アウトドアな装いの人が多いJR青梅線の車内。乗客のほとんどは御岳駅で降り、登山やハイキングのために御岳山へ、あるいは釣りやカヌー、ラフティングを楽しみに、多摩川へと出発します。
美肌茶房編集部が向かったのは、それらとはまったく趣が異なる場所、「自然野草園」です。
自然野草園は、園主の北島浩之さんがご自宅のある敷地3000坪を開放して、庭や山の野草を来園者にお見せしているところです。もともと自生していた野草と、後から植えたものがあり、開園してもう30年ほどになるそうです。
四季折々、さまざまな野草が来園者を楽しませてくれますが、野草ですから艶やかな華々しさはありません。ポイントごとに北島さんお手製の野草の名前を書いた看板が掲げられてはいますが、野草に馴染みのない人は見たこともないでしょうから、どれがその野草かわからず、珍しい野草でも見逃してしまったり、ただの草にしか見えないかもしれません。
目印の大鳥居、向かって左が「自然野草園」です
敷地に3本ある「山梨」の中でも樹齢100年のもの。そんな話をしながら北島さんが先頭に立って案内してくれます
野草園の門をくぐると、民家があります。そこが北島さんのお住まいで、野草園を見学したい人は、玄関脇のブザーを押して北島さんを呼びます。入園料を払い、そのまま自分で見学に回ってもよいのですが、はじめての人は、北島さんにガイドをお願いするのが賢明です。
伺った4月上旬は、カタクリ、アセビ、ハシリドコロ、水芭蕉がまだ少し残っていて、「ハシリドコロは美味しそうな草に見えるけれど、毒があってね」といった話をしながら園内を案内してくれました。途中、遠くの惣岳山(そうがくさん)を眺めながら、標高が800メートルで上には神社があることも教えてくれながら、「山としての姿、格好がいい」と、毎日見ているだろう山なのに、惚れ惚れした様子で語ってくれた姿が印象的でした。
からたちの木に北原白秋の詩を掲示。ところどころに北島さん手づくりの味のある看板があります
見られるところが限られているという貴重な「クマガイソウ」が、野草園で元気に育ってきています
イノシシや鹿が下りてきて、草や花なんでも食べてしまうので年々減ってきてはいるそうですが、野草園には季節に応じた見どころがあります。なかでも4月下旬から5月上旬に花が見頃になるクマガイソウ(ラン科)は必見だそうです。10年ほど野草園に通っているというご夫婦に会いましたが、今度お仲間とクマガイソウを見に来るので、成長具合を事前に下見に来られたそうです。野草が好きで、長年通っているリピーターの人たちが、野草園にはほかにも大勢いらっしゃるそうです。
黄色の四角がかわいい「連福草(レンプクソウ)」は、4面とその上に合わせて5つの花が固まって咲くのが特徴
赤、黄、緑など、1年を通して7色に変化するという「7色もみじ」
これまでは空間がパッと明るくなるような華やかな植物に目がいきがちでしたが、野草園に来て、北島さんや野草が好きな人たちの話を聞いて、なにげなく咲いている野花、野草のかわいらしさに気がつきました。
北島さんによると、5~6月にはイチリンソウ、ニリンソウ、イカリソウなどが見頃を迎えるそうです。お天気の休日、ちょっと足を伸ばしてぜひ出掛けてみてくださいね。
自然野草園と同じ敷地内にある「土鈴展示館
日本にはこんなに土鈴の種類があるの?!とビックリする量の土鈴が展示棚には並んでいます
また、敷地内には土蔵があるので、そちらにも立ち寄ってみてください。「土鈴展示館 鈴倉」は、社寺で授けられる土鈴、おみやげものの土鈴、十二支の土鈴など、日本全国の土鈴がぎっしり並んでいる展示館です。常設展示のほか、季節に応じた展示替えも行われています。
子どものおもちゃのように思える土鈴ですが、その歴史は古く、縄文時代から作られていたといわれ、出土状況から、祭祀や信仰とも深い関係があったと考えられています。奈良時代から現在まで続けられている祭祀で、土鈴を用いている社寺が全国各地にあることからも、土鈴への信仰がうかがい知れます。素朴でやさしい音色の土鈴に、そんな歴史があったとはちょっと意外ですよね。
野の花が描かれた土鈴や干支の土鈴など、おみやげ用の土鈴も充実しています。訪れた記念に1ついただいて帰ってはいかがでしょうか。
壁には土鈴の可憐な花が咲いています。真似したいかわいい展示手法です
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インフォメーション
自然野草園は、散策路を歩きながら、もともと自生している野草などを見て楽しめるのどかな場所です。個人の方が、敷地内の山と庭を一般に開放しています。自然野草園、土鈴展示館 鈴倉ともに、月曜・冬季休園。
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●アクセス
東京都青梅市御岳2-275
TEL 0428-78-8838
JR青梅線「御岳駅」より徒歩20分
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