大阪キタの繁華街にある小さな神社、通称「お初天神」。鳥居を出るとすぐに飲食店がある場所がら、大阪人なら一度や二度は、誰かと待ち合わせをしたことがある場所です。仕事を終えた夕刻から夜にかけて、ほっとした気分で今宵の宴を待つひととき。春は境内の桜が艶やかにライトアップされ、夏は蝉の声が響き、秋は涼やかな風が吹く。寒い冬の日でも、人々は夜の町に出かける前やほろ酔いの足で、この神社で手を合わせていきます。歓楽街にある癒しの場、パワースポットとして、大阪人にはとても身近な神社なのです。
ビル街にある露 天神社
正式には露 天神社(つゆのてんじんしゃ)といいますが、元禄16年(1703年)に境内で実際にあった心中事件を題材に、近松門左衛門が人形浄瑠璃「曽根崎心中」を書き、人気となりました。その主人公の名前「お初」にちなんで「お初天神」と呼ばれるようになったのです。堂島新地天満屋の遊女「お初」と内本町平野屋の手代「徳兵衛」の物語に人々は涙し、多くの人が参拝に訪れたそうです。しかし、その影響もあり心中事件が多発したことから、初演より19年後、幕府は同作を含む心中物の上演を禁止しました。再び「曽根崎心中」が上演されたのは230年後の昭和28年、歌舞伎役者の三代目中村鴈治郎による公演でした。以後、人形浄瑠璃や文楽でも公演が行われるようになったのです。曽根崎心中が上演されなかった長い期間も、お初天神の名前と物語は残り、いつしかここは恋の成就を願う場となりました。
恋に殉じた二人を慰霊する「曽根崎心中 お初 徳兵衛 ゆかりの地」と書かれた石碑
二人の300回忌の後、地元の商店街などの寄付で、平成16年4月にブロンズ像が完成
境内には、お初と徳兵衛のブロンズ像や石碑があり、はるか昔の哀しい恋物語に思いをはせるように、若い女性たちが縁結び祈願に訪れています。ブロンズ像の前にある、オレンジがかった色の大きな丸い石を軽くさわると、勢いよく回ります。難が転じるという意味で「難転石」と名付けられています。さらに悠々と控えておられるのが、「神牛さん」。「撫で牛さん」とも呼ばれ、身体の病んでいるところと神牛さんのそれを交互になでて、病の治癒を願います。元気な人でも、なでたくなるようなゆったりしたお顔です。
そしてこの神社ならではの「美人祈願絵馬」。宮司さんに伺うと、「姿美しきは一時の花・心美しきは一生の宝」として、「内面より出る本当の美しさに気づいて欲しい」、という思いから作られたそうです。心にとどめたい言葉ですね。
グルグル回って、難が転じる「難転石」
とても威厳のある「神牛さん
少し歴史をたどってみましょう。大昔、大阪湾に浮かぶ小島の一つだったこの地に、「住吉須牟地曽根ノ神」を祀り御鎮座されたのが起源だと伝えられています。創建年代ははっきりしませんが、6世紀の欽明天皇の頃でないかと推察されています。承徳元年(1097年)に描かれた「浪華(なにわ)の古図」には、神社が記されています。「曽根洲」と呼ばれていた小島が、南北朝期に地続きの「曽根崎」となり、人が住み農業を始めた頃から、ここを鎮守の神として曽根崎村ができました。月日が流れて、明治7年(1894年)、初代大阪駅が家業、明治38年には阪急電鉄梅田駅が開業して、大阪のキタの賑わいは一気に増します。長い長い歴史を見守ってきた神社。大都会の真ん中にありながら、ここには静寂があり、観光客、住人、仕事に来る人、さまざまな人のやすらぎの場となっています。
「美しさは内面から」美人祈願絵馬で美人になりましょう
浪速七名井「神泉 露の井戸」真水の少ない大阪で貴重な井戸。今は水量は少なくなっている
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アクセス
露 天神社
大阪市北区曽根崎2丁目5番4号
TEL 06-6311-0895
大阪市営地下鉄谷町線「東梅田駅」、御堂筋線・阪急電鉄・阪神電鉄「梅田駅」、大阪市営地下鉄四ツ橋線「西梅田駅」、JR「大阪駅」、JR東西線「北新地駅」より徒歩5~10分
http://www.tuyutenjin.com/
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