美味しく肌にも良い“海苔”の歴史がわかる「大森 海苔のふるさと館」

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江戸時代から昭和中期まで、海苔の名産地としてその名を馳せた東京・大森。その大森の地で平成20(2008)年に開館し、海苔づくりの伝統を今に伝えているのが「大森 海苔のふるさと館」です。
海苔は、『1日2枚(1枚=19×21cmの全型)食べれば医者いらず』と言われるほど、ビタミン、ミネラル、鉄分、食物繊維などが豊富で、美肌茶房読者の皆さんなら、きっと興味を持たれる食品です。普段よく食べているものなのに、どうやってつくられているのか、ましてや歴史なんてまったく知らない海苔の世界。大森 海苔のふるさと館に、海苔のルーツを探しに行ってみました。

 

海苔づくりの伝統を次世代に継承する役割を果たす「大森

 

最後の海苔船「伊藤丸」の上では、映像を交えておじいさんが孫に海苔づくりが盛んだった頃の話をしています

 

大森で海苔づくりがはじまったのは、江戸時代の享保(1716~1736年)頃のこと。大森周辺は遠浅の海で、海苔づくりの環境に適していたことから海苔づくりが盛んになりました。現在は機械化によって大量生産され、私たちの食卓に頻繁に上る海苔ですが、すべて手作業でつくられていた時代もあったのです。館内に展示されている道具や写真を見ると、どのように海苔づくりが行われていたかがわかります。

 

採って来た生海苔を“チョッパー”で細かくしていきます

 

海苔付け作業は男性の仕事

 

昭和10(1935)年頃は、海苔を育てるために大森周辺の海にヒビ(木や竹)を建てて、その枝に育った海苔を収穫していました。ヒビを建てるのに使用された海苔下駄は、高さが30~150cmまであり、背の立たない漁場で深さに応じて履き分けられていました(館内には、高い海苔下駄の体験コーナーもあります)。
海苔は冬の寒い時期によく育つので、海苔漁の繁忙期は冬から春の間。生海苔は掴みにくく、どんなに寒くても素手で採るしかなかったので、海苔漁は非常に過酷な漁でした。しかも、漁が済んだら終わりではありません。その後の、海から採ってきた海苔を乾す作業は時間との闘いでした。午前2~3時から作業はスタート。様々な包丁を使い分けて採ってきた海苔を細かく切り、それを水に溶いて、海苔簀(のりす)に付ける海苔付け作業を夜明けまで行います。そして、陽が上ったら海苔簀を外に出して乾かします。海苔が乾いたら、たたんで束ねて海苔問屋に持って行くか来てもらうかして、その日のうちに買い取ってもらうのです。冬は日照時間が短いので、ゆっくり起きてから作業をしていては、その日のうちに海苔を乾かすことはできません。そのため、深夜から作業せざるをえませんでした。冬から春にかけての海苔の収穫時期には、地方から出稼ぎにやってくる人々の手も借りなければ間に合わないくらいだったと言えば、どれくらいの忙しさだったか、想像できるでしょうか。

 

枠に海苔付けした海苔簀(のりす)を掛けて干し、乾けば海苔の出来上がり

 

今では貴重な海苔づくりの道具が並ぶ2階展示室

 

門外不出だった海苔づくりの方法は、出稼ぎ労働者や各地を行き来する問屋によってしだいに広まっていき、明治時代以降は各地で海苔づくりが行われるようになりました。しかし、変わらずこの地域の海苔は、質・量ともに全国に誇るものでした。羽田空港のあたりまで海苔づくりが行われていた時もあったそうです。
では、それほど海苔で栄えた地域が、なぜ海苔づくりをやめてしまったのか、疑問に思いますよね。今となっては想像しがたいですが、海苔づくりは、東京都沿岸部の埋め立て計画に応じるため、昭和38(1963)年春、その歴史に幕を下ろすことになったのでした。

 

2階の企画展コーナーでは、7月15日まで「海苔漁の一年」を展示中

 

背の立たない漁場では、深さに応じて高さ30~150cmの海苔下駄を履き分けて竹ヒビを建てていました

 

入館してすぐの1階展示室では、国の重要文化財にも指定されている、昭和30年代に造船された最後の海苔船「伊藤丸」や、小型の海苔採り舟「ベカブネ」が展示されています。そのほかに、海苔を切ったり海苔付けしたりしていた作業場のリアルな再現展示もあり、海苔づくりが盛んだった当時の様子を体感することができます。

 

大森の海で働いていた人の格好“はまどスタイル”で記念撮影もできます

 

3階の展望テラス・休憩コーナーの大きな窓からは、「大森ふるさとの浜辺公園」の白い砂浜も見えます

 

大森をはじめ大田区の海辺で海苔づくりが行われなくなって約50年。東京港の埋め立てが進み、かつては海苔漁が盛んだったとはもうわからないほど町は変わりましたが、大森には今でも約60店舗もの海苔問屋があります。お店の多くは、この周辺で海苔がつくられていた頃から商売をしていた問屋です。この地での海苔の生産はなくなりましたが、海苔の品質を見分ける力の高い問屋が揃い、現在も全国各地の海苔が集まっています。小売りをしてくれるところもあるので、大森 海苔のふるさと館へお出掛けの際には、覗いてみてはいかがでしょうか。大森ふるさとの浜辺公園に隣接しているので、レジャーを兼ねたお出かけもおすすめですよ。

 

学生、親子連れなど、いろいろな人がのんびり過ごしている「大森ふるさとの浜辺公園」

 

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インフォメーション

大森 海苔のふるさと館は、海苔の町、大森の歴史と文化を伝える施設です。その昔、大森から全国に海苔の生産技術が伝えられたことから、「海苔のふるさと」といわれています。所蔵品は約1000点あり、そのうち881点は有形民俗文化財に指定されています。
毎月イベントを開催していて、海苔の収穫時期には、地元の元・海苔の生産者の方々の指導のもと、海苔つけ体験もできます。

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●アクセス

東京都大田区平和の森公園2-2
TEL 03-5471-0333
京急「平和島駅」、東京モノレール「流通センター駅」より徒歩15分

詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。

http://norinoyakata.web.fc2.com/

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