歴史を感じながら商売繁盛、福徳開運を祈願~愛知県豊川市・豊川稲荷

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私たちにとって最も身近な神様と言えば「お稲荷さん」。稲荷神社は全国で約3万社あり、老若男女を問わず多くの人たちに親しまれています。その総本宮である京都市の伏見稲荷大社とともに、日本三大稲荷とされているのが愛知県豊川市の豊川稲荷です。商売繁盛の神様として広く知られ、年間数百万人もの参拝者が訪れます。

 

豊川稲荷総門前の通り「豊川いなり表参道」。正面にあるのが総欅造り、銅板コケラ葺きの総門

 

三総門をくぐってすぐ右にある鎮守堂。豊川吒枳尼眞天が祀られている

 

といっても、実は、豊川稲荷は神社ではありません。正式名は「豊川閣 妙嚴寺(とよかわかく みょうごんじ)」で、山号を円福寺とする曹洞宗の寺院です。鎮守として祀られている千手観音菩薩「豊川吒枳尼眞天(とよかわだきにしんてん)」が稲穂をにない、白い狐にまたがっていることから「豊川稲荷」が一般に用いられるようになりました。ちなみにこの菩薩は、稲穂とは反対側の手に載せた宝珠で、どんな願い事も叶えてくれるのだそうです。

 

総欅造りの鐘楼堂。梵鐘は戦時中に供出されたため、昭和20年に改鋳造された

 

総門をくぐって左に大鳥居が見える。両側には狛犬ではなく狐が。まっすぐ進んで正面が本殿

 

豊川稲荷の歴史を少しひもといてみましょう。はじまりは、鎌倉時代にさかのぼります。修行のために入宋していた寒巌義尹(かんがんぎいん)禅師が、文永4年(1267)に船で帰国の途上、豊川吒枳尼眞天が真言を唱えながら現れました。これに深く感動した禅師は帰国後、自ら形像を刻みます。そして、終生守護の善神として祀るようになりました。その後、嘉元元年(1441)に寒巌義尹禅師から6代目の弟子・東海義易禅師が妙嚴寺を開創。その折、寒巌義尹禅師による豊川吒枳尼眞天像を山門の鎮守として祀ったと言われています。霊験あらたかで、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、渡辺華山などの武人・文人たちの信仰を集めました。さらに江戸時代になると、商売繁盛、家内安全、福徳開運の神様として、庶民の間にも広がっていったのでした。

 

かの名奉行、大岡越前守忠相から信仰を受けたことでも有名です。文政11年(1828)には赤坂一ツ木の大岡邸内に豊川吒枳尼眞天の分身を祀り、代々大岡家に相続されていました。現在は、豊川稲荷東京別院(東京都港区元赤坂)として地域の人たちの心のよりどころとなっています。

 

寒巌義尹禅師による豊川吒枳尼眞天を祀る本殿。総欅造り、妻入二重屋根三方向拝の構造で、高さ百尺余(約30m)

 

寺寶館。当寺伝来の書画仏像など宝物を収蔵、展示している。

 

豊川稲荷の境内は約3万1200坪、東京ドーム2.5個分の広さです。その中に堂塔伽藍が大小合わせて90余棟点在しており、一回りで1時間ぐらいかかります。まずはともあれ本殿に参拝したいという人は、総門をくぐって左手方向に大鳥居が見えるので、そこから参道をまっすぐ進んでください。正面に、大きく立派な本殿が姿を現します。本殿の右手奥には、旧本殿である「奥の院」や「大黒堂」、「霊狐塚(れいこづか)」などがあり、歴史を感じながらゆったり散策できるでしょう。大鳥居の近くにある「寺寶館(じほうかん)」へもぜひ。国指定重要文化財の地蔵菩薩像や大岡越前守が愛用した双六盤など、豊川稲荷ゆかりの貴重な宝物が多数展示、紹介されています。

 

大黒堂の前に立つ大黒天の石像。手に触れてさすることで、福徳を授かると言われている

 

江戸時代後期に造られた旧本殿、奥の院。拝殿には200年前梁に彫られた彫刻「登り龍」「下り龍」がある

 

庭園も見どころの1つです。江戸時代初期に造られたもので、昭和16年に日本指定庭園となりました。広さは約370坪、松などの老樹を背景に三笠山をかたどって空滝を造り、山麓の池には鯉や亀が泳いでいます。また、時期になると築山のそてつ、さつき、くちなし、さざんかなどが花を咲かせ、四季を通じて目を楽しませてくれるでしょう。

 

1月1日から15日までの「初詣」に始まり、5月の春季大祭(豊年祈願祭)、8月の「みたま祭り」(盆踊り)、11月の秋季大祭(鎮座祭)のほか、毎月22日の「月例祭」(御縁日)など、豊川稲荷ではさまざまな行事が行われています。こうした行事を支えているのが、飲食店や土産物屋が軒を連ねる周辺の商店街。3月と6〜10月の月1回日曜日、豊川稲荷春季・秋季大祭の日には、各商店が店頭で戸板を台にして自由市を繰り広げる「いなり楽市」が開かれます。豊川稲荷で歴史を感じつつ、商店街のにぎわいも味わってください。

 

本殿から奥の院参道、裏門にかけて、信者が奉納した幟がはためいている。通称「千本幟」

 

奥の院のさらに奥にある霊狐塚。信者が祈願と成就のお礼として奉納した狐像が、所狭しと並んでおり圧巻

 

最後に1つ、忘れてはならないのが「いなり寿司」です。豊川稲荷の門前では、古くから「いなり寿司」が売られていたことから、今ではご当地グルメとなり、昔ながらのものから今どきの創作ものまでバラエティ豊か。ぜひとも食べて帰りましょう。テイクアウトもOKです。

 

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アクセス

愛知県豊川市豊川町1
TEL 0533-85-2030(代)
JR飯田線「豊川駅」・名鉄豊川線「豊川稲荷駅」下車、徒歩3分

http://toyokawainari.jp/
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