車折(くるまざき)神社の創始は、文治5年(1189年)に清原頼業(よりなり)が薨去した後、清原家の領地でもあった現在地に廟が設けられたことをその始まりとしています。
創建当初は頼業の法名「宝寿院殿」に因んで「宝寿院」という社名で知られていましたが後嵯峨天皇の治世で社名を車折へと改名。その理由については、後嵯峨天皇が嵐山の大堰川(おおいがわ)行幸の途上、社前において牛車の轅(ながえ)が突然折れたことで、そのご神威を畏れ、還御の後に車折大明神の神号と正一位を贈ったことに由来するとされています。
ちなみにご祭神の清原頼業は平安時代後期の儒学者で、天武天皇の皇子、舎人親王の子孫に当たります。また一族の中には三十六歌仙の清原元輔や清少納言がその名を連ねていることもあってか、頼業は和漢の学識に非凡なる才を発揮、重ねて局務を24年も務めた実務の才もあわさり、その手腕は他の者をして当代無比と称えられていました。加えて晩年にあっては政治の諮問にあずかった九条兼実より「その才、神というべく尊ぶべし」などと評されたこともあって、車折神社はとりわけ学業成就・試験合格のご利益のある社として各地より強い信仰を集めています。
またその信仰が全国規模であるのは車折神社が何も学業に関わるご利益のみに限定されているからではありません。頼業との名から「金が寄り、商売が成り」とされるよう金運上昇、商売繁盛はもとより、他にも良縁、厄除け、芸能と、その神徳、加護は多種に及んでいます。わけても「約束を違えないこと」をお守りする神様としてよく知られ、商売については集金が滞りなく進み、経営が順調に運ぶことを、そしてまた良縁(恋愛・結婚)については交わされる約束が守られ、二人の縁が成就されることにそれぞれ力を授けてくれます。
清めの社では参ると悪い運気と因縁を浄化してくれるとされています。TVや雑誌でも盛んに紹介されるほどパワースポットとしては全国的に有名な社で、石をモチーフにした円錐形の立砂が社の中、どしっと鎮座しています。私が訪れた日も平日でありながら立砂の前には参拝者が列をなしていて、厳かに手を打ち頭を下げあるいは盛んにシャッターを切っていました。撮った立砂を携帯の待受画像にすると特別な恩恵に授かれるのだそうです。
表参道入口
清めの社
なお車折神社は石に対する信仰厚く、清めの社の立砂も石をモチーフとして造られていますが、もう一つ神主がお祓いをすませた石を封入する祈念神石も特殊なパワーみなぎるお守りとして人気があります。願いを叶える力があるとされているので、叶えたい願いがあれば社務所で祈念神石を授かり、それを持ったまま本殿へ向かって強く願いを念じましょう。ちなみにその本殿前にはたくさんの石が奉納されていました。見るとそれぞれの石にはお礼の言葉が記されています。車折神社では祈念神石を授かり強く念じた願いが叶えば、川や海や山などで拾った石にお礼の言葉を記して本殿へ納めるならわしがあるようです。その際、初めに社務所で授かった祈念神石も本殿脇の古いお守りを返す箱に返納します。
本殿。宝暦2年に造営された入母屋造、銅板葺総檜造の建物
願いを叶えた方はこちらに石を奉納しましょう
では次に芸能神社へと向かいましょう。末社である芸能神社のご祭神は天宇受売命(あめのうずめのみこと)。天宇受売命と言えば日本神話の岩戸隠れのエピソードが有名ですね。つまり天照大神(あまてらすおおみかみ)が岩戸に隠れて世界が暗闇になった際、天宇受売命が岩戸の前で舞を演じ、その演舞があまりに素晴らしかったため惹かれた天照大神が岩戸から出てきて再び世界に光が戻った。このことから天宇受売命は芸能・芸術の祖神として古来より深い尊崇を集め、彼女を祀った社には芸事の上達を願う多くの参詣者が集うといいます。
実際、芸能神社でも名だたる芸能人が参拝に訪れており、ざっと見る限り社の周囲に巡らせた2000枚以上の朱塗りの玉垣(たまがき)には誰もが一度は聞いたことのある有名な芸能人の名が記されていました。といっても参る当人が必ずしも有名人である必要はありません。有名でなくとも人から注目を集めたい、人気運を上昇させたいという強い想いがあれば神様は格別なご利益を授けてくれるのです。芸能神社を機として無名から有名になる道は誰でもおおいに開けているということですね。
芸能神社。昭和32年に他の末社から天宇受売命を分祀
水神社。祭神は罔象女神(みつはのめのかみ)。参れば運気と才智が向上します
車折神社お奨めの参拝手順によれば、上記記載の順序で参ることを推奨しているようです。つまり清めの社で心を浄化した後、社務所で祈念神石を授かり、それを両手で挟みながら本殿に参拝することで願いが成就されやすくなる。芸術・芸能に関心があれば最後に芸能神社に参ると良いでしょう。もちろん清めの社へ向かう前には手水舎で手と口を洗い清めることも忘れずに。
渓仙桜。画家である富田渓仙により奉納された桜の木
裏参道入り口。車折神社駅が目と鼻の先にあります
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アクセス
京都府京都市右京区嵯峨朝日町23
TEL 075-861-0039
京福電車 車折神社駅 下車してすぐ
http://www.kurumazakijinja.or.jp
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