大名家の雛の世界に浸る~徳川美術館「尾張徳川家の雛まつり」

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今年で26年目となる名古屋市・徳川美術館の特別展「尾張徳川雛まつり」が、4月6日(日)まで開かれています。尾張徳川家3世代にわたる豪華な雛段飾りや、それらに関するさまざまな人形・雛道具を展示。大名家ならではの豪華で気品のある雛の世界を堪能できます。

 

どれも素晴らしいものばかりですが、見どころを絞っていくつかご紹介しましょう。

 

  有職雛 貞徳院矩姫(尾張家14代慶勝夫人)所用

 

有職雛 貞徳院矩姫(尾張家14代慶勝夫人)所用

 

まずは、尾張家14代慶勝夫人である貞徳院矩姫(ていとくいんかねひめ)が所用した「有職雛(ゆうそくびな)」。「有職」とは公家社会のさまざまな決まり事を指す言葉で、「有職雛」は公家の装束を正しく考証してつくられています。束帯姿3対、直衣(のうし)1対、狩衣(かりぎぬ)1対あり、高さはおよそ30センチ。それぞれの人形の身分や年齢などに合わせた裂地(きれじ)が選ばれ、さらに身丈にあった文様を別織りにしています。当時製作された大名家の雛人形の中でも、ひときわ格調高い貴重な作品です。もちろん、雛道具も見逃せません。梨子地に松竹梅の折枝と唐草文様を配し、銀の金具を打った豪華なつくりには、目を見張るものがあります。

 

松竹梅唐草蒔絵雛道具 三棚飾り 貞徳院矩姫(尾張家14代慶勝夫人)所用

 

七福神 貞徳院矩姫(尾張家14代慶勝夫人)所用

 

ほかにも、尾張家にはたくさんの雛道具が伝えられていますが、11代斉温夫人の俊恭院福君(しゅんきょういんさちぎみ)所用のものは婚礼調度がひと通り揃えられており、現存する大名家の雛道具の中で最も華麗な作品です。五摂家筆頭の近衛家から嫁いだ福君の雛道具には、梨子地に菊の折枝が配され、ところどころに近衛家の家紋である抱牡丹紋と徳川家の葵紋が散りばめられた「菊折枝蒔絵雛道具」や、梨子地に抱牡丹紋を配した「抱牡丹紋散蒔絵雛道具」などがあります。どれも実物と同じ精緻なつくりで驚くばかり。つい、「こんな素敵な道具でおままごとができたら……」などと思ってしまう女性も多いのでは。

 

展示する雛道具は、毎年少しずつ替えているとか。展示室の中は、まさに華やかな春の雰囲気

 

菊折枝蒔絵雛道具 茶弁当 俊恭院福君(尾張家11代斉温夫人)

 

さて、「尾張徳川家の雛まつり」と言えば、何と言っても「尾張徳川家3世代にわたる雛段飾り」でしょう。徳川美術館創始者の19代義親夫人である米子、20代義知夫人の正子、そして21代義宣夫人の三千子。この3世代にわたる明治・大正・昭和の雛段飾りが実に豪華で美しく、思わず息が漏れてしまいそう。ここには数組の内裏雛を上段にすえ、三人官女や五人囃子、節供の祝儀として贈られた御所人形、さまざまな道具が並べられています。

 

尾張徳川家3世代にわたる雛段飾り。高さ2メートル、幅7メートルにもおよぶ

 

ロビーにもお雛様があり、写真撮影ができる。中央の七段飾りは、徳川美術館をイメージした新作

 

特別公開されている「皇女和宮ゆかりの御所人形・雛道具」も今年の見どころです。孝明天皇の妹で、14代将軍家茂へ降嫁した和宮。愛らしい幼児をかたどった御所人形の着衣には、冠と菖蒲の文様が刺繍でほどこされています。また、和宮が晩年、身の回りに置いていたとされる小物類もじっくり見てください。陶製の七福神や賀茂人形、毛植え人形のほか、銀製の懐中道具、玉虫、紅白の貝、七福の豆、厄よけの札など多種多様。長寿や幸運など吉祥につながる意味を持つ品が多く、興味深いものがあります。

 

「尾張徳川家の雛まつり」に併せて、美術館とそのままつながっている蓬左文庫(尾張徳川家の旧蔵書を中心に和漢の優れた古典籍を所蔵する公開文庫)の展示室1では「ひなの世界」を、展示室2では「大名家の礼法 小笠原家伝書」を開催しています。とくに「ひなの世界」では、江戸時代から昭和まで、町家に伝えられたさまざまな人形が紹介されています。大名家の雛人形とは異なる、素朴で身近な世界もぜひご覧ください。

 

かつての尾張徳川家名古屋別邸の「表門」をくぐると、正面に美術館が見える。写真には写っていないが、向かって右手に蓬左文庫がある

 

美術館に隣接する日本庭園・徳川園への入口。園内「ガーデンレストラン徳川園」でも、特別展のスペシャルランチコースがある

 

そのほか、美術館庭園内にある喫茶室では草餅や菱餅、甘酒など、雛まつりならではのメニューを用意。また、会席料理の「宝善亭」でも、春の彩りを盛り込んだ会席風弁当「雛御膳」が人気です(会期中数量限定、予約がおすすめ052-937-0147)。目で楽しんだあとは、舌でも楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

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インフォメーション

徳川美術館は、尾張徳川19代・侯爵徳川義親の寄附によって昭和6年(1931)に創立された、公益財団法人徳川黎明会が運営する私立美術館。昭和10年(1935)に開館しました。徳川家康の遺品を中心に、初代義直(家康九男)以下代々の遺愛品、いわゆる「大名道具」1万件余りを収めています。世界的にも名高い国宝「源氏物語絵巻」をはじめ国宝9件、重要文化財59件、重要美術品46件を含み、内容の豊富さ、質の高さ、保存状態の良さを誇っています。

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●アクセス

名古屋市東区徳川町1017
TEL 052-935-6262
基幹バス:「徳川園新出来」下車、徒歩3分
メーグル(観光ルートバス):「徳川園・徳川美術館・蓬左文庫」下車
JR:中央線「大曽根」駅下車、南口より徒歩10分
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.tokugawa-art-museum.jp/

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