静岡県浜松市にある臨済宗・大本山方広寺半僧坊総本殿に行ってきました。この地方が引佐郡から浜松市に合併されたのは2005年のことで、今も自然の多い地域です。そして60ヘクタール(東京ドーム約13個分!)という広大な方広寺の敷地には、たくさんの見所があります。
門からの拝観コースを辿る場合は、距離があるので心して歩きましょう。境内は傾斜や階段が多いのも特徴です。体力に不安を感じる人は、「三重の塔」から建造物を中心に拝観することもできます。
文化財、国宝だけでなくいくつもの不思議な伝説がある方広寺。語り継がれる歴史や故事に耳を傾けてみるのも、楽しみ方のひとつではないでしょうか。
「山門」
「五百羅漢」
実際に境内を歩いていくと、意外なところに心を惹きつけられました。小ぶりの仏様です。仏様といっても、人間に近い表情をしているのが魅力。全部で500体も安置されているこの仏様は「五百羅漢」といいます。羅漢さまは苔むした石、参道の斜面、庭、木々や山と同化し、訪れる人をさりげなく見守られていました。羅漢さまの中にひとりは自分に似た顔がいると昔から言われているそうです。
「山門」を過ぎると、舗装された「らかんの道」と昔からある「哲学の道」に分かれます。「らかんの道」を行けば、方広寺の不思議といわれる石橋があります。石橋の上の羅漢さまは、日によって4人になったり5人になったり、ときには3人になることもあるそうです。しげしげと眺めていると、「今日は4人だね」と話しかけられました。
石橋の羅漢
「半僧杉」
「哲学の道」は幻想的な雰囲気でした。静寂を刻む小川のせせらぎを感じながら歩みを進めます。小さな橋を渡り、急な階段を登ったところに「椎河龍王(しいがりゅうおう)」が祀られています。龍王のおかげで、この奥山の里は一度も水不足で悩んだことがないと伝えられ、龍王にお祈りすれば雨に恵まれるとも言われています。
「延命半僧杉」
「亀背橋」
俗世間とは遮断された雰囲気の哲学の道を行くと、「鐘楼」や「大本堂」をずいぶん下から見上げる地形になっています。この神秘的な世界と俗世間とをつなぐのは、真っ赤な「亀背橋」です。橋の上から来た道を見下ろしてみると、改めてお寺にしては険しい道のりだったことがわかります。
東海地方最大の「大本堂」
大本堂裏の「らかんの庭」
方広寺は1371年に後醍醐天皇の皇子である無文元選に開山されました。幾度となく火災に見舞われ、1881年の類焼でそのほとんどが燃えてしまったそうです。残ったのは「七尊菩薩堂」と「半僧坊」、そして「大杉」だけです。この出来事はとくに不思議な伝説として広く語り継がれ、今では別称の「半僧坊」のほうが有名になっているほどです。
神でありながら無文に弟子入りした半僧坊は、無文が亡くなった後「わたしはこの山を護り、この寺を護り、世の中の人々の苦しみや災難を除きましょう」と言って姿を消したそうです。それ以来、方広寺の鎮守さまとして祀られていました。類焼の際、当時の住職が、黒煙の中から鈴の音が響き、炎を左右に切りさばく半僧坊の姿を見たと言い伝えられています。
重要文化財「七尊菩薩堂」
倒産よけの「三重の塔」
哲学の道にある「大杉」は、幹の中が炭化したまま130年以上の時を生き続けました。今では切株が延命厄難消除のパワースポットになっています。また、らかんの道にある樹齢600年の「半僧杉」は1977年に市指定天然記念物になりました。このように、壊滅に近かった類焼で奇跡的に残ったものは、後世の人々にとって特別な存在となっています。
もしかしたら“もうひとりのじぶん”に出逢うかもしれない。もしかしたら、あなたの大切な誰かに出逢えるかもしれない。訪れるたびにちがった羅漢さまに出逢うことができる方広寺で、自分の心と向き合ってみてはいかがでしょうか。
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アクセス
静岡県浜松市北区引佐町奥山1577-1
TEL 053‐543‐0003
JR浜松駅から遠鉄バスで「奥山」バス停下車
http://www.houkouji.or.jp/
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