横浜ユーラシア文化館では、『華麗なるインド神話の世界 神々が結ぶインドと日本』を2013年1月14日まで開催しています。
インドに詳しくなくても、インドの神さまと聞いてほとんどの人が思い浮かべるのは、頭は象、体は人の姿の神さま“ガネーシャ”ではないでしょうか。5年ほど前にベストセラーになり、ドラマ化、アニメ化もされた『夢をかなえるゾウ』(水野敬也著)で登場した神さまです。日本ではそのガネーシャくらいしか知られていませんが、ヒンドゥーの神さまはまだまだたくさんいます。同展は、ヒンドゥー神話の魅力を絵画・彫刻などを通して紹介している珍しい企画展です。インドの神さまの世界を少し覗いてみませんか。
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横浜中華街にも近くて便利な場所にある「横浜ユーラシア文化館」
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企画展示室で、インドの神様たちが大勢待っています
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ヒンドゥー教徒の多いインドに行くと、お店、家庭など、いたるところでヒンドゥーの神さまが描かれたポスターやカレンダーを見かけます。それらはどれも似た画風ですが、もともとは19世紀末にインドの画家ラジャ・ラヴィ・ヴァルマ(1848~1906)が描いた神さまの姿が、インド国内で人気を集めたのが発端です。当初は油彩だった作品を石版印刷にしたことで一気に流通し、神々の絵は多くの信者の手に渡り、インドの多様な言語・階級・識字率の壁を越えて広まりました。
展示されている石版画の中には「Ravi Varma」とサインの入った、作品も展示されています。同じ石版画が2枚並べられているものもありますが、まったく同じではありません。その石版画を所有していた人の手によって、神々が布やビーズで美しく装飾されているのです。
それを見て以前こちらで紹介しました「ぬりえ美術館」で行われている“デコぬりえ”を思い出しましたが、印刷物の上に飾りを付けることは、日本ではとっても珍しいことでしょう。それを普通に行っているインドでは、人々がどれだけ神々を大切にし、敬っているかが石版画を通してわかります。(もしもインドを訪れることがあれば、行く先々で神さまの印刷物にどんな装飾がされているかに注目するのも楽しいかも?!)
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女神ドゥルガー カシミール 8世紀(歐亜美術蔵)
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ヒンドゥーの神さまは、ガネーシャのほかにその両親のシヴァ(父)とパールバティー(母)、シヴァとともにヒンドゥー教の神界を二分するヴィシュヌとその妻のラクシュミーなど、まだまだ神さまがいます。
ヒンドゥーの神さまのユニークなところは、その姿を変える点です。例えば、パールバティーは通常は慈愛あふれる風貌ですが、戦うときには、血を好む女神カーリーになり、悪魔を退治するときには凶暴な女神ドゥルガーになります。
とくにユニークなのが、ヴィシュヌ神です。世界を救うため、彼は10ものアヴァターラ(化身、英語ではアヴァター)となって出現します。その姿がすべて描かれた石版画も展示されていて、例えば魚になって洪水を予言したり、猪となって水中から大地を救ったりと、その内容はとてつもなく壮大!必見の石版画です。
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ヴァルマの石版画によってインド国内に広まった神々の姿は、石けんや香水を製造する会社がラクシュミーを宣伝用ポスターに起用して、彼女の清らかさでイメージアップを図ったり、企業の広告塔を担うようにまでなりました。
商業用ポスターに次々に登場した神々は、インド商人によって明治・大正時代に日本にも渡ってきました。日本製のマッチがインドへ輸出されるようになると、そのラベルには日本人の描いたヒンドゥーの神さまがありました。手がけたのは西欧化の陰で職を失った浮世絵師たちで、こうして歌舞伎役者風の日本製のヒンドゥーの神さまが誕生しました。
マッチのラベルもたくさん展示されていて、見ていて飽きません。日本人の描いたヒンドゥーの神さまは、体格がどこか日本人的なムチムチ感があり、それまでヴァルマの石版画やヴァルマ風に描かれた石版画を見た後では、違和感があって笑ってしまいます。
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シヴァファミリー 石版画 インド 19-20世紀(黒田豊蔵)
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ラクシュミー 石版画 インド 19-20世紀(黒田豊蔵)
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“インド”というと好き嫌いがハッキリ分かれそうですが、ぜひこの機会にインドの神さまに会いに行ってみてくださいね。石版画やそこに施された装飾の鮮やかな色づかい、ヒンドゥーの神さまの多様性に驚かされて、刺激を受けること間違いありません。
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インフォメーション
東洋学者の江上波夫氏が横浜市に寄贈した、考古・歴史・美術・民族資料約2500点、文献資料約25000点をもとに、横浜ユーラシア文化館は2003年に開館。常設展示のほか、年に1~2回の企画展を行っています。ユーラシア(Eurasia)とは、ヨーロッパ(Europe)とアジア(Asia)を合わせた言葉です。
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●アクセス
横浜市中区日本大通12
TEL 045-663-2424
みなとみらい線「日本大通り駅」3番出口すぐ
詳しくは下記オフィシャルサイトをご覧ください。
http://www.eurasia.city.yokohama.jp/
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