1度目にしたら9割の人がリャドの魅力にハマる? !「杉山美術館」

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新小岩駅から歩いて約10分の住宅街に、ある画家のファンにとってはたまらない美術館があります。スペインの画家、J.トレンツ リャドの原画を常設展示している「杉山美術館」です。リャドに魅せられた一人の男性が2009年に開館しました。

 

見た目はまるで一軒家。1階は事務所、2階が「杉山美術館」です

 

近くで、そして距離を取って眺めるのがリャドの原画の楽しみ方

 

杉山岳久館長がリャドの作品に出逢ったのは1995年。友達に誘われて行った銀座のギャラリーで、『カンピン嬢』の版画を見たのが最初です。そのときのことを、「まさに一目ぼれでした!」と杉山館長は振り返ります。もともと絵は好きだったけれど、欲しいとまで思ったのは初めてのことでした。
リャドについて調べるうちに原画があることを知り、カンピン嬢の原画を所有している画廊に見に行きました。一目見て「絵が生きている。描かれている人の姿形だけでなく、内面も描かれているような気がする」と衝撃を受けました。そして、肖像画だけでなくリャドの描く風景画にも魅了され、初めて購入したのが『ヴィラヴェルディーの池』です。その数年後に、『カンピン嬢』の原画も手に入れました。

 

          『カンピン嬢』

 

       『ヴィラヴェルディーの池』

 

スペインは枠に入れて絵を飾る習慣がないため「窓」という見方もあるそうですが、作品の中に「枠」があるのもリャドの特徴の1つです。その枠からはみ出して描くことで、『ヴィラヴェルディーの池』のように奥行きが感じられるようになっています。

 

リャドを語る上で欠かせないのが、「スプラッシング」という技法です。近くで見ると絵具の隆起が激しい絵なのに、数メートル離れてみるとピタリと焦点が合い、一変して穏やかな肖像画、風景画にしか見えません。リャドの原画が持つ最大の魅力はここにあります。
しかし、杉山館長によると、リャドを知っていても版画作家だと思っている人が日本には多く、版画とは深みがまるで違う原画の素晴らしさを知っている人は少ないうえ、画家としても日本では正当に評価されていないと感じるそうです。リャドの原画は個人で所有されている場合がほとんどで一般の人が目にする機会がないことから、多くの人にいつでもリャドの原画を見てもらえる場をつくり、その素晴らしさを少しでも感じてもらいたいとの思いから美術館を設立しました。
開館してまだ4年ほどですが、リャドには根強いファンがいて、杉山美術館の話を聞きつけて日本全国からこの美術館をめざしていらっしゃるそうです。もともとのファンだけではなく、「リャドを知らずに連れてこられた人も、9割位の人がリャドの魅力にハマって帰られますよ」と杉山館長は笑いながら教えてくれましたが、それもまんざら大げさな話ではなさそうです。リャドについてまったく知らずに出掛けた美肌茶房編集部の私も、帰るときにはすっかりリャド・ファンの1人になっていましたから。

 

          『バガテルの薔薇』

 

近くで見るとこんなに荒々しい『バガテルの薔薇』

 

ひと目ぼれした『カンピン嬢』のほかに、杉山館長が「やられた!」とざっくばらんに語ってくれた作品もここで紹介しましょう。『バガテルの薔薇』です。これは版画にもなっていて見たことがあったそうですが、いざ原画を見てみると、絵の具の盛り上がりがもの凄い作品です。それが少し距離を取って眺めると、その荒々しさはまったく感じられない可憐であでやかな薔薇の絵にしか見えません。杉山館長はまさに「そのギャップにやられた!」そうです。

 

リャドの魅力、作品の楽しみ方を丁寧に教えてくれた杉山館長

 

何も知らずに鑑賞してももちろん良いですが、計算されつくしたリャドの作品は、ちょっと予備知識を入れてから見ると、さまざまな見方をして楽しめます。リャドを知っている人も知らない人も、ぜひ杉山美術館へリャドの原画に逢いに行ってみてくださいね。きっと誰かに話したくなるお気に入りの美術館の1つになること間違いありませんよ。

 

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インフォメーション

杉山美術館は、スペインの画家J.トレンツ リャドの原画をより多くの人に見てもらいたいとの思いから、杉山岳久氏が2009年7月1日に開館した美術館です。リャドの原画をはじめ、杉山館長が国内外の心に残る絵画を展示しています。年に数回の企画展のほか、時には希少な自動車の展示も行なっています。

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●アクセス

東京都江戸川区松島3-42-1
TEL 03-5879-9951
総武線「新小岩駅」より徒歩10分

詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://r-brain.co.jp/

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