平安時代の陰陽師・安陪清明が訪れた地~遠州の霊場「福王寺」

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静岡県磐田市にある「曹洞宗 風祭山 福王寺」に行ってきました。このお寺の建立はとても古く、奈良時代だと伝えられています。昔の参道だったという石碑がある細い道を進むと、街角には藤棚があります。これが福王寺の目印です。

 

「昔の参道」、この細い道が総門のある道へとつながっています

 

長い歴史を感じる朱塗りの「総門」は江戸時代に建てられました

 

福王寺のご本尊は聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)です。「遠州三十三観音」のひとつで、重要文化財にもなっています。また、「遠州七福神」のひとつ福禄寿尊天(ふくろくじゅそんてん)と、「遠江(とうとうみ)四十九薬師」の霊場にもなっています。

 

迫力ある如来たちが守る総門、さらに続く山門の重層感を抜けると、視界に飛び込んできたのは豪華な「長藤」のカーテンでした。春風になびく様子や陽の光が透ける様。夕闇に浮かびあがる姿。その表情の豊かさは、どれだけ眺めていても新鮮でした。距離をとって眺めるのも風流なものですが、真下から見上げた時に感じる力強い美しさも感動的です。

 

推定樹齢80年の「あけぼの藤」

 

推定樹齢300年の「長藤」は花の長さが1mを越えます

 

長藤とはまたちがった可愛らしさで、境内を華やかに彩っていたのは「あけぼの藤」です。ふっくらとして丸みのある花が、まるで葡萄のようでした。

 

あけぼの藤のとなりに建つ「清明大権現の堂」には平安時代の陰陽師・安倍清明が祀られています。
この地をたまたま訪れた清明が暴雨風を鎮めて以来、風祭山と称された福王寺には天候回復のご利益があると伝えられてきました。今でも3月8日には風祭りが催されています。

 

境内には「四国八十八ケ所霊場のお砂」、掃除の五つの徳を説く「掃除小僧『福念さん』、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間天上の六道のあらゆるものの苦しみをお救いくださる「六地蔵さま」など、多くのご利益をいただける場所があります。

 

四国八十八ヶ所霊場のお砂が納められているこの塔のまわりを廻ると、四国八十八ヶ所を巡拝した功徳がいただけます

 

「本堂」ご本尊である聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)は重要文化財になっています

 

「大庭園」の看板をたどりながら本堂の裏手へとまわってみると、打って変わって静寂の世界がありました。庭園を歩いていると、あちらこちらにお地蔵様や観音様がいて、雨露で丸みを帯びたそのお姿に、心が癒されました。

 

裏山の広がる竹林が景色の一部となり、どこまでもゆるやかに続いているように思い、8000坪もあるこのお寺の敷地に自然の息吹を感じながら、点在するいくつものご利益がある場所をさらに探しました。

 

「清明大権現の堂」948(永観2)年に陰陽師・安陪清明が暴風雨を鎮めて以来、祀られています

 

「安部清明卿祈祷之旧跡」は、清明が実際に登って祈願したとされる高台にあります

 

墓地の一角にあった約600年前から眠る今川範国のお墓。墓地を抜けた林の高台にあった、安倍清明が実際に御祈祷した場所。二階建ての建物よりもずっと高く、ひときわ目立っていたのは樹齢300年近い大きなケヤキの樹で天然記念物だそうです。

 

今から600年ほど前(宝徳元年)に87歳で亡くなった今川範国公は、一般の墓地の片隅にひっそりと眠っています

 

遠くから見ても存在感がある推定樹齢200~300年のケヤキは天然記念物です

 

ケヤキのとなりの二階建ての建物は、幕末の寺子屋だった「江月堂」でした。中に入ると、より詳しい福王寺やこの地域の歴史に触れることができます。徳川時代に十万石の格式があったこの寺の住職が、都に行く際に乗っていた籠なども展示されています。

 

一時は十四の末寺があった福王寺。明治から昭和にかけて統廃合を経て、今もこの地に残る霊場にはたくましい力が満ちていました。

 

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アクセス

静岡県磐田市城之崎4-2722-1
TEL 0538-35-7272
JR磐田駅より遠鉄バス「城之崎方面行き」にて「城之崎西」下車徒歩5分
http://www.kanko-iwata.jp/history/fukuouji.html
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