京都の八坂神社と並ぶ天王社と言えば、愛知県津島市の津島神社。全国に約3,000ある天王社(津島神社)の総本社でもあります。欽明天皇元年(540年)に鎮座したと伝えられ、古くは津島牛頭天王社(つしまごずてんのうしゃ)と呼ばれていました。長い歴史の間には、織田信長・豊臣秀吉・尾張徳川家から特別の崇敬を受け、社領等多くの寄進もなされています。江戸時代には「津島参らにゃ片参り」と言われ、お伊勢参りの際には津島神社に参拝することがならわしとなっていたほどです。今でも人々から「津島の天王さん」などと親しまれ、全国から信仰を集めています。
楼門。脇門ではあるものの、前には神橋も構えられ、正門のような壮大なものとなっている
拝殿。楼門同様、銅板葺から桧皮葺に改められて現在の様式となった。愛知県の文化財に指定
御祭神は、建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)。相殿には、息子である大穴牟遅命(おおなむちのみこと)が祀られています。津島神社は、建速須佐之男命がこの地で人々の災いや疫病を払って福を与えたことがはじまり。そのため、疫病・厄難除け、授福の神として信仰されています。また、建速須佐之男命が出雲の国で稲田姫命(くしなだひめ)をめとった時、喜びの気持ちを詠ったのが我が国最初の歌であることから、夫婦円満・良縁・縁結びのご利益も。
津島駅前の参道「天王通り」を西へまっすぐ15分ほど歩くと、正面に大きな鳥居が見えてきます。鳥居をくぐると楼門。正門のように立派な楼門は豊臣秀吉の寄進で、国の重要文化財に指定されています。もとは銅板葺でしたが、昭和の造営に他の社殿に併せて桧皮葺(ひわだぶき)にしたそうです。軒の出が深く、とても安定感があります。
弥五郎殿社(やごろうでんしゃ:神社社地の守護)
手前が忍穂耳社(おしほみみのやしろ:眼病治療)で、龍田社(たつたのやしろ:風の守護)、庭津日社(にわつひのやしろ:家屋・庭園の守護)などが並ぶ
境内は広々として、開放的な雰囲気です。社殿の配置は、尾張地方の神社によく見られる「尾張造」というもの。蕃塀(ばんぺい:衝立状の塀)が社殿の前に置かれ、拝殿、廻廊、祭文殿、釣殿、本殿と続きます。社殿もやはり桧皮葺で、朱塗りの柱との対照が美しく、自然と厳かな気持ちになってきます。そして、津島神社では、社殿を囲むように多くの境内摂社末社があるのも特徴です。まず拝殿で手を合わせ、それからぐるりと摂社末社を回ってみてください。当然ながら、それぞれ祭神・ご利益が異なります。疫病・厄難除けや縁結びのほかにも、長寿、商売繁盛、子宝、勇気などさまざまあるので、一つずつみていくのも面白いでしょう。
向かって右が八柱社(やはしらしゃ:子宝)、左が稲荷社(いなりのやしろ:商売繁盛)に続く鳥居
手前が稲田社(いなだのやしろ:夫婦円満・良縁)。正面に大国玉社(おおくにたまのやしろ:国土の守護)と若宮社(わかみやのやしろ:武勇)
祭事では、初春の茅の輪(ちのわ)くぐり、夏越の大祓(なごしのおおはらえ)式などが有名ですが、なかでも「尾張津島天王祭」は500年の伝統を誇る尾張の夏の風物詩。宵祭には、津島車5隻のまきわら舟が365個の提灯をつけて天王川を渡ります。揺らめく提灯の灯、美しい津島笛の音色————そのさまは何とも言えず幻想的で、まるでタイムスリップしたかのようです。また、翌日の朝祭では、津島車に市江車が加わって天王川を漕ぎ進みます。途中で10人の若者が川に飛び込み、岸まで泳ぎ着いたら神社まで走って布鉾を奉納。宵祭とは打って変わった勇壮な姿を見ることができます。
荒御魂社(あらみたまのやしろ:無病息災)
柏樹社(かしわぎのやしろ:無病息災)
尾張津島天王祭は「日本三大川まつり」の一つとされ、「尾張津島天王祭の車楽船行事」は国の重要無形民俗文化財に、「尾張津島天王祭の車楽」は愛知県の有形民俗文化財に指定されています。毎年7月の第4土曜日とその翌日の日曜日に行われています。残念ながら今年は終わってしまいましたが、一度は見ておきたい祭りと言えるでしょう。
南門(正門)。豊臣秀頼が寄進したもので、愛知県の文化財に指定されている
楼門前に立つ御神木。樹高30メートル、幹周5.41メートル、推定樹齢400年の大イチョウ
津島は、木曽川を渡って東西を結ぶ要所「津島湊」として、また津島神社の門前町として、多くの人々が行き交う賑やかな町でした。そのため、由緒ある寺社や名所、旧跡がたくさんあります。古い町並みも残っているので、時間があれば周辺を散策してみてはいかがでしょうか。神社のすぐそばにある天王川公園では、四季折々の風景を楽しむことができます。神社でパワーを得たあとは、ゆったりとした時間を過ごしてリフレッシュしてください。
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アクセス
愛知県津島市神明町1
TEL 0567-26-3216
名鉄「津島」駅下車徒歩15分
http://tsushimajinja.or.jp/
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