アミューズミュージアム記念特別展 『Love ! Handmade~針と糸が織りなす世界~』

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アミューズミュージアムで100年前の女子力に触れましょ♪

 

浅草寺・二天門の前にある布文化と浮世絵の美術館「アミューズミュージアム」が開館2周年を迎え、記念特別展「Love ! Handmade~針と糸が織りなす世界~」を開催しています。
常設展では民俗学者の田中忠三郎氏がコレクションしてきた青森の農村で使われていた“ぼろ”と呼ばれる衣服や布類が多数展示してありますが、特別展では、コレクションの中から国の重要文化財でもある“南部菱刺し前かけ”48点を展示しています。

 

特別展の会場入り口です

 

南部菱刺し前かけは今から約100年前の大正6~12年に、青森県南部地方の農村で暮らす女性らが作ったものです。麻しか育たない寒冷地で、少しでも温かく、そして丈夫にするために、当時は貴重品だった毛糸を麻布に一針一針刺して作ったのです。
これだけを読むと南部菱刺し前かけは、地味で、暗くて、貧乏くさい物のように思えますよね? それが違うんです! 実物は鮮やかな赤やピンク、黄色の毛糸で描かれた模様がステキで、きっと皆さん驚きますよ! まるで南国の衣装を思わせる鮮やかな色彩で、100年も前の日本の農村で作られていたとは到底思えないものばかりです。
身近な動植物からインスパイアされて考え出された模様は400種類もあり、作る女性の感性で模様を組み合わせ、一人ひとりまったく異なる前かけを作っていたのです。

 

会場に入ると、いきなり前掛けの“お祭り”が始まります

 

重要文化財にも関わらず至近距離で作品を見ることができます、そして触れます!

 

前掛けばかりの展示会、こんなの他にありませんよね

 

南部菱刺し前かけには、ドキドキするストーリーもあるんですよ。
当時これはハレの日に身につけたもので、好きな人の分まで一生懸命作って手渡して、お祭りの日にペアで着ていたそうです。想いが届けばペアで着て踊って、めでたしめでたし♪ですが、残念なことに、いつの時代も当然その逆もあります…。

 

展示してある前かけは、どれも保存状態が良く、100年前のものだとは思えません。ハレの日の物だったから大切にされていたのもありますが、意中の人に受け取ってもらえなかったり、うまくいっても後日ダメになって返されたりした物が、思い出と一緒に奥深くしまわれてきて、美しいまま現代に残っているのです。

 

女性が1日の仕事を終えてから、薄暗い中で布目を数えながら一針一針刺して作られた前かけは、出来上がるまでに早くても2か月はかかったそうです。時には女性が集まって一緒に刺し子をしたり、色を増やすためにお互いの毛糸を交換したり、模様を教え合ったり、なんてこともきっと行われていたはず。そんな時には今と同じようにガールズトークが繰り広げられ、「誰に渡すの?」という話できっと盛り上がってたんだろうな♪と想像できます。
目の前の技術とデザイン力の高さを直視するもよし、前かけに込められた100年前の女性の暮らしに思いを馳せるもよし、見る人しだいで何倍も楽しめますよ。

 

前かけには作った女性の家事能力とセンスがアピールされているので、色使いはシンプルでも近くで見ると柄が凝っていたり、縁の覆輪(ふくりん)にアクセントカラーを効かせていたりと、どれも個性豊か。途中で同じ色の毛糸がなくなったのか、菱型の途中から色がガラッと変わっていたりもするので、じっくり見てみると希少な布や糸を工夫して使っているのがわかります。驚くことに展示物に直接触れてもOKなので、ぜひ触って麻の部分と毛糸を刺した部分の温もりの違いを感じてみてください。手に入る毛糸は短いものばかりだったので、何度も何度も糸をつぐ必要がありました。精巧な作りで、近くで見ても織り物のように見えますが、両手で裏と表から挟んで、上から下へスーッと触ってみてください。見た目にはわからない玉留めの凹凸が感じられ、改めてハンドメイドなのを実感できます。

 

途中から色使いが変わっています。どこかわかりますか?

 

菱型の途中で赤い毛糸がなくなって、茶色になっています

 

実際に着用もできます。貴重な展示物なのに、太っ腹な演出です

 

近寄って見たくなる細かな針仕事。拡大鏡まで用意されていて、気が利くミュージアムです

 

貧しい生活の中にあっても、ただ用を満たすためだけのもの作りではなく、そこにオシャレ心をプラスした大正時代の女性たち。消費社会にいる人、そこから抜け出して本当に必要なものだけを選りすぐり大切に使い続けている人、様々な価値観を持つ人がこの展示を見たら、どんなことを感じ、自身の生活をどう思うでしょうか。
映画を観た後その映画について話したいように、誰かと一緒に行って、お互いが感じたことを知りたくなるような展示です。

 

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インフォメーション

日本の大衆文化を生み出した浅草にオープンしたアミューズミュージアムは、民俗学者・田中忠三郎氏のコレクション展示のほか、世界で最も美しい浮世絵と称される「スポルディング・コレクション」のデジタル映像上映、浮世絵の講演、伝統芸能などのライブイベントも開催する、新しい形のライブミュージアムです。

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●アクセス

東京都台東区浅草2-34-3
東京メトロ銀座線、東武伊勢崎線・浅草駅より徒歩5分
TEL 03-5806-1181(月曜休館)
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.amusemuseum.com
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