鳥画を描く孫の上村淳之の「春宵」。2羽の鴫(しぎ)には影がありません。鴫そのものの存在自体を否定しているかのようです。“空”の世界を感じさせます。その空間表現からは壮大な自然観、宇宙観を見てとれます。

 

興味深いのは、吉田義彦の「霧氷」。一見、ただ全体に白いだけのようですが、実は金箔を施した上に薄い紙が貼られており、さらにはそれを掻きむしるという技まで使われています。これは「吉田様式」とも呼ばれる独特の技法で、しばらく見ているうちに背景の金箔や木の形などが浮かんできます。厳寒の朝の、自然の荒々しさと美しさをとらえた一枚です。

 

そして一際目立つのが、片岡球子の「富士」です。日本画とは思えない色鮮やかなパッチワーク風の構成。60代からのワイフワークとして富士を追い続けた彼女ですが、心に感じたままを描こうとし、自分の世界、1つの世界観を作り上げました。

 

絵を見るときには、歴史や時代背景、作家の人生、技法などを知っておくと、より理解が深まります。さらに日本画を見る時は、その壮大な自然観、宇宙観の世界に自分自身を溶けこませると、その作品をより理解することができます。また、余白が多い日本画は、見る人の経験や人生によってさまざまにイメージをふくらますことができます。経験によって絵の見方も変わる、とも言えるでしょう。

 

アートサロン入ってすぐのスペース。受付でもらえる出品目録などを参考に鑑賞するのもおすすめ

 

アートサロン奥のスペース。落ち着いた雰囲気でゆったりした気分に

 

インフォメーション

鞍ヶ池アートサロンは、トヨタ自動車㈱が運営する「トヨタ鞍ヶ池記念館」の中にある施設の一つです。記念館は昭和49年(1974)、トヨタ車生産台数累計1000万台達成を記念して建てられました。館内には鞍ヶ池アートサロンのほか、トヨタ創業展示室、旧豊田喜一郎邸などがあります。鞍ヶ池アートサロンでは、主に同社が所蔵している絵画を年に4回、テーマを変えて展覧。洗練された芸術に気軽にふれて楽しめる文化的スペースとして、多くの人に親しまれています。記念館、館内施設すべて無料。

 

●アクセス

愛知県豊田市池田町250(トヨタ鞍ヶ池記念館内)

TEL 0565-88-8811

豊田市駅より名鉄バスで25分「鞍ヶ池公園前」下車、徒歩3分

詳しくは、下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.toyota.co.jp/jp/about_toyota/facility/kuragaike/art/