老若男女でにぎわう日本三大観音の1つ~名古屋市・大須観音

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仏教の菩薩の1つで、人々に「観音さま」「観音さん」と親しみをもって呼ばれている「観音菩薩」。苦を取り除き、楽を与える“大慈大悲”の菩薩として、古くから広く信仰を集めています。そのため全国各地に観音霊場がありますが、中でも「日本三大観音」とされているのが東京都台東区の金龍山浅草寺「浅草観音」、三重県津市の恵日山観音寺「津観音」、そして名古屋市中区の北野山真福寺宝生院「大須観音」です。大須観音には今も多くの人が訪れ、その門前町・商店街は全国でも有数のにぎわいを誇っています。

 

地下鉄鶴舞線「大須観音」駅から一番近い西門。向かって右手には自動車祈祷殿がある

 

十二支・干支の守り本尊を祀っている普門殿。干支のお守りや念持佛を受けることができる

 

大須観音のはじまりは、元亨4年(1324)、後醍醐天皇が尾張国長岡庄大須郷(現・岐阜県羽島市大須)に創建した北野天満宮。元弘3年(1333)に天皇から帰依を受けた能信上人が同社の別当職(公的な寺の長官、現在の寺の住職)に就き、同時に「北野山真福寺宝生院」の寺号を授けられました。同寺開創の際、観音菩薩が能信上人の夢に現れたことから、本尊として祀られるようになったと伝えられています。慶長17年(1612)には、徳川家康による名古屋城下建設とともに現在地へ移転、以後は徳川家の庇護を受け、名古屋随一の盛り場として栄えました。

 

大須観音の中心、本堂である大悲殿。大須の大火と戦災で2度焼失したが、昭和45年(1970)に建て直された

 

大須観音の南に位置する仁王門。悪いものから山内を守るため、左右に仁王像が奉安されている

 

大須観音は「なごや七福神」の札所としても知られています。「なごや七福神」とは、名古屋市内にある7か所の寺院を七福神の札所として定めた霊場会のこと。例えば、南区の笠寺観音笠覆寺には恵比寿、昭和区の八事山興正寺には寿老人と各寺に個々の神様が祀られており、それらすべての巡拝で大願成就となり記念品がもらえる「七福神めぐり」も人気です(各寺で寳印帳に朱印を押してもらいます)。大須観音に祀られているのは布袋尊。丸くて大きいお腹が印象的な布袋尊は、和合・富貴繁栄を司る神様です。本堂内の東側に祀られているので、ぜひその姿を近くで拝んでみてください。

 

もう1つ、意外と知られていないのが、大須観音が国宝『古事記』を始めとする貴重な古典籍を多数所蔵していることです。国宝4件、重要文化財37件を含む平安から室町時代までの仏書・典籍類が15,000点超あり、まさに日本の中世史研究の中心拠点と言ってもいいでしょう。これらは「大須文庫(真福寺文庫)」と呼ばれ、醍醐寺(京都市伏見区)・根来寺(和歌山県岩出市)とともに日本三経蔵、また仁和寺(京都市右京区)・根来寺とともに本朝三文庫とも称されています。

 

人形を供養するための人形塚。毎年10月に「人形供養祭」がこの碑の前で執り行われている

 

抜けてしまった歯と、古くなった入れ歯を納める歯歯塚。毎年8月、「歯歯塚供養祭」がこの碑の前で執り行われている

 

大須観音のご利益には、厄除け、家内安全、身体健康、商売繁盛などがあります。北野天満宮の流れを引いていることから、入試合格・学業成就にも効果があるとか。「観音様の慈悲と共に、天神様(菅原道真公)の智慧が頂ける」そうなので、身近に受験生や子どもがいる人にはお勧めです。また、毎月8日・18日には境内で骨董市を開催。そのほか、2月の節分会には特設舞台からの豆まきや宝船行列、7月には夏祭り、10月には大道町人祭と1年を通してさまざまな行事が行われているので、何度訪れても楽しめることでしょう。

 

名古屋は大正琴の発祥の地でもある。その記念碑の前で、毎年9月に「大正琴祭」が執り行われている

 

弘法大師修行像。能信上人の夢に現れた観音菩薩は、弘法大師が彫った観音菩薩像と同じ姿だったとか

 

大須観音を参拝したら、そこから続く商店街をぶらぶら歩いてみてください。大須商店街は、若宮大通・伏見通・大須通・南大津通の4つの大通りに囲まれており、このエリア内に約1,200もの店舗や施設があります。飲食店や骨董品店、古着屋、ディスカウントショップなどが軒を連ね、年齢・性別・国籍を問わない混沌とした雰囲気が、近年とくに人気です。店舗だけでなく、織田信長の父・信秀が開基した万松寺など、由緒ある寺社が点在しているのも独特な風情を醸し出し、いっそう魅力的。外国人が多く訪れる観光スポットにもなっています。

 

大須観音から続く観音通(大須観音通商店街)。あちこち歩いているうちに1日が過ぎる

 

かわいらしい七福神や干支のお守りなどが購入できるので、自分に合ったものを探してみよう

 

ちなみに、大須観音のすぐそばにある「名古屋スポーツセンター」は「大須スケート場」「大須スケートリンク」としても有名ですが、聞き覚えのある人もいるのではないでしょうか。実はここ、一般向けだけでなくジュニアスクールも開設しており、伊藤みどりや安藤美姫、浅田真央、村上佳奈子ら世界的なフィギュアスケート選手を多数輩出しているのです。スケートに興味のある人は、こちらも覗いてみたらいかがでしょうか。

 

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アクセス

名古屋市中区大須2-21-47
TEL 052-231-6525
地下鉄鶴舞線「大須観音」駅2番出口を出てすぐ

http://www.osu-kannon.jp/
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