多様な“つまみ”作品に魅了される「佐田つまみ画美術館 吉祥寺館」

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“つまみ細工”をご存知ですか? 舞妓さんや七五三の女の子の、櫛(くし)やかんざしなどの髪飾りについている細工といえばわかるでしょうか。
発祥ははっきりとはわかっていませんが、つまみ細工は宮中ではじまったといわれていて、江戸時代になると徐々に一般にも広がり、つまみ細工のカワイイ櫛やかんざしはすぐに若い女性に受け入れられました。明治初期には羽子板や小箱、うちわなどにもつまみ細工は広がり、明治末期にはつまみ細工の作者だった佐田豊山氏などが絵画化を試み、“つまみ画(え)”が誕生しました。
初代家元・佐田豊山氏の孫にあたり、3代目家元の佐田旭榦(さだきょくかん)氏が館長を務める「佐田つまみ画美術館 吉祥寺館」を今回は訪ねました。

 

ブローチなど細々したものから大きなつまみ画まで、さまざまな作品が並ぶ

 

実際より小ぶりに作られている文楽の人形には、6点揃いのつまみのかんざしが展示されています

 

つまみ画美術館といっても、展示作品は画だけではありません。櫛やかんざし、ブローチ、箱ものなど、さまざまなものが展示されています。戦前は学校の家庭科でも教えられていたという、江戸時代から続く日本の伝統工芸のつまみは、小さな四角い絹の布をたたんで作ります。裁縫ができて当たり前だった時代、あまった布や小さな布を活かすことができ、なおかつカワイイつまみは、女性たちにとっては楽しい手工芸だったことでしょう。

 

展示室を見て歩くと、なにげなく置かれていますが、よく見ると驚く作品の1つが“瓶細工”です。瓶の中に船の模型が入っているボトルシップならぬ、ボトルツマミなのです。普通に作ってもかなりの根気が必要だろうと思われる細かな作業のつまみが、口の小さな瓶の中で作られています。

 

小さな瓶の口からどうやって?! 製作工程が想像できない“瓶細工”

 

邪気をはらう目的のものとは思えないほど華やかな“薬玉”

 

そのほかに注目したいのは薬玉(くすだま)です。現在は開店やお祝いなどの場で目にするくす玉は、古くは端午の節句に菖蒲やよもぎなどの薬草を五彩の糸で結んで長く垂らし、軒下に掛けて邪気をはらい安寧と長命を祈るものでした。色鮮やかで華やかな薬玉は、見ているだけで楽しい気持ちになれ、心の内の邪気もはらってくれそうです。

 

細々としたカワイイつまみ細工を堪能した後は、壁面に展示されている“つまみ画”に目を転じましょう。従来のつまみの技術も活かしながら、花や鳥、風景を表しているのが“つまみ画”です。
2代目・佐田旭氏と3代目・佐田旭榦氏の合作の『初冬の別苅』(30号、昭和51年)は、北海道へスケッチ旅行に行った際、冬枯れの中、わずかに残るトウモロコシの実をついばんでいる烏をスケッチし、帰京後つまみ画で表現した作品です。烏とトウモロコシは絹の布のつまみと和紙で作られていて、遠くから見ても立体感があり、作品全体に奥行きを生み出しています。
「つまみ画は現物を見てもらってこそ伝わる」と館長が言うように、繊細な技術が集結しているのに、つまみ画が放つ不思議な力強さと温もりは、実際に目にした人だけが感じることができる特権です。

 

遠くから見ても立体的な『初冬の別苅』

 

近くで鳥を見ると、小さな布をたたんだつまみの連続であることがわかります

 

長い歴史を持つつまみですが、館長によるとだんだん作る人が少なくなってきているそうです。日本の伝統文化を絶やすことのないように、館内では教室も開催されています。取材に伺った日はたまたま教室のある日で、はじめての人から四半世紀(!)も通っているという人までが参加していて、それぞれのレベルに応じて髪飾りや薬玉、来年の干支の小さな羽子板などを制作していました。

 

時には談笑したりしながら、器用につまみ作品を作っている教室の皆さん

 

日本の伝統を広く皆さんにも知ってもらうために作品を展示しながら、技術の継承も図っている「佐田つまみ画美術館」へ、ぜひ出掛けてみてくださいね。ほかでは体験できない、つまみ画の世界との出会いがあなたを待っていますよ。

 

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インフォメーション

佐田つまみ画美術館は、日本の伝統工芸であるつまみ細工や、つまみ技術を応用した「つまみ画」を展示している美術館です。櫛やかんざしをはじめとしたお細工物、つまみ画など約700~800点を所蔵し、羽子板、お雛様、瓶細工、薬玉などをメインに据えた展示替えを3カ月に1度行っています。

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●アクセス

東京都武蔵野市吉祥寺東町2-18-16
TEL 042-257-6235
JR「吉祥寺駅」より徒歩7分

詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://www.tumami-e.com

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